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日本は戦前ソーシャルダンピングで世界の嫌われ者だった?労働基準法が定められた時代を調べて見えてくる幾つかの事。

ブラック企業というワードが定義が曖昧なまま様々な場面で用いられるので労働集約型の業務を行う零細会社を経営する立場としては悩みが尽きません。

ちょっと前の話になるのですが、大学でレポート課題を作成しなければいけない事情があり、戦後の歴史の中で労働基準法がどのような議論の中で生まれて来たのかを調べる機会がありました。

戦時中に職員も工員も皇国の産業戦士として平等だという戦時中の思想が、社会主義的な装いで再確認されたという指摘をこちらのエントリーで紹介しました。

産業革命から労働法制が整備されていくまでの過程では、労働者側が生活を成立させるために長時間労働を求めざるえない状況も存在していました。

日本で8時間労働が採用された当時のエピソードがこちらのPDFで紹介されていますが、労基法が制定されるまでは工場事業場ごとにその内容も自由に設計することが可能だった訳で、これもあり方のひとつだと思います。

労働基準行政50年の回顧』という書籍を見ると、労働基準法の立法理由のひとつとして、チープレーバーによるダンピング製品という汚名の一掃という命題があったという記述を見つけることができます。

そこには昭和23年の国際貿易会議で「国際貿易機構に参加する國はその領域内において公正な労働条件の基準を維持しなければならない」という条項があり、これが産業政策の一大指針となったとあります。

その他にILOにおいても日本のILO再加盟にあたり、日本の産業再建にあたり公正な労働条件が維持されるかどうかに懸念が表明されていたようです。そしてGHQや当時来日したアメリカ労働省の労働次官補が記者会見で「戦前のような低賃金政策の採用は全世界の組織労働者の反対を請け同時に日本の輸出回復に対して致命的な打撃を与えるであろう」とまで発言していたようです。

この章にある、戦前の日本がソシアルダンピングのために嫌われ者であっことは周知の事実であったということ、日本の製品は長時間労働低賃金の悪労働条件の下に生産されたものではないことを首肯しない限り日本製品が市場から閉め出される懸念があったという話しは、グローバル化した現在の経済環境を考えると様々な観点から興味深いものがあります。

労働基準法は昭和44年あたりから施行後二〇余年の諸情勢の変化などを背景として調査・研究などが行われ労働時間特例の廃止など動き始めているようなのですが、その中で第三次産業における労働条件の整備が課題として認識されていたようです。

そこでは第三次産業が業種により雇用形態、労働形態が多種多様であるが、今後この部門で、就業者の増加が見込まれることから、その雇用形態、労働形態等に応じ、適正な労働条件の確保を図ることが重要としていたようです。

この当時の見込みの通り、産業構造のサービス化はどんどん進み、サービス業に従事する人間の割合も高くなっていますが、前述のような多種多様な雇用形態、労働形態等に応じた、適正な労働条件の確保に労働基準法が適応しているとは残念ながら言えない現状ではないでしょうか。

最後に、現在の日本では雇用創出・促進の一環として起業数を増やそうとする動きがあります。政策を政府自民党は「日本再生ビジョン」の中で起業大国No.1の実現として官邸に「起業大国推進本部(仮称)」を設置することまで提言していたりします。

『労働基準行政50年の回顧』においても労働基準法は破れば罰則がある法令ということでその制定までにはかなりの議論が積み重ねられていたことが伺われる記述を多数見つけることができます。

労働基準法が守れない企業は潰れれば良いという指摘には一定の妥当性があると考えますが、労働基準法が実施されていくまでには労働基準法が大きな役割を果たし、労働者保護の効果を多分に収めたことを認めつつも、中小企業に於いて特に過重な負担となることが心配されていたようです。

昭和24年の3月のGHQによる「日本の労働基準」談話発表から経営者団体から公式、非公式さまざまな形で改正要望意見が発表されたようです。

その中で代表的とされるものに東京商工会議所の「労働基準法改正意見書」というものが代表的とされているようで、一部を『労働基準行政50年の回顧』から紹介しておきます。

本法の理想が早晩小企業に対しても実現さるべきものであることについては異論はないが、

  1. 現在概して経済力の弱小な小企業は本法の責任を負担しきれないこと
  2. その存立の基礎を専ら家族主義的労働関係に置いている小企業がまだ多数存立すること
  3. 天候季節等による不動的特殊性をもつものが多いこと等の事情を考慮すると、小企業が本法の完全実施の対象としてふさわしい段階に達しているとは考えられない。

現代においては、労働基準法を遵守することを基本前提でビジネスプランを考える必要がありますが、今回紹介したようにそもそも経済力の小さい会社における負担は軽くないと認識する必要があるということです。

第三次産業の拡大は言うまでもなく、IT産業が登場してきた現代においてその雇用形態、労働形態等に応じ、適正な労働条件を定めるという観点から、現在の労働基準法は、ホワイトカラー・エグゼンプションであったり、専門型裁量労働制のより柔軟な運用を可能とするなど何かしらの改革が必要な気がします。

起業が増えれば雇用も増えるということで商法改正して資本金いらなくした効果がどの程度あるのか調べてないですが、そもそもグローバル社会の影響で単純な仕事は地方や海外で処理されるようになり仕事が減っている側面があります。

私がやっているクリエイティブ関連の仕事ですと、付加価値を高めるためには企画やアイデアを丁寧に作り込む必要がありますが、日本ではあまりこ領域にお金を払いたがらない会社も多いです。

最後に、社会全般、時代の流れとしてあまりそこに時間と手間を掛けずスピーディーに物事を進めたいという要求といかに収益バランスを取りつつ会社を存続させるのが時代が求める経営スタイルだと思います。

こんな時代なだけに労働者保護だけでなく労働生産性の低さの改善ももっと進んで欲しいと労働集約型の業務を行う零細会社を経営する立場としては思うのです。

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