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不公正(Unfair)で不安(Fear)だらけの日本 - 芦屋 暁

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(1)原点語りの原点知らず指導者が支配する現代日本

 「道に迷ったときは原点回帰が大切」といわれるが、それを口先では強調するが、その本質を見失って言行不一致な為政者が多いのが現在の日本である。

 本稿でも常に強調し続けているが、好ましい政治の原点は「国家と国民の安泰と安心の確保」、良い経済の原点は「経世済民、つまり最大多数者の最大幸福の実現」、望まれる事業経営の原点は「信用第一、堅実経営、顧客志向に徹し、事業経営に関係する取引顧客や出入り業者、従業員や株主などの信託と期待に応え、国策や社会の利便性に寄与すること」にある。

 従って、大企業など一部の特定分野や階層、大株主だけの利益や繁栄を図り、そのために大多数の庶民から富を奪い、その生活を犠牲にすることは全く本末転倒といえよう。

 また「幸福や豊かさ」の価値尺度も、かけがえのない地球の自然環境を破壊して資源を収奪し尽くしたり、他者の生存を犠牲にして、特定の者だけが財物的や豊かさを飽くなき欲望で追求することではなく、公明正大な手段で全国家・社会や人類の安全や安定・安心を図る「物心一如の充足」と自然界との調和的共生・共存・共栄にあるといった意識に根本的に改めるべきであり、その目的を達成するための手段が政治の安定化や経済発展、産業活動の効率性の追求や繁栄、科学技術の進歩なのであり、この目的と手段を履き違えてはならない。

 近世になり世界の多くの国々から支持され、現代世界の主流をなす自由・資本主義や、市場・金融経済の理念も、本来は、こういった公共の利益に対する篤志的な意識を根底として芽生え、発展したものであり、資金に余裕がある者は「カネ」を、土地や資源を保有する者はそれらの「モノ」を、その他の多数の「ヒト」は「労働力や知恵や技能や情報」などを供出し合い、これらの諸要素を結集して効果的に活用し、協力・互助し合って、より良い国家や社会を構築し、人類の幸福に資することを願った善意の行動であったのであり、決して一部の優越的立場に恵まれた資本家だけが、利己的な私利私欲で更なる富の独占と繁栄を目指した不当な行為ではなかったのである。

 故に、例えば中世の欧州キリスト教社会では、富貴な者が困窮者にお金を融通する場合、それはあくまでも算盤勘定ではなく崇高な博愛の精神によるものであり、従って人の弱みにつけ込み高利を取って貸し付けるなどといった非情で強欲な行為は人間的に好ましいこととは言えず、守銭奴、高利貸しと蔑まされるので慎み、優越的立場にある者には、それなりのノブレス・オブリージュ(地位に相応しい理性や品格)が、とりわけ企業にはフイランソロピー(社会に貢献する博愛の精神や慈善活動)が求められてきたのである。

(2)アメリカ流収益至上の自由・資本主義経済が世界を狂わせた

 西欧キリスト教国だけでなくわが国でも、江戸時代の昔から戦前までは、こういった精神や社会風潮が西欧以上に強く尊重され、米沢藩中興の祖とされる上杉鷹山公のように、領民への愛を第一とした殖産振興策を考えた領主が名藩主、「右手に論語、左手に算盤」といった理念で、倫理的経営を実践した渋沢栄一翁などが財界の雄と崇められ、三菱・三井・住友といった財閥も、こういった正しい理念で事業展開をし、それだけの社会還元、従業員教育や福祉を重視し実践したので、社会や民衆の支持を得て事業の発展と永続を実現し得たのである。

 道徳的に正しい行為は、経済的にも相応の正しい報いを受け、非道徳な行為での繁栄は、奢る平家は久しからずといわれるように、決して永続発展しない。

 それが戦後、戦勝国のアメリカが独占的に世界覇権を制して優越的立場となると、自国に都合の良い自由貿易制度やグローバルスタンダードの押し付けなど、悪知恵のアメリカ流ネオ・エコノミズムとも言うべき行過ぎた考え方や手法の自由・資本主義、市場万能と大株主主体の金融相場経済、企業収益至上の拝金主義や強者本位の自由競争主義の思想に変容し、それが世界に蔓延して支配するようになり、案の定、「財貨多きは徳傷(やぶ)る」とか「お金が溜まると人間の心が乱れる」といわれるように、目的と手段の本末転倒で、近年の日本のみならず世界的な自然環境の破壊、地球全体としての埋蔵資源や食料資源の需要と供給関係の不均衡化貧富格差の増大となり、国際的・国内的な政治・経済摩擦と混乱や不安定化、軍事的緊張や紛争、貿易戦争の激化、道徳倫理観や経済・社会秩序の乱れ、精神文明の荒廃などを招来し、世界的政治・軍事・経済的動乱と混迷の根本的原因となっている。

 人間の心が乱れると、世の中の全てが狂ってしまうので、先ずこういった人間の理念や意識を抜本的に正すことが、現代世界の安定化への共通・急務の課題として肝要といえようか。

(3)アメリカの褒め殺しの罠に嵌められ、利用され、見捨てられるか日本

 第2次世界大戦で敗戦国となった日本は、戦勝国アメリカの占領政策に従い、生き残りの道を選択せざるを得なかったという事情もあったが、すっかり洗脳されて、地政学的環境の差があるにも係わらず、その亜流の従属国となってしまい、わが国固有の伝統的精神文明の良い点まで忘却してしまった感がある。

 しかしエゴで狡猾なアメリカが、日本を恒久的な同盟国、良きパートナーとして扱い続けるとは到底思えず、あくまでも自国の安全と繁栄第一であり、日本は都合よく振り回され、投資(投機的と言うべきか)金融の組み手や実験市場として利用され、挙句に褒め殺しの罠に嵌められ、お役ご免となれば簡単に見捨てられるのではないかとの危惧の念は拭い去れない。

 にもかかわらずわが国は、その巧妙な策略の手に乗せられて、制度だけは真似たが肝心の魂の学習や導入を忘れた似非自由・民主主義の、不公正・不公明さがあり、不安定で不安感が強い、不信と混迷の国家、将来の進路が見定まっていない漂流国家、心のゆとりと多数の弱者を生贄とした醜い生存競争化で、財物的豊かさが偏在する「経大賎心国」に成り下がってしまったのではなかろうか。

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