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輸入業者がアベノミクスの円安誘導を批判するのはポジショントークか?

 安倍政権と黒田日銀の円安誘導を批判すると、お前は輸入業者だから、自分に不利だからだろうとか、ポジショントークだろうという批判がきます。

 ですが、それっておかしな話ですよね。
 
 安倍政権と黒田日銀は、円安誘導によってコストプッシュ・インフレになれば景気が良くなる、物が良く売れると主張しているわけです。

 そうであれば我々輸入業者や小売業者は万々歳で文句を言うはずがありません。物が良く売れるようになるわけですから。

 ですが、実態は賃金が上がらず、消費も増えず、景気は一向に良くなりません。これは現場で商売をしている人間からば肌で感じられるし、また毎月の売上高からもわかることでしょう。

 ポジショントークだと批判なさる人たちは、換言すれば「円安で輸入専門業者や小売業者の利益が減っている。ざまあみろ。」と主張なさっておられるようなものです。それは円安誘導したアベノミスは失敗だたと言っているのと同じです。

 我が国では、製造業は企業の約2割程度に過ぎません。後はサービス産業、一次産業です。しかも、製造業でもすべての企業が輸出を主体に商売しているわけではありません。それに輸出をしているにしても、輸出比率が1割とか2割程度であれば、円安による原材料のコストの上昇による損害の方が多いわけです。また輸出企業の下請けも、発注元から値上げが許されていないことが多々あります。別に輸入業者だけが被害を被っているわけではありません。

 また、株などで儲けているごく一部の人たちを除いて、消費者は円安によって不利益を被っています。消費者が円安を批判するとポジショントークなのでしょうか。

 また、お前は経済の専門家でも無いくせに、と仰るコメントもよく来ますが、「経済の専門家」ってなんですかね?相手を素人呼ばわりするならば、ご自身はひとかどの見識と専門教育を受けたプロフェッショナルということになりますが、匿名なのでわかりません。また具体的な指摘もしません。

 ぼくは20代は広告の世界におり、軍事ジャーナリストして経済、ビジネスの視点で20年以上取材してきました。同時に自分の会社で出版プロデュース、フランスのマンガの専門店の経営、輸出・輸入も行い、欧州、イスラエル、南ア、北米、アジアとの取引先と商売しており、リアル店舗、ネット通販、卸売まで行っております。

 小なりといえども、一線で国際的なビジネスの現場にいる人間です。

 因みに弊社はアベノミスの逆風を受けながらもここ数年2桁成長、今期は3桁成長に近い業績を上げております。ですが、輸入業者で前年比並みの売り上げのところは本当に大変です。

 そして面白いのが、経済の素人呼ばわりする人がウィキペディアあたりで仕入れた情報で、軍事に関してぼくの主張を批判したりします。「素人が専門家を批判するな」と言うのであれば、ご自分が軍事に関してぼくを批判できないと思うのですが、違うようです。こういうのを世間では二重基準といいます。

 率直に申し上げて、こういう人たちはいわゆる権威主義者です。「偉いセンセイの言うことは、まちげえねえだ」と盲信するタイプです。

 恐らく「経済の専門家」とは、マクロ経済学を勉強した学歴満艦飾の人たちのことを仰っているのでしょうが、メディアで出ている●●証券主席アナリストとかなんちゃらチーフストラテジストとかいう人達は所詮株屋です。実体経済がどうなることよりも、相場が大きく上下するようになることががいい人達です。それこそポジショントークを疑うべきでしょう。

 また学者の多くは社会に出たこともなく、自分の才覚でカネを稼いだこともありません。
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKCN0J108H20141117

GDPショックで株高シナリオ狂う、アベノミクスを問う選挙に
2014年 11月 17日 ロイター

(上記記事からの抜粋)
ロイターがまとめた民間調査機関の7―9月期実質GDP予想の下限は前期比プラス0.2%、年率プラス1.0%であり、マイナス予測は1社もなかった。予測中央値は前期比プラス0.5%、年率プラス2.1%。前期比マイナス0.4%、年率マイナス1.6%の結果は、まさに「ショック」だった。
「想定を大きく下回る弱い結果」(大和総研の熊谷亮丸氏)、「2四半期続けてのマイナス成 長は衝撃的」(農林中金総合研究所の南武志氏)。GDP公表後、民間エコノミストは一様に驚きの表情を隠せなかった。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS17H4X_X11C14A1EA2000/
以前のエントリーでご案内したNHKの討論番組でアベノミクスを絶賛していた熊谷氏の弁です。

 「経済の専門家」の予測なんてこんなものです。

 ところが同じような与太な予測を繰り返しても、恥じ入ることもなく、高給を食んでいることができるのが「経済の専門家」という商売です。

 対してぼくのような中小零細企業の経営者が判断や分析をしょっちゅう誤ると、倒産という形で責任を取らされます。「経済の専門家」は気楽な稼業に思えます。

 あえて誤解を恐れずに言えば、マクロ経済学は一種のカルトです。

 少なくとも科学ではありません。科学は再現可能な実験ができますが(それで「STAP細胞」は問題になりました)、経済では同じ条件下での実験は不可能です。それをあたかも科学のように信じるのは不毛です。例えば化学のアボガドロ数とか、PV=P'V'などの定理は、多くの実験結果から導かれたものです。つまり再現が可能です。

 しかしマクロ経済学では、数式のモデルにしても、統計にしても、いかようにも自分の都合のいいようなデータを元に作れます。また消費者の心理とか、数値化できない要素を切り捨てます。

 総務省の家計調査にしても、実態はかなり怪しいものです。

 この調査は極めて精緻で、今日はブリに切り身何グラムを買ったとか、事細かく家計簿を付ける必要がるので普通の人はあまり協力してくれません。ですから身内、あるいは近い人達に頼むことが少なくないそうです。その点ですでに公平な調査とは言えません。

 また調査は二人以上の世帯だけです。これだけ「お一人様」世帯が増えているのに、それは調査には反映されておりません。

 人間には心があり、消費やビジネスにもそれが作用してきます。これは数値化できません。ですから一般的なマクロ経済学では切り捨てられます。
 
 そしてマクロ経済の仮説は、検証もできません。つまり実験室の中の仮定の話ばかりやっているわけです。

 例えばの話、化学でも、「理学」と「工学」では全く違います。

 実験室で行う硫酸の合成と、工場で行うそれは材料も反応式も全く違います。実験室のものではコスト的に工業では使い物になりません。

 また工場を作るにしても、配管設計などが必要になります。これは理学だけ勉強した人には無理です。工学的な素養が必要です。

 マクロ経済学だけを学んだ人が、実体経済で何かしようというのは、理論物理学者が原子力発電所の設計をするようなものです。

 無論、経済の仕組みを説明したり、理解するためにマクロ経済学は必要です。ですが、だからといって、すべてをマクロ経済で解決するわけでも、万能でも無いわけです。

 過去「経済の専門家」である日銀がバブルを放置し、そして意図的に潰しました。また石油ショックやプラザ合意では、日本でも「「経済の専門家」たちは見当違いのコメントばかりしていました。

 長銀も日本の最高レベルの「経済の専門家」ばかりいたのに潰れてしまいました。

 また、米国の金融工学を駆使した金融商品は「経済の専門家」によって作られましたが、リーマンショックを起こしました。「グリーンスパン・マジック」と呼ばれた、グリーンスパンFRB議長(当時)も、実施した金融政策では、リーマンショックを回避するとはできませんでした。

 クルーグマン教授の日銀批判を引用して、日銀を批判していた人たちがかつて少なくありませんでしたが、クルーグマン教授はその後自分は誤っていたと述べています。ですが、「虎の威を借りた狐」さんたちも「虎」さんに倣って自己批判したのでしょうか。

http://www.yomiuri.co.jp/economy/20141101-OYT1T50096.html

ノーベル賞経済学者の「日本への謝罪」
2014年11月01日 読売新聞

 米国のノーベル賞経済学者ポール・クルーグマン博士は10月31日付の米紙ニューヨーク・タイムズに「日本への謝罪」と題する手記を寄稿した。

 日本政府と日本銀行が1990年代以降にとってきた経済政策を批判してきたが、欧米の政策に関しても「2008年以降は、日本がかすむほどの失敗だった」と指摘。「我々は、日本に謝らなければならない」と現在の心境を吐露した。
 そして現在の経済学の主流は米英中心で人気のある、あるいは声の大きい学説が力を持っています。その他は、例えばヴェルナー・ゾンバルトのような考え方は「異端」と切り捨てられます。

 これはマルクス主義と同じです。人間は卑怯でズルくて、欲深く、楽をしたい生き物であることを無視して、「社会的な実験」な実験を行ったソビエト連邦とその衛星国は崩壊しました。20世紀のほぼ丸々の時間を使った、壮大な社会実験でしたが。

 権威を盲信するのはリテラシーの欠除です。他人の意見を批判するならば、自分の頭で考えて、相手を説得できるような説を組み立て、エビデンスを出して行うべきです。
 単に「お前は経済学を分かっていない」と偉そうにコメントするのは、ご本人は気持ちがいいのかもしれませんが自分は馬鹿だと告白しているに等しく、滑稽であります。

軍事・航空宇宙の専門サイト始めました。
「東京防衛航空宇宙時評・Tokyo Defence & Aerospace Review」

http://www.tokyo-dar.com/

最新記事
岩田陸幕長、カール・グスタフM4導入の可能性を示唆
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日本航空電子工業、航空機搭載用カメラスタビライザをSEECATに展示
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アメリカのポラリスATV、日本での販売を開始へ
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MRJの飛行試験初号機がロールアウト
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防衛省、データ改ざんされた機銃の調達を見送りへ
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防衛省、米海兵隊のMV-22の整備に木更津駐屯地のハンガーを提供
http://www.tokyo-dar.com/news/939/

Japan in Depth に以下の記事を寄稿しました。
【防衛駐在官の質の向上を図れ】~外務省出向システムでは機密情報が防衛省や内閣府に届かない?~
2014/10/12
http://japan-indepth.jp/?s=%E6%B8%85%E8%B0%B7%E4%BF%A1%E4%B8%80

東洋経済オンラインに以下の記事を寄稿しました。
『なぜ自衛隊は「暴発する機銃」を使うのか』
2014年11月09日
http://toyokeizai.net/articles/-/52889

アパッチ攻撃ヘリの調達、なぜ頓挫?
問われる陸自の当事者能力
2014年11月02日
http://toyokeizai.net/articles/-/51971

オスプレイ選定の不透明、対抗馬は商用機?防衛省は「複数候補から選んでいる」と強弁
2014年10月26日
http://toyokeizai.net/articles/-/51614

御嶽山への自衛隊派遣、口を挟むとサヨク?必要なのは事実に基づく冷静な議論
2014年10月05日
http://toyokeizai.net/articles/-/49744

戦傷者は「想定外」という、自衛隊の平和ボケ
「国内では銃創や火傷は負わない」との前提
2014年09月17日
http://toyokeizai.net/articles/-/47994

「結論ありき」で高額な兵器を調達する怪
防衛省概算要求に隠された問題<前編>

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