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【読書感想】プロフェッショナル 仕事の流儀 人生に迷わない36の極意

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プロフェッショナル 仕事の流儀 人生に迷わない36の極意 (NHK出版新書 441)

内容(「BOOK」データベースより)

イチロー、遠藤保仁、井山裕太、藤子・F・不二雄、宮崎駿…彼らは何を大切にして頑張り一流になれたのか?挫けそうになったときに必ず頭に浮かぶフレーズ、若き日に師から言われた忘れられない一言など、自らを奮い立たせてきた珠玉の言葉を感動のエピソードとともに紹介。もがきながら懸命に生きるすべての現代人に向けて、プロフェッショナル36人が贈る、人生を切り拓くための「極意」!

 NHKの人気番組の書籍化、というか、番組の「いいとこ取り」のような内容なのですが、さまざまな業界の「プロフェッショナル」たちの仕事への向き合い方とか、発する言葉には、やはり重みがあるのです。

 当たり前のことなんですが、どんなに才能に恵まれているように見える人でも、ちゃんと努力をしているし、うまくいかなくて壁にぶち当たって悩むこともあるのだなあ、と。

 この本のなかで、僕が「ああ、これはカッコいいな」と思ったのは、イチロー選手のこんな言葉でした。

 このインタビューの三日前、イチローさんは40歳の誕生日を迎えた。

 同年代の選手の多くは、すでに現役を退いている。この節目の年齢をどう捉えているのだろうか。その質問に、イチローさんは軽妙な譬(たと)え話で答えてくれた。

「譬えがあまり適切じゃないかもしれないけど、朝、着て行ったプレスのしっかり利いたシャツが、仕事をして家に帰る頃には、ちょっとくたびれた感じっていうのが、いいじゃないですか。そういうのを見て、奥さんがほろっとしたりって、あると思うんですよね。

 それが”表情”じゃないですか。シャツを見るだけで、あぁ頑張っているんだな、とか。シャツばパリパリのままだと、何もおもしろくない。時間を経ることによって、それなりの風味みたいなものが出てきたらいいな、というふうに思っているんですけど。でもそのためには、やっぱり自分のなかの”何か”と向き合わないとできいないですね。自分の外の”何か”と向き合っているだけの人は、なんだろう、まあ、悪い顔になりますよ(笑)。まあ、俺ももう40歳だから、年だから、って言うのが楽なんですよ。そこに理由を持っていくと、まあそうだよねって周りもなるし、面倒くさくないじゃないですか。でもそうじゃなくて、大切なのはバランスですよね。ただ意地だけでやっているのと、ほんとうに自分のことを分析して、客観性を持ったうえで、何かに向かっているのとでは、全然違いますからね。だから認めつつ、前に進む。”俺はじじいなんかじゃねえ”って言うよりも、”いやもう僕もおじさんだからさ”って言いながら、でもちょっと、ふつふつと胸に持っている、みたいなスタンスがいいんじゃないかと思いますね」

 僕もこのイチローさんの回は、リアルタイムで観たんですよね。

 そのなかで、もう40歳になり、控えに回ることも多くなった「伝説をつくってきた選手」が、モチベーションの維持に苦心しているのが、すごく印象的で。

 もう、やめちゃってもいいんじゃない?一般人の十生分くらい稼いだだろうし……なんて思ったのですが、イチロー選手は「控え選手としてコンディションを整え、長いシーズンを過ごすこと」も、「これまで自分が野球選手として体験できなかったこと」だと考えて、その経験をプラスにしようとしていたのです。

 もちろん、自分の力にまだそれなりの自信がないと、できないことなのでしょう。

 イチロー選手の年齢、年俸であれば、それなりの結果を残していかないと、リストラ候補の上位になってしまうことは間違いありませんし。

 僕も40歳代の男として、この「ちょっとくたびれたシャツのカッコよさ」を目指したいものです。

 また、初代「はやぶさ」の「マイクロ波型イオンエンジン」を開発した、宇宙工学者の國中均さんの、こんなエピソードにも感銘を受けました。

 なかなか実用化できないイオンエンジンだったのですが、1994年に「はやぶさ」のプロジェクトマネージャー、川口淳一郎さんが、このエンジンに目をつけ、「はやぶさ」に搭載するための開発を國中さんに依頼したのです。

 だが、打ち上げまで5年というタイムリミットは厳しく、一向に成果が上がらない。最低1万時間の運転に耐えうる性能が求められるが、100時間の壁さえ越えることができず、瞬く間に2年が経った。同僚に進捗状況を聞かれるのが怖くなり、食堂に行けなくなった。夜眠ることができず、常に失敗のアラームが鳴っている感覚に襲われた。

 「怖くて怖くてしょうがない。ないかもしれないんですよ、答えがね。この方法は間違っているかもしれない。不安でたまらないですよね」

 國中さんは思い詰め、ある行動に出た。自分を電気推進の分野に導いてくれた恩師、栗木恭一教授の元を訪ね、「研究を辞めたい」と告げたのだ。

 栗木さんはこう答えたという。

「歩いてもいい。でも止まってはいけない」と。

 宇宙開発の現場は、未知の現場。先人たちが、血を吐くような努力と研鑽を積み上げ、ほんのわずかずつ切り開いてきた。その果てに、今の自分の研究がある。たとえ怖くても、その歩みを止めてはいけない。

 研究の世界の怖さは、「答えがわからない」こと以上に「答えが存在するのかどうかさえわからない」ところなんだなあ、と。

 もしかしたら、出口がない道を、ひたすら歩いているうちに、一生を終えてしまうかもしれないのです。

 しかも、「はやぶさ」のイオンエンジンには「締め切り」がありました。

 栗木教授の「歩いてもいい。でも止まってはいけない」という言葉は、優しさ、というよりも、「宇宙開発でタスキをつないできた先輩たちの想い」を、あらためて國中さんに伝えたのだと僕は思います。

 『はやぶさ』を題材にした映画のエンディングで、これまで日本が打ち上げてきた、さまざまな衛星が紹介されていたんですよね。

 その中には、成功をおさめたプロジェクトもあったし、失敗に終わったものもありました。

 でも、そうやって試行錯誤を繰り返した歴史のうえに『はやぶさ』があり、これからの宇宙開発があるのです。

 堤幸彦監督の映画『はやぶさ』で「日本のロケットの父」と呼ばれる、糸川英夫さんの、こんなエピソードが出てきます。

 糸川さんは、うまくいかなかった事は「失敗」じゃなくて、「成果」なんだと常に言っていた。

 この新書で「プロフェッショナル」たちの話を読んで痛感するのは、「失敗をしない人間はいない」ということでした。

 どのプロフェッショナルたちも、それぞれ、「痛恨」ともいえるような失敗を経験しています。

 ところが、彼らはみんな、その「失敗」から学び、次の成功につなげているのです。

 「すごい人たちのベストアルバム」みたいな本なのですが、読むと、少しだけ勇気がわいてきます。

 まあ、「読んでその気になる」だけじゃ、はじまらないんですけどね。

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