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井戸まさえさんに聞いた (その1)「まさか、私の子が無戸籍に・・・」母の闘いはこうして始まった

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認知調停という方法を発掘

南部  前夫を相手に、調停・裁判を行うことは考えませんでしたか。

井戸  親子関係を否定するためには、前夫の方から自分の子ではないと訴えるか(嫡出否認の訴え)、母子の側から、この子はあなたの子ではありませんねという確認(親子関係不存在確認の訴え)を、前夫と行う方法があります。しかし、いずれも、前夫の協力がなければ実現しません。
 かつて私も、前夫との離婚協議がかなり負担になったので、もうこれ以上、前夫を巻き込みたくないと思っていました。そもそも、4人目の出生は、前夫には関係がありませんから、前夫を絡ませない方法が何かないものか、一生懸命勉強しました。

南部  前夫を絡ませない方法は、見つかったのですか。

井戸  家事事件(家庭内の紛争などの家庭に関する事件)の判例をいろいろ調べていたら、現夫に子を認知させるという方法で、現夫を相手取った認知調停を起こす方法があることがわかりました。前夫の子ではないことと、現夫の子であることの立証が必要ですが、少なくとも前夫は調停・裁判の当事者にはなりません。前夫が刑務所にいたとか、海外にいたというような事情があれば、認知調停という方法で出来るんです。
 ただ、現夫は自ら、市役所に出生届を出している以上、それ自体が認知行為とみなされるので、私が現夫を訴える利益がなく、認知調停を起こせるのかどうかという問題が残っていました。

法務省のお墨付き

井戸  そうこうしているうちに、法務省にも直接相談できる機会があったので、担当者の方にこれまでの経緯を説明して、認知調停という方法について相談しました。担当者のみなさんは、次々に六法全書をめくりながら、うーんと考えておられましたが、全員が一致して「認知調停でできますよ」と。「ぜひ、あなたがリーディングケースになって判例をつくって、同じような悩み、苦しみを持つ人にも方法を伝えて、判例を積み重ねてください」と言われました。
 認知調停とは、現夫と私との間の便宜的な争いを対象とするものなので、ある意味、“悪知恵”なんです。でも、法務省は「できる」と言ってくれた。お墨付きをもらった私は、早速、裁判所に向かいました。

南部  認知調停がスタートしたわけですね。

井戸  最初は、家庭裁判所の認知調停で進めていたのですが、ある日突然「調停不成立」となってしまいました。確認すると、手続的に間違っていたということではなく、初めてのケースになるので、調停ではなく、裁判の手続をとってほしいということだったのです。
 仕方なく、見よう見まねで裁判の手続を自力で進めました。そして、口頭弁論の期日になり、現夫と2人で地方裁判所に向かいました。私と子どもが「原告」、現夫が「被告」ですね。当然ですが、現夫は私の請求を認める陳述をしました。訴訟上の合意です。合意があれば、すぐに判決になるんですが、裁判長はそのとき「合意だけでは決められません。子の父は、国が決めます」という趣旨のことを述べたのです。
 「国が決めます」と言われたときに、離婚後300日規定のことが頭をよぎって、ゾッとしました。この裁判、負けるのではないかと。

南部  そして、判決の期日を迎えるわけですが。

井戸  私は裁判の原告として、負ける覚悟で裁判所に向かいました。負けたらすぐに控訴しようと、そんなことを考えていました。
 そしたら、「子どもは、現夫の子として認める」との勝訴判決が出たんです。何が何だかさっぱりわからなくて。そんなに簡単に認められるとは思っていなかったし、驚きの気持ちもありました。認知裁判はこんな感じで終わりましたが、これで晴れて、わが子の戸籍を登録することができました。

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