平野貞夫氏「小沢氏の敗北、これは日本が健全な民主主義をつくる最後のチャンス。」

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更新:2011年11月22日 10:36

池田:僕はそこは興味があるところで、この間小沢さんに、ニコニコ動画でインタビューしたとき、ひとつだけ聞きたいことがあった。日本改造計画の序文に、グランドキャニオンには柵がないでしょ。小沢さんはいまでも、グランドキャニオンの柵について同じ考えですかと聞くと、間髪いれずにまったくおなじですよと。

しかし、民主党に合流してからの小沢さんは、社民路線にすり寄って、労働組合と仲良くなって、ちょっと昔の改造計画のころとは違うんじゃないですか、って話をしたんですが、彼は個人が自立することは必要なんだけども、最低限のセーフティーネットは必要だと。重点の置き方が少し変わったのかな、という印象は受けました。

平野:非常にポイントの部分なんですよ。日本改造計画は、本人が勉強会を何回も開いて、私もずいぶん議論して、面白い話もたくさんありますが、率直にいいまして、平成5年のころの日本では、自立と共生、共生が日本型セーフティーネット、自立は要するに自由な競争。これを調整しようというわけ。

あのときは日本的談合社会があまりにもひどくて、そこは一つの規制をとっぱらって、力のある、顔のある、家柄のいい、既得権をもった人間が裕福にならない公平な仕組みを作ろうという意味。

その後これはサッチャリズムに似てます。新自由主義といわれてもしょうがない。意図的な部分もあったのですが、あの時点では日本の社会をいったん改革しないとだめだという気持ちがあったんです。
ところがそれから10年たって、冷戦の崩壊の結果、アメリカの金融資本主義が世界を支配するようになって、日本に竹中小泉改革が導入された。その後の新自由主義と、日本改造計画の新自由主義は違うんです。

池田:重要なところですね。

平野:あの時期にそれができなかったのが残念なんです。

池田:残念ですね。あの時にやっておけばよかったんです。

平野:あとの奴は全く人間性を無視した格差を作ったから、えらいこっちゃということで、セーフティーネットに重点をおいているんです。それから社民党や労働組合とのつきあいについては、小沢さんも良く分かっています。それは戦略的なことと戦術的なこと。参議院選挙を3年前にやって勝ちました。小沢さんが代表でした。平成18年から労組対策それから連合との関係をどうするかが問題になった。

小沢さんのまえの前原代表は、労組と手を切るということでしたが、小沢さんの戦略は、戦術的には労組を効果的に使う。選挙がある場合当然のことですが、しかしそれだけではいけないということで、労組が時代を意識しないとだめだということで、特に自治労、日教組の幹部の頭の中が固いと。特に県の幹部はそうなんです。中央はそうでもない。そこで私に声がかかって、とにかくうちの幹部は頭がガチガチだから、頭の中に手を入れて柔らかくしてくれといわれまして、小沢さんもやってくれと。自治労、日教組については既得権を公に返還するという気持ちがなければ、もう労働組合なんかには協力せんぞという緊張の関係の中でやったんです。いまだから言えることですが。

私は自民党所属の国会議員だったんですよ。そのまわりには、一番保守的な、自民党の国会対策をしていたような人。それから私を育ててくれた人たちは、例えば前尾茂三郎さんとか、林与一さんとか自民党をつくった人たちです。私は自民党そのものです。その私に日教組にいって抗議しようというんですから、えらい目にあったことがある。彼らも変わろうとしていました。もう少し時間が経てば、健全な労働運動、既得権を返還しようというそういう動きはでてきますよ。

池田:僕みたいな一般の有権者から見ていると、今の小沢さんと90年代の小沢さんが違うと思う。
昔小沢さんは、どちらかというと自民党の右派でしたよね。そんな人が真ん中を飛び越えて左のほうに来ちゃったという印象があって、以前小沢さんにグランドキャニオンの質問をする2、3日前に、竹中さんが「彼は本当はあのときにあれをやりたかったんだけど、小泉さんがやっちゃったから、彼は政治家だから違いをださないといけないということで路線が変わったんじゃないか」という説明だったんです。

平野:実は日本改造計画の勉強会に、竹中さんが来ていて、私たちが自由党の幹部でごく少数で政策勉強会をやっていまして、そのときの参加者でもあった。これは森内閣のころで、ずいぶん議論しました。植草(一秀)さんと一緒に。その勉強会でけんかしたんですが。私は竹中さんに対して、すぐれたところがあると思って、私の質問を作ってくれて、予算委員会でこんな質問をしろと。そういう関係だったんです。しかし小泉竹中新自由主義というのは、本質的にわれわれの小沢さんの経済合理主義と違います。それは小沢さんの考えは、人間を主体に置いていて、90年代から変わらない。小泉竹中は、主語が人間でなくマネー。

池田:まあ、それもどうかと思うけど(笑)。

平野:ですから私は、小泉さんが立候補というから、決算委員会で竹中さんに聞いたんですよ。あなたの市場原理主義というのも分かるが、しかし文明の変化、文明の特質、歴史と場所を正確につかまえて、市場原理を変化させないと、人類は壊滅しますよ、どう思いますかという質問をしました。そうすると、市場原理がすべての正義をつくりますと答弁したんです。

池田:そんな答弁をしたんですか?

平野:記録に残っていますよ。僕はそれから決別しましたよ。だから小泉さんの新自由主義はそっちのほうなんですよ。

池田:ということは、平野さんの考えが小沢さんに近いとするならば、小沢さんの考えも、小泉さんに近いようなアメリカ的合理主義とは少し違っていたということですか。

平野:アメリカ的合理主義というと何もかも硬くなってしまいますが、要するに日本的談合の、みんなで渡れば怖くないというようなああいう思想は合理的な論理と倫理と効率性のある仕組みにしないとだめだという思想ですね。

池田:それは僕も感じました。小沢さんと話した時、印象的だったのは、自民党時代は社会党もみんな地下茎でつながっていた。要するに止めているような芝居をしているだけで、結局なれ合いでやっていた。それから田中角栄的な手法で、自分が後継者だというが、田中や金丸や竹下は、足して2で割る天才だった。総合病院といわれるように、いろんな患者がくる。それをだれもが納得できるように足して2で割る、それが田中の本質だった。私も勉強したが、それではいけないというのが私の政治的原点だった。

平野:小沢さんと私と、意見の違いはそうありません。あの人とつきあうこつは、思考を共有すること。別々の人間になってはいけない。思考を共有すると、すごい論理とひらめきがでてくる。そういうノウハウのない人が嫌われていく。

池田:小沢さんの話がある意味で一貫していると思ったのが、足して2で割る、コンセンサスで既得権を守り、みんなにいい顔をするという、田中さんや金丸さんのころは高度成長期だったからそれでみんなに分け前をあげればよかったんです。日本が傾いてくると、みんなにいい顔をできなくなるという時代の変化がある。

平野:大事なことは、当時は冷戦で、日本に社会主義的政権をつくるわけにはいけない。そのためには、足して2で割ったり、内閣機密費で工作したり、わたしはそんなシナリオばかり書かされていたわけですから。

池田:これはUstreamだからぶっちゃけた話、野党にも金が渡っていたと複数の人が証言している。

平野:私はもう体験者、実行者ですから。

池田:これ言っていいんですか?

平野:これは会議録に出ていますから。だから塩爺がテレビで機密費を扱っていたと言っていましたけど、大蔵大臣になったらなかったという風に言っている。私は決算委員会で、「大蔵大臣、私と一緒に官房機密費を持って行ったじゃないか」といったら、もう頼むから許してくれと。

池田:ははははは(笑)。まさに小沢さんが言ったように地下茎でつながっていて、国会で横になったら300万とか、3日泊まったら500万とか、そういう相場でやっていたわけですよね。

平野:えへへへ。私は社会主義政権を日本につくらせないための行為だと自分に言い聞かせて、私は議長と秘書とか議運とか、先生方のへそから下のお世話をしましたからね。

池田:今日はUstreamだからなんでもありということで。
僕は小沢さんの地下茎でつながっている、という話はなるほどと思ったんです。90年代と今は、政治的、政策的には違うような感じがするけれど、小沢さんの根底にあるのは、今まで通りみんなで仲良く既得権を守って、今まで通りやっていこうという、そういうのではあかんということへの危機感というのは、一貫してあるのかなと。

平野:それでですね、いろんな議論を2人で徹底的にするんですが、小沢は最近社会主義者になったといわれますが、多少平野のせいだといわれるんですよ。私は別に社会主義者じゃないんですけどね。
これは世の中の変遷に対する対応なんですよ。大事なことは、本当に日本の国会議員や学者がこんなにばかとは思わなかったが、20世紀の終わりごろから資本主義が変質した。重化学工業社会から情報社会に変わった。
情報社会の価値観は重化学工業社会と違う。重化学工業社会では、所有要求と存在要求の排他的競争が許された。情報社会では、マネーゲームを含めてそれでやってくれなさいと。おかしくなるのは当たり前なんですよ。そこで新しい価値観として、日本人が古来持っていた共生欲求という価値観をプラスした3つの価値観で制度とか政治の運用をすべきというのが小沢さんの考え方なんです。

池田:それは平野さんの考え方でもある。

平野:そうです。かつての重化学工業資本主義では、機会を平等に与えれば、あとは本人の努力という。社会保障も働く機会、うんと困った人には最小限でという考え方で社会保障制度がなっていた。
情報社会では、情報を整理でき、貴重な情報を早く知るもの。体の神経を外にだしたような社会。そういう社会では、セーフティーネットは可視的でないと、貧しい人がたくさんでると社会不安のもとになる。そこでセーフティーネットをつくるとなると、ある程度の結果平等となる。保障してやらないとだめだと。それを国や地方の責任で整備したうえで、自由で公正な競争をする、それが共生資本主義。これをつくろうというのが、小沢さんの考え。その一端を、この前の代表選挙で述べているわけです。

民主党の代表選挙や3年前の参議院選挙では、そういうことをいうと内ゲバ的になってしまう。理念的なことをいわずに、国民生活が大事という柔らかい言葉にして、子育て支援もある意味で農業の所得補償も、日本型セーフティーネットのひとつの形なんですよ。それを民主党の元左翼の人達は、今ネオコンになっていますから、アメリカの反戦ベトナムのようになっていますから、イデオロギー的な論争になってまとまっていかない。私が早めに引退したのは、こんな連中と政治行動はできないと分かったから。
政権交代して、今回のようないやらしい内ゲバ的なことが1年で起こったからびっくりした。

池田:小沢さん自身の肌合いといいますか、それと新体制の人は合わないという感じですよね。

平野:なんというか、僕に言わせると、彼らは政治を論理と効率性と合理性だけでみている。理屈とデータと行程表があれば政治は動くと思っている。
僕は、政治は子どもをつくって育てるのと同じように、そこには論理性と理性と倫理性とあたたかい感性がいる。生き物なんです。政治をいきものとみるか、物理的現象としてみるかの違い。これは対立のひとつの原点です。

私はある意味土佐自由党の流れですから、そういうオーソドックスな保守主義者からいえば、世の中の変化、情報社会で秩序ができない間に大きな格差ができるのは、僕は社会主義といわれようと、結果平等を保障してやるのが政治の役割だとおもっている。

池田:社会主義とは思いませんが、さっき平野さんもおっしゃったように、自民党にも民主党にも考えの違う人が同居している。それが日本の政治が不安定になっている最大の原因だと思うんです。これは有権者が小沢さんに一番期待していたのは、それを一度ガラガラポンで整理して、同じ人たちで二大政党のような形にならないと、日本の政治は安定しないと。

平野:その通りです。それは政治家の倫理感と理性の問題なんです。というのは、目的や感性を無視している。私は50年近く、政治に関わっていて、現代ほど政治家の感性と理性が劣化したことはないと思う。

池田:国民はうんざりしていますよ。今回もネット上では、小沢さんの人気があった。みんなが小沢さんに期待しているのは、今のわけのわからない状況をガラガラポンでもっとわかりやすくしてほしいと。

平野:それは小沢さん個人にはできないんですよ。各人の理性と倫理性に訴えないと。政権を作っているひとが、内閣には何人かいますが、マスコミを使ったパフォーマンスが得意な人にはそれがないんですよ。

やはり記者クラブメディアに問題があるわけですよ。1億総白痴化に加担しているわけだから。メディア対策をしようという小沢さんに対して、例えば電波料金はNHKは払っているが、安いもの。3兆円の市場で80億。オークションにしようといっているが、新聞とテレビは一緒になっているから文句を言わない。新聞とテレビのクロスオーナーシップを禁止しようとする。新聞社はほとんど赤字ですからね。情報化社会を公平にしようとしている。それは冗談じゃないと。いわゆる談合報道をやっているわけ。

自己改革をできない記者クラブメディア、検察の垂れ流しを報道する、こんなことで世の中の常識が育つわけがない。ネット社会で、ネットにもいろんな種類があるが、私もアナログ人間でネットの勉強をしているが、これは国民のまともな意見だというものがだいぶ出てきた。

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