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「ウクライナは最後ではない」 プーチン演説に透けるロシアの危機感 プーチン大統領が描く21世紀の世界(後篇) - 小泉悠

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 だが、逆に言えば、ロシアが日本に求めているのはバランサーとしての役割までである、とも言える。むしろロシアは対中接近の代償として、日中関係に関してかなりの妥協を呑まされている可能性の方が高い。そこには、尖閣諸島問題や歴史認識問題など、ロシアが可能な限り距離を置こうとしてきた日中間のセンシティブなイシューが含まれる可能性も考えられる(ロシアが今年5月の中露合同軍事演習において、初めて東シナ海で演習を実施したことや、第二次世界大戦終結70周年を合同で記念することに合意したことなどはその兆候とも捉えられる)。

 このように考えるならば、来年のプーチン大統領訪日が実現するにせよ、北方領土問題に大きな進展があるのではないかとの期待(このような観測がメディアでは数多く見られるが)はやや早計であるように思われる。

新たなシステムを描くことは極めて難しい

 最後に、今回の演説全体を通しての筆者の感想を述べておきたい。この演説でプーチン大統領は冷戦後の西側による秩序を激烈に批判してきた。これにはたしかに的を射ている部分もあり、かのゴルバチョフ元大統領さえ演説を評価している。

 だが、プーチン大統領の訴える「相互の義務と合意に基づく透明なシステム、危機的な状況のコントロールと解決のためのメカニズム」が如何なるものであるのかについては、具体的なことは全く言及されなかった。おそらく、ロシアにとってもそのようなシステムを描くことは極めて難しいのではないだろうか。

 たしかに西側は冷戦後世界のマネージメントに関して多くの過ちを犯したかもしれないが、それに代わるものはそう簡単に作れるものではないし、誤解を恐れずに言えば、それしかなかったから「西側の秩序」が今日まで続いてきたと見ることもできよう。

 とはいえ、相対的・絶対的な西側の優位は今後も低下し続けるだろうし、今後の世界秩序が新たな形へと変貌していくであろうこともたしかである。それが如何なる形を取るのか、言い換えれば、プーチン大統領の言う「地政学的利益の交錯する地域」や「境界地域」をどのようにマネージするのかが、21世紀の世界の焦点になってくるものと思われる。

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