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デフレ「が」問題なんじゃない

過去にも散々書いてきたことではあるので、しばらくこの話題は書いてこなかったがまた書くべき時が来たのかなと思っている。世の中で「デフレ」というと「物価が下がること」のほかに「景気が悪いこと」・「成長が鈍いこと」も含めて使われていることが多い。だが、ここでは「物価が下がること」という正しい定義においてのみ「デフレ」という言葉を使いたい。

アベノミクスとやらで物価が上がる、そして日本の景気は良くなるのだといわれた。だが実際はたかだか1年、景気拡大は続いただけ。しかも実際には大量の公共事業によって景気が押し上げられただけだ。2012年2013年と公共事業にGDPの3%強の金をつぎ込んで日本経済は2012年、2013年と1.5%程度しか成長せず2014年はとうとうマイナス成長に逆戻りする可能性も高い。これが現実だ。

そしてこの2年間、経済音痴の自民党は賃金が伸びたと主張するが「実質賃金」は全く伸びていない。

こう考えると「インフレになれば景気は良くなる」という単純な話は成り立たないことが誰にとっても明らかであるようだ。

実査、デフレとはなぜ問題なのだろうか?本当にデフレは問題なのだろうか?たとえば、アダムスミスの「国富論」を読むと「生産性向上による物価下落で多くの庶民が今まで手が届かなかったような品々が購入できるようになり人々は非常に豊かになった」というような趣旨のフレーズがいたるところにみられる。

また、以前も紹介した ようにアメリカ経済は1789年から1913年までデフレだった。じゃあ、デフレで経済は絶不調だったのか?といえば言うまでもない。この時期にアメリカ経済はどんどん成長しイギリスにとって代わる力を付けたのだ。また、最近でも1990年代のアメリカのIT革命による経済成長も非常に物価の上昇は緩やかだった。

このように歴史的事実を見るだけでも「デフレ」だから「経済が成長しない」だというのがいかにばかげているかがわかるはずだ。

デフレは実際何が問題なのだろうか。過去にも書いているので簡単に考えてみよう。

デフレだと「名目賃金の下方硬直性 が問題なのだ」というのがドマクロのベタな説明だが、景気が悪くなっても賃下げしません、人切りもしませんなんて会社がいまどきどの程度だろうか…。現実の感覚に照らしておかしいことはすぐにわかるし、実際の研究でもマクロ経済学者が考える以上に賃金改定や価格変更は頻繁に行われるという事実はよく知られている。

ほかによくあるのは「逆資産効果」とかいう説明。これに関しては以前書いた が、価格下落によって負債を抱えている人たちが支払が苦しくなり困ってしまうというものだ。だが、その裏側でまず債権者は儲かっているはずでなぜ負債を抱えている人だけにフォーカスが当たるのかよくわからない。またもっと単純に資産価格の下落が問題にされる場合もあるが高値で買ってしまって価格下落に苦しむ人がいる裏側には高値でうまく売り抜けて儲かっている人がいるわけで、ゼロサムの世界。だから「デフレによる資産価格の下落」が大きな問題を生むとは考えられない。かりに短期的に問題があっても長期的に大きな問題になるとは考えづらいだろう。

あとは、デフレスパイラルという意味不明の言葉もよくあった。将来にわたって価格が低下することが予想されているので人々が消費を控えそれがさらに価格低下を生み出すというストーリー。将来も価格が下がると考えていれば多くの人が買ってもいいと思うであろう水準まで価格はそれほど時間をかけずに低下するはずなのでスパイラスなど起こりようがない。もちろん、価格が10%下落した後で思ったよりも物価低下圧力が強そうだという見通しが新たに生まれて価格がさらに下がることはあるだろうが、それは物価の低下が物価の低下を生み出しているわけではないことを知る必要があるだろう。

このように考えてもデフレがなぜ問題なのかさっぱりわからない。ちょうどウォールストリートジャーナルにシカゴ大学のコクラン教授も同じような記事を書いていたので紹介しておく。(お金を払っている人しか見れないが…)

Who’s Afraid of a Little Deflation?

結局、豊かになるためには実質ベースで経済成長があるかないかでしかない(ここでは分配の話・格差の話は考えない)。そのためには労働生産性を高めていく。これが一番の近道なのだ。だから実質賃金が上がるかどうかが豊かさにとっては大切であり、金銭と余暇の時間とのバランスが取れることも大切なのだ。だから、多すぎず少なすぎない労働時間でより多くの実質賃金を得て、ほどよい休暇の時間がある。これが人間の豊かさには必要というわけだ。

アベノミクスは結果的に実質賃金を下落させているし、人手不足も深刻化しているという。たぶん、ブラックなただ働き、サービス残業は却って増えているのではないだろうか。

いずれにしても、デフレでもインフレでもそれが極端で予期されないものでない限りは問題がないし人間の豊かさや実質的な経済成長には何の関係もないというのが結論だ。このあたりも過去にたくさん記事を書いているので興味があれば見ていただきたい。

デフレについて書き始めるときりがないので今日はシンプルな形になってしまったが、「デフレ」を脱却すれば、「物価が上がれば」豊かになれるというアベノミクスとやらがどうもおかしいということにみなさんが気づき始めているようなのでちょうどいい機会だと思って簡単に書いてみた次第であるし、今後もちょくちょく書いていくつもりである。

↓参考記事。少し古いので今と考え方が少し変わっているかもしれないですが基本は同じですので。
リフレに対する素朴な疑問(5)  (2010/11/18)

リフレ派への素朴な疑問(2) インフレってそんなにいいのか?( 2010/10/28)

リフレに対する素朴な疑問(1)  (2010/10/20)

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