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自治体の海外視察 〜その意味と価値

先週、秘書課の担当者あてに東大の学生から1通のメールが来た。

それは卒業論文のためのアンケートだった。

論文は、縮小傾向にある「海外視察」の有効性をあらためて明らかにし、より良い海外視察のあり方を探ることがテーマで、全都道府県・市町村の議員・首長を対象に調査していた。

その学生は、ヘルシンキ大学に留学中にフィンランドやオランダの様々な学校や教育機関を訪問して、現地の人の思いや政策実行者側(この場合、校長や教員)の意見を聞くことは非常に重要であると感じたのだが、その際「日本の人はよく視察に来るけど、『私たちには難しい』と言って何も変えようとしていないのではないか」との指摘をされて、「では、何のために視察にいくのか」という疑問を持ち始めたのが、テーマ設定の動機だったという。

質問は8問で、こんな感じだった。
【質問】
平成17年度~26年度において、知事による公費での海外行政視察についてお伺いしたいです。ただし、今回の調査では、姉妹都市交流目的の視察や招待による訪問などは視察に含めないとします。
問1. 平成17~26年度において、上記条件の海外行政視察は実施されているでしょうか。

問2. 現在の海外行政視察(実施の有無、予算など)について定められている法律及び条例を教えていただけますでしょうか。

(以下、1.の回答が「はい」の場合は、3.~8.をお答え下さい。1.が「いいえ」の場合は、7.8.のみお答え下さい。)

問3.~6. 略

問7. 海外・国内行政視察以外の勉強方法を実施している場合は、その方法の種類も教えて頂きたいです。

問8. 通常の海外及び国内行政視察の計画立案のプロセスについて、教えていただけませんでしょうか。
これに対する事務方の答えは、
答1.実施していません。
答2.海外行政視察についての定めはありません。
答7.インターネット・書籍での情報収集等
答8.知事については、海外・国内ともに視察を主たる用務とした出張はありません。
まことに簡潔で素気ない感じがするが、この質問に対する事務方の回答としては正しい。

でも、この回答では「海外視察」の有効性が分からない。学生の疑問にもっと応えたてやりたいではないか。僕は、執務の合間を縫って、以下の文章をしたため、回答の頭に付け加えることにした。
佐賀県知事の古川康です。興味深いテーマを選んでいただきありがとうございます。

アンケートに対する回答は以下のとおりで、佐賀県知事としては視察を目的とする出張はしていませんが、それはそれを必要と考えていないから、ではありません。

私は海外における県産品や観光PR、会議への参加など年間に何度も海外出張します。そして、その際には、その国にある日本大使館・総領事館をはじめとするさまざまな方面に行き、現場を観、お話しを伺い、今後の県政展開に反映させています。

これは「視察目的の出張」には当たらないので今回はなし、と答えているものです。

このように、首長はこうした形の出張がありますが、議員の方の場合は首長に比べてそういう機会が少ないと思います。

しかしながら、首長がこうした海外における見聞を背景にした政策を実行しようとしても、議会の理解がなければこれを進めることはできません。

議員の方たちが海外で見聞を広げられることはこれからの自治体経営にとって必要なことだと考えています。

たとえばの例を挙げましょう。

佐賀県は全国でいちばん教育の現場でICT活用が進んでいる地域ですが、これが実現できているのも、海外の学校の様子をみてきた私がこれはこれから日本においても必要になるから、と担当職員に視察に行かせました。

そしてその職員とともに議員の方々にも行っていただきました。(政務調査費だったと思います。)その結果、韓国やシンガポールにおけるICTを活用した教育の状況を目の当たりにされ、佐賀県でもぜひということで、議会での質問や応援をされ、それが現在の状況につながっています。

視察に来るがこれは無理と言って帰られるというフィンランドの例を挙げられました。確かにそうかもしれません。でもたとえばフィンランドのメソッドによる少人数学級の実現を望ましい、という印象を持って帰られれば、我が国における少人数教育の必要性というのものについては、理解を深めていただけた、ということもあるのではないでしょうか?新聞報道によれば財政当局は35人学級をやめて40人にせよ、と主張しているようです。そういう動きに対して地方議会として声を挙げる際の参考になっている、というようなこともあるように思います。

私たちの地域は、世界の中で必要とされる存在にならないと発展はないと思っています。なので、議員の方にも海外の状況を理解していただけないと困ります。その際、ネットや文書を読んで理解できるためにはそれを裏付けるような生身の経験がないと理解できないと私は思っています。

ということで以下の回答は何かしら冷たい内容のように見えるかもしれませんが、この際、私の意見を述べました。

もっと聞きたいというのであれば歓迎します。ぜひ佐賀便でお越しください。高い、というのであればLCCも就航していますし。
学生への回答を送った翌日、秘書課の担当者から僕に来たメールのタイトルは、「東京大学の学生さんが本当に来佐されます」。

いいね!きっと来るだろうと思っていた。

ふるかわ拝

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