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クラウドサービスと著作権について

著作権法は著作物の保護と利用の調和を図り、文化の発展に寄与することを目的とした法律ですが、ICTの発展により、著作権法とインターネットとの関係についてたびたび議論が提起されます。
最近の議論の一つが、クラウドサービスに関するもので、文化庁の文化審議会著作権分科会著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会において検討されました。

個人的または家庭内において使用することを目的として著作物を複製する場合は、原則として著作権者の許諾を得る必要がありません(著作権法30条1項)。この私的複製に関する規定があるからこそ、私たちは、例えば音楽CDからコンテンツをリッピングしてPCなどの媒体に複製するなどして、個人的にコンテンツを楽しむことができるのです。

では、クラウドサービスのストレージ(コンテンツ・ロッカー)にコンテンツを複製する場合は、どうでしょうか。利用者からみると、PCのハードディスクに複製するのとほぼ同じ感覚で、コンテンツをストレージに複製できますが、法的にはPCの場合と同様に利用者の私的複製と評価できるのでしょうか。

ストレージ等のシステムを提供しているのは事業者であるから、コンテンツの複製について、事業者が著作権者等による許諾を受けなければならないという意見もありました。しかし、利用者により複製されるさまざまなコンテンツすべてについて、システム提供している事業者が著作権者等から許諾を得ることが必要だとすると、それは現実的には不可能であるからクラウドサービスの発展を阻害しかねません。

文化審議会の小委員会での議論の結果、このようなプライベート・ユーザーアップロード型と呼ばれるクラウドサービスにおいては、発展的なサービスも含め、コンテンツの利用行為主体は利用者であり、そのサービスで行われる著作物の複製は私的複製にあたる、サービスを提供する事業者も著作権者等の許諾を得る必要はないとの意見で一致がみられました。(1)

コンテンツの利用行為主体の認定は最終的には裁判所の判断に委ねる他ないものの、文化審議会の小委員会にてこのようにクラウドサービスの発展を阻害しない方向で結論が出たことは、一定の意義があると思われます。

しかし、今回のように個別のサービスについて細かく法規制のあり方を検討していくというスタイルは、検討や法改正に多大な時間を要すること、個別の立法はどうしても狭いものになり反対解釈を生じるおそれがあることから、急速に発展するクラウドサービスを含めたICT産業の発展を後押しするにはふさわしくないといえます。利用者の皆様のニーズを満たした多様なサービスをお使いいただくために、ICT産業の発展をサポートする柔軟な権利制限の一般規定を導入するなど、保護と利用の調和がとれた著作権制度となることが望まれます。

脚注
(1)なお、10月24日に開催された規制改革会議の投資促進等ワーキング・グループでも、クラウドと著作権が議題としてとりあげられ、文化庁からは、上記の文化審議会の小委員会での検討概要として、プライベート・ユーザーアップロード型のクラウドサービスについて「基本的に利用行為主体は利用者であり、その場合には当該サービスで行われる著作物の複製は私的使用目的の範囲内であり、権利者の許諾は不要であるとの意見で一致した」と報告されました。
http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kaigi/meeting/2013/wg3/toushi/141024/agenda.html

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