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村上ファンドの村上氏も有罪確定、そして閉塞感だけが残った

物言う株主として知られた村上ファンドの元代表、村上世彰氏の有罪が、昨日最高裁への上告が棄却されたことから確定した。執行猶予が付いたが、約11億円と過去最高の追徴金、そして投資業から永久的に追放されてしまったことなど、やはり極めて重い罪が下された。筆者は、日本経済の再生には村上氏のような「アクティビスト」の活躍が必要不可欠と考えており、彼のような才能ある人物がいなくなってしまったことについて、非常に残念に思っている。

アクティビストとは、潜在的な企業価値を実現できていない企業の株式を買い付け、株主総会で独自の議案を提出したり、役員を送り込んだりして経営改革を迫り、本来の企業価値を引き上げ、その過程で株価の上昇から利益を得ることを目的とする投資家のことである。いわゆる「物言う株主」である。村上氏は、無用な土地や株などの資産を多く抱えているが、経営戦略がパッとせずに株価が低迷している会社を見つけ出すのが上手かった。そして着実にパフォーマンスを上げていたので、多額の投資資金を集めていた。

当時、ニッポン放送はフジテレビの筆頭株主であり、親会社であったが、フジテレビの時価総額を大きく下回る親子逆転状態が続いていた。そこに村上氏は以前から目をつけており、ニッポン放送株を買い進め筆頭株主になっていた。その後、2005年2月にニッポン放送買収を通してのフジテレビの経営権取得を狙った堀江貴文氏率いるライブドアが、東証の時間外取引(TOSTNET)を使い発行済株式数の29.5%を電光石火の如く取得し、ライブドアが筆頭株主になった。フジテレビも買収を阻止しようとニッポン放送株にTOBをかけており、ライブドアとの壮絶なニッポン放送の買収合戦が繰り広げられた。このように株価が釣り上がったニッポン放送株をまんまと高値で売り抜けて30億円もの利益を上げたのが、村上ファンドの村上氏である。なんとも抜け目のない見事なトレードだった。

しかし村上氏はインサイダー取引の疑いで逮捕されてしまった。堀江氏をはじめ、ライブドア幹部とミーティングした際に、ライブドアによるニッポン放送買収の決定を事前に知り、そのインサイダー情報を使って株式を先回り買いしたとされた。そこで裁判では、ライブドア幹部との会話では企業買収のような重要な決定事項を本当に知らされたのかどうか、またそれは実現可能性が高いものだったかどうかが争われた。確かにこれはインサイダー取引の可能性もあるが、会社経営者が将来のM&Aの計画などを漠然と話すようなことはよくあり、極端に取り締まればファンド・マネジャーは経営者と口を聞くこともできなくなる。株式会社とは株主のものであり経営者は株主の利益のために働く、という株式会社本来の仕組みが働かなくなる。やはりインサイダー取引の取り締まりは、明確な証拠に基づき極めて慎重に行わなければ市場をひどく萎縮させてしまうことになるだろう。

その後の裁判の結果は、筆者には非常に危惧するものであった。東京地裁では、この種の経済犯罪としては異例の実刑判決が下されるのだが、その時の判決文は世界を驚かせた。「被告人は『ファンドなのだから、安ければ買うし、高ければ売るのは当たり前』と言うが、このような徹底した利益至上主義には慄然とせざるを得ない」と裁判官はどうどうと述べたのだが、これには世界中のファンド関係者が慄然とした。なぜならファンド・マネジャーとは顧客の利益のために合法的に1円でも多く稼ぐことが最大のモラルであるし、安く買って高く売るのは資本主義の最も基本的なルールである。日本は資本主義が通用しない国だということを強く世界に印象づけた。

さすがに東京高裁では実刑は取り消され、執行猶予が付いた。そして昨日の最高裁の上告棄却の理由であるが、村上氏が主張していたニッポン放送株買収計画の実現可能性が低かったという主張に対して「TOB(株式公開買い付け)などを会社の業務として行う旨の決定があれば足り、買い付けが実現する可能性が具体的に認められる必要はない」とされた。筆者には、これはかなり危険な判例だと思われる。企業の経営者が株主や利害関係者に、それが実現できるかどうかは別にして、自らの思いを語るようなことはよくあるが、それらも全てインサイダー情報にされてしまっては、投資家は会社の経営陣とほとんどコミュニケーションが取れなくなる。ましてやアクティビストのように経営陣と積極的に関わるような投資形態は極めて法的リスクの高いものになってしまう。これでは資本主義社会にとって極めて重要な投資家と経営者との健全な関係を破壊してしまう。かつて堀江氏がいっていたように、やはり日本の法律とは解釈次第で誰でも罪人にできてしまい、日本の権力層に都合の悪い人間が出てくると簡単に刑務所に送られてしまう、ということなのかもしれない。

そして、現在の日本の株式市場は、ライブドアや村上ファンドが活躍していた時のような活気は全くなくなり、株価が低迷し、日々出来高が細っていっている。東京で活躍していたファンドは多くが閉鎖され、生き残った日本人のファンド・マネジャーの多くが香港やシンガポールに移住し、細々と日本市場に投資している。当時はライブドアなど若くして大きな富を得る者に対する反感というものが社会の中にあったのかもしれない。検察は、そういったニュー・リッチを国家権力で抹殺した。少なくない日本人が溜飲が下がる思いをしたはずだ。その後、過剰コンプライアンスが日本中の企業に広がり、日本のビジネス環境は萎縮していった。そして気がついたら、日本に残ったのはどうしようもない閉塞感だけだった。

参考資料
昔のライブドアや昔の村上ファンドのようなプレイヤーが活躍できる株式市場こそが日本に必要、アゴラ
ライブドア・ショックは今更ながら経済小説の100倍面白い現実に起こったドラマだ、金融日記

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