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アベノミクスへの逆提案‐ふつうのバランスのとれた経済政策


 これまで、アベノミクスを批判してきましたが、それではどのような経済政策が望ましいと考えているのか申し述べたいと思います。

 経済活動を行うのは企業や個人の民間経済主体です。個々に生産性を上げて、経済のイノベーションを図ることが重要です。つまり潜在成長率を上げることを目標にすべきです。

 このことに関して、アベノミクスの第1の矢の金融緩和や第2の矢の財政のバラマキでは対応できません。

 どちらも第3の矢の成長戦略のための時間稼ぎに過ぎません。

 しかし、「中央銀行による超金融緩和策」は、政治家がその「痛み止め効果」に甘えてしまうと、結果として構造改革が遅れ、「時間の浪費」となるとの指摘があります(加藤出レポート2014年11月14日号)。

 日銀がほぼ全額の国債購入で政府の財政ファイナンスをする結果、今の安倍内閣が陥っている状況そのものです。

 規制緩和などの構造改革を先送り、増税を先送り、追加財政をバラマキ、完全に財政規律が失われてしまいました。

 アベノミクスの売りであった「円安」の結果、「円安対策」の補正予算で景気回復?

 これほどの失政はありません。それでも、日銀が国債を買ってくれますから、経済対策が可能になります。

 (税収増で対応するから大丈夫と言われても、本来そのお金は借金を返すためのものですから、同じことです。)

 補正予算を組めば、おそらく、2015年度のプライマリーバランス赤字半減は難しくなるでしょう。


 結局、子どもや孫へのつけ回しを増やすだけです。世代間会計の発案者コトリコフ教授は、このような状況を「財政的幼児虐待」と名付けました。

 一方で、潜在成長率を高めるためには、労働力、資本の投入を増やし、生産性(TFP)を上げるしか方法はありません。

 人口減少の結果、労働力人口も毎年1%近いマイナスが続いています。

 民間の純資本ストック(投資マイナス減価償却)は2009年以降マイナスとなっています。

 原因は、国富の増加分である「国民純貯蓄」が、社会保障費でふくらんだ政府部門の赤字のためにゼロになっているからです。

 日本は、国富を減らし、投資もマイナスの国になってしまいました。

 労働人口をすぐに増やすことはできませんから、処方箋は、

 ①社会保障を合理化して、政府の赤字を減らすことと、

 ②生産性を上げること、

 しかありません。

 経済政策にマジックはありません。一か八かの冒険主義はリスクが高すぎます。

 安倍内閣以前の自民党と民主党の政府が異次元の第1の矢と第2の矢政策を取らなかったのはそのためなのです。痛み止めから逃れられなくなるのを、できる限り回避してきました。

 社会保障制度の改革は痛みを伴います。しかし、待ったなしです。消費税で手当てするはずの社会保障費用を借金で賄うというのは論外です。

 ひとりひとりの生産性、人間力を高めるためには、アベノミクスが広げた貧富の格差を小さくし、教育と職業訓練に力を入れるほかありません。

 もちろん、規制を緩和し、市場を自由化することも着実に行わねばなりません。

 地味ですが、当たり前の政策をコツコツと、倦まず弛まず続けることです。

 潜在成長率を上げるための魔法の杖はありません。

 ひとりひとりの命がキラキラ輝くことのたいせつさに気づき、ひとりひとりの人間力を高めることに予算を使いたい。

 今こそ、ふつうの、バランスのとれた政治が求められています。

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