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安倍自民党政権では少子化問題に対応できない

■少子化問題の認識が大幅に遅れた過去の政権

少子化問題は国民の大多数が懸念する大問題ですが、決して最近になって降って湧いた新しい問題ではありません。今でこそ大きな声で懸念されていますが、その認識も、対策も20年以上前からスタートしています。ただ、その認識と施策が“誤りであった”のではないか、これが私の認識です。

少子化対策のスタートとされるのが、1994年の「今後の子育て支援のための施策の基本的方向について」、いわゆる「エンゼルプラン」です。1990年の「1.57ショック」を契機に、政府は出生率の低下と子供の数が減少傾向にあることを初めて「問題」として認識したことが、少子化白書などに書かれています。

一方で、少子化の兆しは1990年より前から表面化していました。それは、合計特殊出生率が1975年から2を下回り始めたこと、つまり人口維持に必要とされる出生率を下回り始めたのは、今から40年も前のことです。その兆候から15年以上経ってから、取り組みが始まったわけです。1970年代は確かに人口爆発の時期ではありましたので、その対策に手いっぱいで、将来的な人口減少に意識が向かなかったのでしょう。ただ、もう少し想像力を働かすことが出来たのならば、1.57ショックを待たずとも少子化対策が出来たはずです。

■少子化政策に変化を試みた政権交代

歴代の総理演説で、少子化政策を子育て対策を越えて本格的に取り組もうとしたのが、鳩山由紀夫内閣です。今でこそ、各方面から鳩山さんに対して言いたい放題ですが、政権交代後、初の所信表明演説での演説は、少子化対策の本質を突いています。

「子育てや教育は、もはや個人の問題ではなく、未来への投資として、社会全体が助け合い負担するという発想が必要です。人間らしい社会とは、本来、子供やお年寄りなどの弱い立場の方々を社会全体で支え合うものでなければなりません。子供を産み育てることを経済的な理由であきらめることのない国、子育てや介護のために仕事をあきらめなくてもよい国、そして、すべての意志ある人が質の高い教育を受けられる国を目指していこうではありませんか。このために、財源をきちんと確保しながら、子ども手当の創設、高校の実質無償化、奨学金の大幅な拡充などを進めていきたいと思っています。」

この具体的政策の象徴が、子ども手当と高校無償化であり、その一部は実現したものの、当時の野党に“バラマキ”と批判をされたことは鮮明な記憶として残っています。子ども手当は、昔の児童手当からいくら積み増すかに報道が集中し、政権側も政策効果よりも額の多寡をアピールしてしまいました。本来は、子ども手当の創設によってどれだけ少子化を食い止めることが期待されるか、高校無償化によってどれだけ経済的な理由から子供をあきらめる人が少なくできるか、そうした点をロジカルに説明し、アピールが必要であったはずのものが、“効果”よりも“額”に固執してしまった、これが大きな失敗でした。また、財源に関しても「無駄の削減で財源捻出をできる」と言ったものの、その通りにならなかったことが、バラマキ批判へとつながってしまいました。

再び自民党に政権が戻り、安倍政権も少子化対策に力を入れているように見受けられますが、これも「育児政策」に偏ったものであり、少子化を最小限に食い止めるための労働政策などにまでは届いていない印象です。

■少子化には「雇用の劣化」が影響し、夫婦の出生力ポテンシャルも活かせていない

中央大学の松田茂樹教授が2013年に出版した「少子化論 なぜまだ結婚・出産しやすい国にならないのか」(勁草書房刊)には、わが国の少子化に関する要因を、データを示しながら丁寧に、説得力を持って示しています。同著の中で、少子化克服への道としていくつかの少子化に至った要因を指摘していますが、その中でも雇用の劣化と、夫婦の出生力ポテンシャルを活かせていない点については、大変説得力があります。

松田氏は同書で、様々なデータを引用しています。ひとつが、内閣府政策統括官「平成21年度インターネット等による少子化施策の点検・評価のための利用者意向調査」です。

この分析を通じて、「非正規雇用であることや年収が低いことから結婚意欲が弱くなるのは、男性においてみられることである。男性の非正規雇用者は《非婚志向》になる。たとえ年収が高くても、雇用形態が非正規雇用であれば、男性は非婚志向になる。また、男性の正規雇用者も、年収が三〇〇万円未満と低ければ、結婚意欲は弱まる。」と結論付けています。もう一点が、日本のカップルが、希望するまで子供の数を増やせないことを、他国との比較から明らかにしていることです。日本よりも出生率が高いアメリカ(1.93)、フランス(2.01)、イギリス(2.00)、スウェーデン(1.98)との比較を通じて、それぞれの国のカップルが欲しい子供の数はあまり変わりがないのに(だいたい2.4~2.6人)、実際に欲しい数だけ子どもをもうけることを断念した人は、日本において多いことがわかるとデータを通じて示しています。その大きな理由として、子育てや教育にお金がかかりすぎることが挙げられています。大学の授業料が無料のスウェーデンでは、この理由で子どもをもうけることを断念したとする答えは皆無でした。

これらからわかるのは、わが国の少子化対策は、子育て支援、特に保育支援に集中してきましたが、それだけでは不十分であることが、現状を見れば明らかです。

■解決の方向性

この選挙では、アベノミクスの是非が争点となっています。経済政策を中心にアベノミクスが語られますが、安倍政権の政策が続けば、不安定雇用が増え、低い年収で働かざるを得ない層が、そもそも結婚できない、結婚しても子どもを産み控えてしまう、そうした実態を変えない限り、少子化は改善されません。

では、具体的な解決の方向性はどういったことが考えられるでしょうか。まず、教育費対策です。今、小中学校での習い事や塾にかかる親の負担は、多くの家庭で数万円に達します。このコストを下げる知恵が必要です。例えば、放課後の空き教室を活用してピアノや絵画などの習い事を学校で行うことが出来れば、習い事のコストを下げることが出来るのではないかと考えます。また、東京など大都市の大学へ子どもを住まわす際の仕送り代も、相当な負担となります。これは、下宿代が相当高いことが問題と考えます。日本は、他国の大学と比べて寮のような施設が少ない社会です。こうした設備を整備することで教育費、生活費の低減を図ります。勿論、学費そのものの低減を図ることも大切です。

働き方の面では、正社員として働ける方を多くするのが理想ですが、その前に、同一労働同一賃金を徹底させ、雇用形態による差別をなくし、結婚を躊躇する方のハードルをなくすことです。

結婚したいのに踏み切れる環境がない、結婚したはいいが子供を産み育てる経済的な自信がない、そうした思いを持つ方々が、希望を持って家族を持とうと踏み切れるような社会、これを目指さなければなりません。

こうした点を、簡潔に、しっかりと訴えて行きたいと思います。

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