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「身を切る財政再建」を訴える政党はないか

 今朝の新聞は日中首脳会談の話題で持ち切りです。実現すれば約3年ぶり、第二次安倍内閣の発足後は初めてなので、期待が高まるのも無理はありません。しかし、会談しただけでは無意味。ぜひ実質的な日中関係の改善につながる、具体的で前向きな会談にしてほしいと思います。

 さて、今朝の日本経済新聞にこんな記事が載っていました。好きで、よく読むコラム「大機小機」。かつて「おおいそ、こいそ」と読み間違えて笑われたことがありますが、正しくは「だいき、しょうき」と読みます。財政再建と政治について、興味深い議論を紹介しています。

日本経済新聞 11月8日付朝刊

【大機小機】財政と政治と国家緊急権

 消費税率10%の判断が近づく中、日銀の追加緩和が市場を驚かせた。黒田東彦総裁のデフレ脱却への強い決意を改めて印象付けた。追加緩和には賛否両論あるが、総裁の背骨にあるのは財政再建への不動の覚悟であろう。それは立派である。

 しかし、財務省の長期推計によれば、現在230%の公的債務比率を2060年に100%に戻すためには、消費税率で約30%分に相当する財政収支の改善が必要である。消費税率を10%どころか20%にしても間に合わない。財政再建への道のりはあまりに険しい。

 先日、ある大学で法学者と経済学者が集い財政破綻が起きたらどうなるのか、というシナリオ分析をする機会があった。長期金利が5%を超えたり、インフレ率が制御できなくなったりしたら、という想定で、話題が集中したのは技術的な政策論ではなく、政治に対する国民の反応だった。

 与野党問わず既存の大政党はこれまでの財政運営に責任がある。財政が危機的な状況になれば全ての主要な政党は国民からの信任を失うだろう。イタリアで債務危機が起きたときに政党政治が信任を失い、モンティ首相の新政権の閣僚全員が学者や実務家になったように、日本でもいざとなったら政党政治家は総退場し、学者や実務家が政権を担うべきではないか、という議論が出た。

 もちろん、憲法の制約で日本で学者内閣は実現できない。既存政党が国民から見放されれば、極端で辻つまの合わない主張をするポピュリストが台頭して政治の実権を握り、ナチスドイツのような状況に陥りかねない。一体どうなってしまうのだろう、というのが当日の議論だった。

 ひとつの極論として社会学者の橋爪大三郎氏は著書の「国家緊急権」の中で、本当に国家存亡の危機には憲法を停止し、国家緊急権を発動すべきだとの見解を示した。賢人独裁で財政危機を打開するという考え方だが、実現は困難だろう。

 現実的な方法は危機時に受け皿となる政治勢力を用意しておくことだ。痛みを伴う財政再建を旗印に与野党の心ある政治家を糾合できないか。説明をきちんとすれば、増税や社会保障費削減の痛みも多くの国民は理解する。維新の党など増税反対者が多く、「身を切る財政再建」を第一に訴える党がないのは日本にとって不幸だ。

(風都)

 筆者の結論は「危機時に受け皿となる政治勢力を用意しておくことだ。痛みを伴う財政再建を旗印に与野党の心ある政治家を糾合できないか。説明をきちんとすれば、増税や社会保障費削減の痛みも多くの国民は理解する」とのこと。私も心から、そう思います。

 既存の大政党(つまりは自民、公明、民主党のこと)には過去の財政運営に責任がありますし、これまでの主張からして、思い切った財政再建に取り組むことはできないでしょう。3党は増税を決めた際に「新たな財源で社会保障を充実させる」などときれいごとを言ったのがその証拠です。

 国家財政の現状をしっかりと説明し、財政再建に向けて何が必要なのか、どうすればいいのか、正確にわかりやすく説明する政治家や政党がいれば、国民の納得を得ることはできます。そんな政治集団を作らなければならない、心からその主張には同意します。

 ただ、財政再建の手段として「増税」に重きを置いていることは気になります。確かに増税によって財政再建を実現しようとすれば、消費税率を30%や、それ以上に引き上げなければなりません。しかし、それでは政府が巨大化する一方。財務省をはじめとする役人はそれでいいですが、国民にとって喜ばしい国家像だとは思えません。

 それよりも、財政再建の主流は歳出削減であるべきです。ある有名な経済学者の研究では、財政再建の黄金律は歳出削減7に対し、増税3との結果が出たそうです。さらに財政再建に成功した国家の多くが歳出削減を優先し、失敗した国家の多くが増税を優先したとも主張しています。

 日本も本当に財政再建を実現するのであれば、歳出削減を優先しつつ、さらに経済全体のパイを拡大するための成長戦略も推進しなければなりません。

 筆者は最後に「維新の党など増税反対者が多く、身を切る財政再建を第一に訴える党がないのは日本にとって不幸だ」としていますが、これには断固、反論しておきます。

 維新の党が消費税率の再引き上げに反対しているのは、景気が落ち込んだ今、増税に踏み切ればさらなる景気悪化を招き、結果的に財政再建が遠ざかると考えているからです。将来的な増税にはまったく反対していません。

 しかも、維新の党は前身である日本維新の会の結党当時から、社会保障の効率化を通じた財政再建の必要性を訴えています。「第一」かどうかはともかくとして、政党の中で最も「身を切る財政再建」を訴えてきたのは間違いありません。そこは誤解なきようお願いしたいと思います。

 円安による企業業績の回復に伴う税収の上振れを受け、財政再建の議論が遠ざかっているように感じます。政府・与党の議論を見ていても、消費税率の引き上げは財政再建のためというよりも、予算を増やすための手段のように論じられているように感じられてなりません。

 真に国家のことを考える政党がなければならない、最近さらに強く感じています。

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