- 2014年11月04日 05:00
地方創生には持続可能な漁業が欠かせない クロマグロの資源管理からも分かる世界と日本の差 - 片野 歩
2/2増える大西洋クロマグロと減る太平洋クロマグロ
画像を見る一本釣りで漁獲されるクロマグロ (撮影:青木信之)
この秋、クロマグロが「増えている」と「減っている」と、対照的な報道がありました。日本が主に漁獲している太平洋クロマグロは、親魚の資源量が減少してしまい、歴史的最低水準付近にあります。しかしながら大西洋クロマグロは、乱獲が止まり明確な資源回復が確認され、11月に開催されるICCAT(大西洋マグロ類保存国際委員会)で増枠が発表される見通しとなっているということです。
大西洋クロマグロの6~7割は、日本に輸入されているとみられており、このため日本への供給も増える可能性があります。この近年の大西洋クロマグロの資源管理経過を辿ると、日本が行うべき措置の一部が見えてきます。
大西洋クロマグロの資源管理は、決して順調だったわけではありません。日本でも当時ニュースになりましたが、2010年のワシントン条約国際会議では、資源が減少し、絶滅の恐れがあるとして、条約の禁輸対象に加える案が議論されていました。案は否決されましたが、2009年から2010年にかけて22,000トン⇒13,500トンの約4割減という大幅な漁獲枠の削減を行われました。2014年の枠は13,400トンです。
そして、厳格な管理のもとで明るい兆しが見えてきました。昨年すでに資源の回復が指摘されていましたが、大幅な増枠は見送られ、2015年の増枠可能性が付け加えられていました。日本の延縄船も東大西洋で1,140トンの漁獲枠を持っていますので、全体の漁獲枠が増えれば同じく増枠となります。資源の回復は漁獲状況にも影響が出ており、「かつては1カ月間操業していたが、今は1週間から10日で獲り切る」とのことです。漁獲量が厳格に決まっていますので、操業期間が短縮され、燃料費などの経費も節約できます。日本のカツオ漁のように、漁獲量が減り、漁場が遠くなって操業日数が延び、燃料コストが増加という苦しい状況とは真逆の好ましい効果が出ています。
また、定置網で獲れたマグロは、漁獲枠を超えた分が放流されています。東大西洋では、30キロ未満の漁獲、保持、水揚げを禁止し、漁業種類・海域ごとに6~11カ月の禁漁期を設定、すべての養殖用のイケスにステレオビデオカメラを設置しました。ICCATは「漁獲証明制度」を導入し、どこでどのように獲ったかのデータを添付して流通させ、不正を防いでいます。また地中海と東部大西洋水域では、2014年の漁では、EU船の主体に約520隻が操業し、監視船30隻と航空機11機が動員され監視活動にあたっています。
一方で、日本が漁獲も消費も主体となる太平洋クロマグロの資源管理体制は、どうなっているでしょうか? 2015年には未成魚の「クロマグロ半減合意」、「半減提案を迫られた日本」、「日本の科学的提案が奏功」と9月に各メディアで報道されました。しかし、水産庁は、大きな影響はないと予想しています。なぜでしょうか? 「半減」ならば影響は大きいはずです。
その答えは、「いつに対する半減なのか」ということにあります。今回の半減というのは、まだマグロが十分に獲れていた約10年も前、2002~2004年の平均からの半減です。獲れなくなってきたここ数年の漁獲量に対しての削減ではありません。このため不思議なことに、2015年の半減という漁獲枠4,007トンは、2012年の漁獲実績である3,815トンより多いくらいなのです。
また、漁獲量の半減は、未成魚に対してであり、親魚の漁獲量のことではありません。日本の提案に対し、東部太平洋でマグロを主に漁獲するメキシコからは「中西部太平洋(日本が主にマグロを漁獲)の削減は、2010~2012年と比べると僅か6%しか減っていない」と批判されています。
日本の各地でマグロ漁が悪化し、特に沿岸漁業者が苦しんでいます。手遅れになる前に、一刻も早く科学的な資源管理と漁獲枠、そして個別割当制度により早獲り競争を撲滅させていかねばならなりません。
個別割当制度による沿岸漁業者保護政策
資源が減少している時は、その配分方法で合意が難しくなります。誰もが、自分の漁獲量だけは極力減らしたくないので、一層早獲り競争が過熱してしまいます。個別割当もせずに、全体の枠を減らすというやり方で、良い結果が出るはずありません。小型の価値がない魚まで乱獲されてしまうだけです。
個別割当制度は、漁獲枠の配分において小規模の漁業者を優遇しています。ニュージーランドや米国では先住民に対して別途TACを配分しています。小規模な沿岸漁業者や先住民は、大きな漁業者を持つ漁業者と競争すれば、漁獲能力の違いから不利な状況に立たされてしまいます。
ノルウェーのマダラの漁獲枠の配分方法を例に取ると、資源が減り、漁獲枠が減少傾向になる時は、小型船の枠ほど減少の幅が小さくなります。一方で、資源が増加傾向になると、漁獲能力が高い大型船への配分が多くなります。漁獲枠は、近場で漁をする小型の沿岸船と沖合で漁獲するトロール船に分類されています。漁獲枠が10万トン以下の場合は、沿岸船に80%、トロール船に20%を分けます。一方で、漁獲枠が30万トンを越えるような豊かな資源状況の場合は、トロール船に33%の漁獲枠を割当てます。
つまり、資源が少ないときは、沿岸船優先、多いときは、トロール船への割当が増えるようになっているのです。
日本の場合は、離島対策として、離島枠のような漁獲枠を設定して、資源と離島の漁業者を守る政策も有効だと思います。日本では、船の大型化が過剰な漁獲を招くという概念から、漁船の大きさを制限する傾向があります。しかし、肝心なのは船ごとに漁獲できる量が個別に決まっていることです(=アウトプットコントロール)。
ノルウェーでは、漁船の大きさによってカテゴリーが分かれています。小型の漁船の漁獲枠を大型の船に割り振るようなことはできません。大型船だけとなれば、その地域を支えてきた漁船が、他の地域に行ってしまう可能性が考えられるからと思われます。漁船が大型化することで、資源が減るどころか安定し、労働環境が良くなりかつ安全。問題の本質は、漁船の大きさではなく、資源量に対して漁獲する量なのです。このやり方であれば儲かり続けることができます。地方創生のためには、水産資源を守り、すでに成功している北欧の資源管理に学ぶべきです。
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