記事

2年前の今日、国民の前で約束したこと

 あれは2012年11月14日、ちょうど今から2年前のことでした。民主党代表の野田佳彦首相(当時)が安倍晋三自民党総裁(同)と国会で討論し、“ある約束”と引き換えに衆議院を解散することを明言した、あの日です。年内解散に踏み切ろうとしている安倍現首相は、あの約束のことをどう思っているのでしょうか。

 当時の状況を忘れた方も多いでしょうから、簡単に振り返ります。野田首相は消費税増税法案を2012年春の通常国会に提出、6月に民主、自民、公明3党の賛成によって衆議院で可決させました。しかし、これがきっかけで小沢一郎一派が離党し、新党「国民の生活が第一」を結成。他の野党と一緒になって内閣不信任決議案を提出し、国会が荒れ模様となりました。

 そんな中、首相は8月8日に自民党の谷垣禎一総裁、公明党の山口那津男と会談。この中で「関連法案が成立した後、近いうちに国民の信を問う」と発言し、増税法案の成立にこぎつけました。しかし、その後も解散のそぶりを見せないことから、自民党は首相を「嘘つき」呼ばわりするなど、激しく口撃(こうげき)しました。

 9月の総裁選で安倍新総裁が選出され、初めての直接対決となった11月の党首討論。首相は小学生の時に「正直者」だと父親に褒められたエピソードを持ち出し、涙ながらに「嘘をつくつもりはない」と強調。そして「定数削減は来年の通常国会で必ずやり遂げる。それまでの間は議員歳費を削減する。(中略)このご決断をいただくならば、私は今週末の16日に解散をしてもいいと思っております」と安倍総裁に迫りました。

 安倍総裁の答えはこうでした。「来年の通常国会において、私たちの選挙公約において、定数の削減と選挙制度の改正を行っていく、こう約束をしています。今この場でそのことをしっかりとやっていく。約束しますよ」(原文ママ)

 安倍総裁の返答を受け、首相は言葉通り16日に衆議院を解散。12月16日に総選挙が行われました。民主党は獲得議席数が前回選挙の5分の1にとどまる大惨敗を喫し、自公両党が政権の座を取り戻したのは周知の通りです。

 野田首相が党首討論で求めたのは、2013年の通常国会で定数削減を実現する、それまでは議員歳費を削減するという2点です。安倍総裁は後者の議員歳費については明言しませんでしたが、定数削減については実行するとはっきり答えています。

 ちなみに安倍氏が触れた、自民党の選挙公約にはこうあります。見出しは「国会議員の数が、まだ多い。国のスリム化は、まず国会のスリム化から」。中身には次期衆院選から衆議院の定数を1割削減、10年以内に衆参両院の議員定数を3割以上削減すると明記しています。

自民党 2009年衆院選マニフェスト

https://www.jimin.jp/policy/manifest/pdf/2009_yakusoku_a.pdf

 つまり、安倍総裁は少なくとも衆議院の定数を1割削減する、当時は480議席ですから48議席は減らす、そう約束したことにほかなりません。ところが現実には解散直前に最低限の格差を是正するだけの「0増5減」、つまり定数を5減らしただけ。約束の期限だった2013年の通常国会が終わって一年半が過ぎた今も、定数削減に本気で取り組む姿勢は見えません。

 そして今、約束を反故にしたまま、再び衆院選に踏み切ろうとしています。嘘つきはいったいどちらの方か、野田前首相が恨む気持ちもわかります。

 野田首相が提案した「定数削減を実現するまでは議員歳費を削減する」もあっさり無視され、与党は今年5月に議員歳費を満額支給に戻しました。自民党の地盤である地方に過剰に議席を配分している、一票の格差も放置したまま。政治とカネの醜聞を踏まえ、維新の党が提案した文書通信交通滞在費の使途公開も廃案に追い込む見通しです。

 安倍首相は消費増税の時期を1年半先送りする方針のようですが、国民に「放漫財政」のツケを押し付けることには変わりありません。2年前の約束をどうするのか。具体的にいつ、どういう形で「政治が身を切る姿勢」を示すのか。そのことを語らなければ、国民の納得は得られないでしょう。

あわせて読みたい

「解散総選挙」の記事一覧へ

トピックス

議論新型コロナウイルスに向き合う

ランキング

  1. 1

    富岳が分析 ウレタンマスクはNG?

    諌山裕

  2. 2

    コロナで医療全体ひっ迫は間違い

    名月論

  3. 3

    凋落の新聞社 報道の行く末とは

    ヒロ

  4. 4

    渡部建の目論みに冷ややかな声

    女性自身

  5. 5

    二階派に160万円 マルチ企業から

    しんぶん赤旗

  6. 6

    ニトリ偽サイト「ミトリ」に注意

    ABEMA TIMES

  7. 7

    音喜多氏が所属議員の不祥事謝罪

    音喜多 駿(参議院議員 / 東京都選挙区)

  8. 8

    安倍氏聴取に感じる特捜部の覚悟

    早川忠孝

  9. 9

    子ども脅かす爆撃機に日本の技術

    田中龍作

  10. 10

    医療従事者への誹謗中傷 SNSでも

    川名 ゆうじ

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。