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「ウクライナは最後ではない」 プーチン演説に透けるロシアの危機感 プーチン大統領が描く21世紀の世界(後篇) - 小泉悠

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ロシアが描く「多極世界」とは

 これに対してロシアが対外政策において長らく重視してきたのが、「多極世界」の形成である。冷戦後、唯一の超大国となったアメリカの政治・経済・軍事的優位性を認めないわけではないが、世界秩序はアメリカとその同盟国のみが一方的に決めるのではなく、ロシアを含む複数の「極」(いわゆる「列強」)との協調の下に形成されるべきである、というのが冷戦後のロシアの主張であったと言える。

 特に2009年に公表された「国家安全保障戦略」では、金融危機による米欧の国力低下と、新興国の台頭により、「一極支配」は絶対的にも相対的にも揺らぎつつあるとのトーンが初めて見られた。つまり、従来は一極支配から多極世界への移行を訴えていたのに対し、最近では実際に多極世界が出現しつつあるという風にトーンが変化していたのである。

 では、多極化が進んだ結果、ロシアにとって望ましい世界が生まれつつあるのかというと、そうではない。プーチン大統領は、次のように述べている。

同時に、皆さんの注意を喚起したいのですが、いわゆる多極世界が出現したからといって、それだけで世界の安定が改善されるわけではありません。実際には、むしろその反対です。グローバルな平等の達成は実に困難な問題であり、未知な部分が多いでしょう。

もし、厳しくて不便なルールがあってもそれに従わずに生きるか、あるいはルールが全くない中で生きるとしたら何が待っているでしょうか? グローバルな緊張が高まる現在、我々はこのようなシナリオを排除することはできません。現在の情勢を考慮した多くの予測が行われていますが、残念ながら、それらは楽観的なものではありません。もし、我々が相互の義務と合意に基づく透明なシステム、危機的な状況のコントロールと解決のためのメカニズムを創設しなければ、グローバルな無秩序の傾向は確実に増大することでしょう。

 このように、世界がただ多極化するだけでは、混沌に陥るだけである、というのがプーチン大統領の指摘である。上でも述べたが、多極化した世界で、複数の極から成る新たな秩序が形成されなければ、未来は楽観的なものではない。にもかかわらず、西側は依然として自らに有利な、一方的秩序を手放そうとしない、というのがロシア側の不満なのであると考えられよう。

「深刻な紛争はウクライナが最後ではない」

 その上で、プーチン大統領は不気味な未来像を描く。

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