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取り分が15%。不遇な茶生産者のために立ち上がったECサイト「Tealet」

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「お茶」は僕たち日本人にとって親しい存在だが、コーヒーなどさまざまな飲み物が台頭したり、ペットボトル入りのお茶などが一般的に飲まれることもあって、実際にお茶の葉を買ったり、急須で入れたりという機会はかなり少なくなってしまった。

そのため僕もあまりお茶についてはあまり知識がなかったのだが、実はこのお茶の葉というのは、消費者の手元に届くまでかなり多くの流通業者を介しているそうだ。そのため、売上のうち茶農園の人たちが受け取れる利益は全体のわずか15%にとどまるという。これは他の業界と比べるとかなり不遇な数字だ。

今回ご紹介する「Tealet」は、そうした問題に焦点を当て、世界中のよりすぐりのお茶を、中間業者を介さずに消費者直接届けることで、生産者が適切な利益が得られるしくみをつくった、お茶専用の販売サイトだ。同サイトではその他にもお茶の良し悪しの判断基準をより透明化したり、茶業者の地位向上に努めるなど、お茶業界全体を活性化させる試みを行っている。

2012年4月に米国におけるお茶の代表的な生産地であるハワイにおいて設立された同サイト。現在は米国ラスベガスを拠点とし、これまでに総額26万ドル(約3000万円)の投資を受けている。

お茶の売上で得た利益のうち、茶農園に入る利益はわずか15%に過ぎない

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Tealetの創業者は大学でフードサイエンスを専攻していたElyse Petersen(以下ピーターセン)氏。大学を卒業後、数々の食品関連の企業でフードサイエンティストとして働いていた人物だ。

同氏は伊藤園の米国支社にもフードサイエンティストとして勤務し、お茶が消費者に好まれるのかどうか、品質に問題はないかといったことを研究する仕事についていた。

ピーターセン氏に転機が訪れたのは、ハワイの農園の調査するために出張したときのこと。そこで同氏は、ハワイの茶農園が育てるお茶の質の良さに一目ぼれしたという。

すっかりお茶の虜になった彼女は、2010年には伊藤園を退社し、ハワイ大学に入ってMBAや日本学を学ぶとともに、お茶に関する共著レポートも執筆するようになった。

ハワイ大学卒業目前には京都の和束を訪れ、高級宇治茶「和束茶」の生産・販売・普及活動を行っているおぶぶ茶苑で、海外向けの販売サイトの構築などを手伝った。その後はITFA(国際茶園協会)の「グローバルお茶大使」として、インドやインドネシア、韓国、中国、台湾、スリランカの茶農家と深く関わるようになる。

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この業界に関わるうち、ピーターセン氏は生産者である茶農園に、利益があまり還元されていないと感じ、流通について詳しく調べてみて驚いた。お茶が消費者まで届いてあがった利益のうち、茶農園に入る利益は15%に留まり、あとの85%は中間業者に入っていたのだ。

その原因は、茶農園が消費者にアクセスする手段がなく、従来の中間業者を通してしか販売できなかったこと、そして本当に価値のある茶農園が評価されにくい構造にあった。また米国の人々から見ると、お茶を生産している茶農園の多くは国外にあり、こうした海外市場にはアクセスしづらかったという。

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「最近の米国には、お茶に関して少し高くてもより良いものを買いたいという消費者の志向の変化がある」と感じていたピーターセン氏は、良質でリースナブルな茶葉であれば売れると確信。2012年4月にスタートアップ・ウィークエンドホノルルというビジネスコンテストに出場し、茶農園と消費者を直接つなぐECサイトのビジネスプランを発表する。

するとシリコンバレーのベンチャーキャピタルから投資の申し出があった。そのベンチャーキャピタリストから「サイトを作ってみて、成功すると確信できたらさらに投資する」と言われたことから、以前からつながりのあった茶園のお茶をサイトに掲載。これが売れ始めたことでさらなる投資を受け、本格的に「Tealet」を稼動することになったのである。

お茶には国際的に認知された評価基準がない

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Tealetは「お茶の生産者に力を与えること」「生産者とお茶好きの架け橋となる」ことをミッションに、米国のみならず、世界に向けてお茶を販売している。取り扱っているお茶の種類や原産国もさまざまで、インド、ベトナム、日本、米国(ハワイ)、中国、韓国、インドネシア、スリランカ、ベトナムなど総計10カ国、25茶農園にのぼるそうだ。

同サイトで販売しているお茶はハイエンドなものが主で、定期購入の場合は2ヶ月コースの購入で49.95ドル(約5700円)/回、6ヶ月単位で42.95ドル(約5000円)/回、1年単位で35.95ドル(約4150円)/回という価格設定となっている。こちらはサイト側が選りすぐったものが2ヶ月に1回配送される。1回あたりの分量は60グラム、およそ120杯分とのこと。

同サイトでは単品での購入も可能だが、お茶の葉は、どれが自分の求めているものなのか、自分に合っているかという判断がなかなか難しい。それはコーヒー豆などとちがって、国際的に認知された基準がないためだ。

さまざまな産地のお茶の葉の品質を格付けするグレーディングシステムはあるが、このシステムでも味や香り、処理技術といった要素は評価に含まれておらず、味の評価基準にはなりづらい。そのため輸入業者がそれぞれ独自の味の基準を設けており、顧客はどの業者やお茶を選べば良いかという客観的な判断基準をもちづらかった。

そこでTealetでは、茶農家が生産している中でもっとも価値のあるお茶のサンプルを提出してもらい、潜在的な顧客や熱心なお茶好きがこれらを試飲し、評価に参加できるようにすることで、より客観的なお茶の評価基準を構築しつつある。これにより顧客は、さまざまな評価を元にお茶を選別することができるのだ。

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(出典:Vimeoより「Live Tea Cupping Evaluation with Kevin Rose」)

また茶農家たちの認知度や地位の向上を目的とした試みも数多く行っている。同サイトでは茶農園のプロフィールの閲覧や、生産工程を収めたビデオが視聴できるだけでなく、希望すればGoogle hangoutを利用して茶農園の人たちと直接話をすることまでできるという。

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2014年9月にナイアガラで開催された北米ティーコンファレンスでは、パートナーを組んでいるインドや日本、米国の茶農園の代理でお茶を出品。このときは栗原昭夫氏の「八女伝統本玉露」が日本産の部門で、Bob Jacobson氏の「Hawaii Spring White Tea」が新たに設立された「米国産」の部でそれぞれ金賞を受賞した。

お茶は何十年も米国で栽培されてきたが、このような国際的な舞台で米国産茶の品質の高さが評価されたのははじめてのことだったという。

ピーターセン氏が受賞を「小さな茶農家が、世界最高級のお茶をつくっていること示すもの」と話すように、これまで品質では評価されてこなかった米国をはじめ、世界中の小さな茶農家の地位や認知度の向上のきっかけとなっていきそうだ。

「自分たちがサポートしている生産者の人たちを誇りに思う」

Tealetは、生産者やお茶の葉について確固たる評価基準が確立していないこの業界にあって、中間業者の排除、生産者と顧客とのつながりの強化、お茶の格付け、生産者の地位向上に努めることで、業界全体の信頼性と透明度をあげようとしている。そこにはピーターセン氏の以下のような思いがある。

"私は、自分たちがサポートしている生産者の人たちを誇りに思っているんです。そして彼らは、自分たちが育てているお茶に誇りを持っている。生産者が消費者とより密接なつながりを持つようになれば、もっとお茶の質の向上に神経を傾けられるようになると思うんです"

ただ売上や地位向上といった利益を与えるだけでなく、生産者の誇りや生産する喜び、モチベーションを支えているからこそ、Tealetは生産者からの大きな支持を得ることができているのだろう。

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