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「ウクライナは最後ではない」 プーチン演説に透けるロシアの危機感 プーチン大統領が描く21世紀の世界(後篇) - 小泉悠

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繰り返しますが、皆がやっていることを我々もやっているだけなのです。そして我が国の国土の大部分は地理的にアジアに位置しているのです。この競争上の優位性を利用しないということがありましょうか。そうしないとすれば、あまりに浅慮です。

 プーチン大統領の発言には、西側の経済制裁に対する苦しさが透けているように見える。制裁はたしかに苦しい。我々を追い詰めるものだ。だが、その中でも我々は力強く独自の発展の道を歩むのだとプーチン大統領は演説の別の箇所で述べている。

ロシアにとっての日本の価値

 だが、いかに強がってみても、西側との関係なくしてロシア経済が成り立たないことは誰の目にも明らかである。それ故にプーチン大統領は、ロシアがアウタルキーを目指しているわけではないし、関係正常化への門戸は常に開いているとも強調するのである。結局のところ、西側がロシアに依存する以上にロシアは西側に依存してきたのであり、その代替手段を見つけることは短期間には難しい。

 中国を含むアジアへの言及は、こうした事情を踏まえた一種のエクスキューズのように響く。制裁があったからアジアへシフトしているわけではない。あくまで前からやっていることであり、皆も同じことはしているではないか、というわけだ。

 だが、ウクライナ危機以降、ロシアが対中接近を強めていることはたしかで、それが西側との関係を補うものであることは明らかであろう。しかし、現在のロシアには一国で中国の対等なパートナーの立場を維持することは難しい。ほかに頼るものがない状態で中国との関係を強化すれば、ロシアは中国に対して従属的な立場に立たざるを得ない。天然資源と軍事技術の供給元として利用されるのがいいところであろう。

 であるからこそ、ロシアとしてはどこかでウクライナ危機に落としどころを見つけ、西側との関係改善を図る必要がある。そのようなメッセージが見え隠れするのである。

 その意味では、ロシアにとっての日本の価値は大きい。日本は西側の一員でありながらウクライナを巡る欧州危機の当事国ではなく、中国との戦略的ライバル関係にある。ウクライナ危機の最中でもロシアが日本との関係を閉ざすことなく、10月に海上自衛隊とロシア海軍との合同演習を実施したことや(しかもロシア側はこれをただの捜索救難演習ではなく、軍事演習として実施してはどうかと日本側に打診したと伝えられる)、依然としてプーチン大統領が訪日に意欲を見せていることなどは、日本を中国に対するバランサーとしたいというロシアの思惑の表れであろう。

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