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固定価格買取制度の見直しの方向性について①:調達価格の決定メカニズムに関して

とてもマニアックな話題です。

再エネ業界は政府の政策の影響を大変受ける業界なので、しばしば「経産省が〜するらしい」というデマが飛ぶ。特に最近太陽光発電が飽和しつつあって市場としても曲がり角を迎えつつあるので、頭の整理がてら何回かに分けて、現在の固定価格買取制度の見直しの方向性に関する議論をまとめておくことにした。

まず大前提として「12月から経産省が突然運用を返る」というような噂が飛んでいるのだけれど、これは役所、というか民主主義、の常識に反するので、この可能性は低いだろう。昨年の例を見ても固定価格買取制度の運用は、経済産業省の新エネルギー省委員会で十分な議論がなされて、そこで一定の結論が示されてから運用が変更される。役人の裁量で直ぐに運用が変えるようなことは我が国で許されていないし、そうでなければ事業者の予見可能性が担保されない。

それを踏まえて、現在固定価格買取制度の調達価格決定の在り方に関して、新エネルギー小委員会でどのような問題が指摘され対策が検討されているかというと以下の通りである。(以下使用する画像は全て資源エネルギー庁の資料からの引用)

 

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現行制度

現行制度では、調達価格は年度の区切りごとに見直され(h24年度:40円/1kwh、h25年度:36円/1kwh、h26年度:32円/1kwh)、

○経済産業省からの設備認定日(運転開始前に大幅な出力変更(20%以上)がある場合には当該変更認定日)か、

○電力会社の接続申込みの受領日

のいずれか遅い日が属する年度で決定されている。

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問題

現行制度では実際に発電設備の系統への接続が確定していなくても調達価格が先に決まる仕組みとなっており、また調達価格が決定された後でも「○年○月までに接続し運転開始しなければらならない」という制約もない。そのためこうした制度の隙間を塗って、高価格で売電できる権利だけ先に抑えてしばらく何もせずに、コストが低下した後に、接続・運転を開始して超過利潤を得ようとする事業者が生まれる懸念が指摘されている。

 

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対応方針1:設備認定の取り消し・失効を加速化

対応方針の一つ目としては、高価格の売電権利を長期にわたって保持できなくするように、一定期間動きが無い設備認定案件については、経済産業省が認定を取り消す動きを加速化している。具体的な方策としては2つ。

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  【①平成25年度以前の案件に対する対応
平成25年度以前に設備認定を受け未だ運転を開始していない400kw以上の太陽光発電事業(出力ベースで概ね全体の70%)について、個別に報告徴収を行い、土地・設備の確保が確認できない場合には、聴聞を経て、設備認定を取り消す手続きを進めている。

 ただし後手に回った感は否めず、平成24年度の認定案件でまだ手続きが進んでいないもののうち、2/5にあたる9.7%分は認定を取り消したが、残りの14.5%分は宙に浮いた状態にある。電力会社事情で系統接続ができなくなった案件もあり、単に接続を取り消せば良いというものでもないのでこの扱いは難しい。

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  【②平成26年度以降の案件に対する対応
平成26年度以降に設備認定申請された50kW以上の太陽光発電事業に対しては、運用を変更し、土地・設備の確保が確認できない場合には、原則設備認定から180日以内に、最大でも360日以内に、設備認定を失効させるとの条件を付して認定を行うこととしている。

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ということで平成26年度以降の案件については②で十分な対応が為されいてるが、問題が平成25年度以前の案件で、特に平成24年度認定で未稼働の14.5%分の扱いについてどうするか、ということが主要な論点になっている。いずれにしろ未稼働案件の認定の取り消しはいつかのタイミングで行うしか無いわけで、行政訴訟リスクを避けるためにどのような手続きを踏むかということが来年早々に明らかにされると思われる。

対応方針2:調達価格決定後のコスト構造の変更への対応(運転開始前)

現行制度では、運転前の設備に関して、20%以上の大幅な出力変更がされる場合にのみ、変更認定時点の価格を再適用することとしており、その他の変更については、調達価格は維持される仕組みになっている。しかし、調達価格決定後に設備の仕様を変更することで設備のコストが低下するケースがあることが指摘されている。このため、調達価格の決定後、一定の設備の仕様変更が行われた場合にも、変更認定を求め、変更認定時点の調達価格を再適用させるべきとの意見もあり、この点についてどのように考えるべきか、複数の案の検討が行われている。具体的には

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 【A案:設備の仕様変更が少しでもあれば(軽微な変更や自己事由によらない変更も含む)調達価格を見直す】

 【B案:20%以上という調達価格の再適用を求める出力変更要件を強化して対応する】

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の選択肢を軸に「太陽光のように設備のコスト低下が進むもののみか、全ての再生可能エネルギーに適用すべきか。」「認定済み・運転開始前の案件についても適用すべきか。適用するとした場合、経過措置についてどう考えるか。」などといった論点が付随している。ただA案は問題点が多くおそらくは噛ませの選択肢なので、B案を軸に調整される可能性が高いと思われる。

なお軽微な変更の要件に関しては完全に資源エネルギー庁の運用に預けられており、現状の20%の範囲での出力変更を「軽微な変更と見なす」とする運用についてもエネ庁のパワーポイントのみで示されている。これは事業者の予見可能性を妨げるので、せめて軽微変更の基準についても告示レベルに落として欲しいと思うのだけれど、こればかりは今更言っても後の祭りではある。

そんなわけで、運転開始前の案件については軽微変更の範囲の見直しが進められる可能性が高いのだが、いずれにしろこちらも来年早々に委員会にて見解が示されると思われる。

 

対応方針3:調達価格決定後のコスト構造の変更への対応(運転開始後案件)

 

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 現行制度では、運転開始後は、大幅な出力変更が行われた場合であっても調達価格は当初のままとなる。例えば太陽光発電で40円/1kwh×20年の売電権利を取得した50kwの設備を、すぐに1990kwまでに増設する出力変更を行った場合、規模は40倍にまで拡大するのだがそれでも売電価格は40円のままとなる。調達期間の20年自体は変わるわけではないので、設備増設部分に関してはそれが完成するまでの間がさっ引かれて買取期間が必然的に短くなるのだが(例えば工事に2年かかれば(20年−2年)で18年が買取期間となる)、最近の調達価格の下落ペース(年間約10%減)が調達期間の短縮による損失(年間約5%減)に比べて大きいため、こうした脱法的手法で設備を拡大した方が儲かるという問題がある。

端的言えば平成26年度に権利を取得した案件(32円×20年=640円)よりも、平成24年度に権利を取得して出力変更をした場合(40円×18年=720円)の方が利益率が高くなってしまう。

これは制度趣旨に反する。そのためこの対策として、大幅な出力変更となる増設については、

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【A案:調達期間は維持したまま調達価格を変更とするべき】

【B案:増設とせずに別の認定設備としてその時点の調達価格を適用(調達期間はその時点から開始)とするべき】

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とする二案の選択肢を軸とした検討がなされている。どちらも甲乙つけがたいが、A案の場合は電力会社との契約の変更も必要となり、運用が複雑となるので、個人的にはシンプルなB案が採用される可能性が高いのではないかと感じている。ただこちらも結論は待つしか無い。

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と現行の価格決定制度の運用に関する3つの見直しの論点を紹介したが、これに加えてそもそも現行制度に述べた価格決定のタイミング自体について見直そうという検討も行われている。ただ、これは告示改正がも必要となる話なのでまた別途まとめることにしたい。

ではでは、専門的な話となったが今回はこの辺で。

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