- 2014年11月05日 23:06
トヨタ、上方修正のウラのウラ
トヨタの快進撃が止まらない。このまま急激な円安が続くと、今期のトヨタの営業利益は、それこそ限りなく3兆円に近付くのではないか。しかし、それは、必ずしも社長の豊田章男さんの望むところではないはずだ。どういうことか。
トヨタ自動車は今日、2015年3月期の連結営業利益が前期比9%増の2兆5000億円、連結純利益が前期比10%増の2兆円と、従来予想からそれぞれ上方修正しました。連結純利益は、2年連続で過去最高益を更新する見通しです。また、純利益見通しが2兆円の大台に乗るのも、今回が初めてです。
上方修正の理由について、東京本社で記者会見した副社長の小平信因さんは、「為替が円安に進んだことは大きい」としたうえで、次のように説明しました。「研究開発費や減価償却費など、固定費は増加し、販売台数は減っている。そうしたマイナスに対応するための原価改善や価格改定など、販売面の努力などが合わさって上方修正となった」上方修正のおもな要因が、円安であることは間違いない。つい2年前に歴史的な円高など、“六重苦”に苦しんだのはどこへやらですよね。
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社長の豊田章男さんは、2014年3月期決算説明会で、「今年は、意志をもった踊り場だ」といって、販売台数が1000万台を超えて広がる、イケイケドンドンのムードを牽制しました。
というのは、販売台数が1000万台を超えるということは、自動車メーカーとして、まったく“未知の体験”です。つまり、トヨタといえども、地球的規模で1000万台の販売をオペレーションしたことも、マネジメントしたこともありません。
当然、仕事のやり方から組織のあり方、さらにグローバル人材の育て方など、さまざまな分野でマネジメントの方法を変えなければ、1000万台を販売する地球規模のオペレーションはできません。マネジメントのイノベーションが求められます。果たして、トヨタにその備えがあるのか。
ましてや、トヨタに限らず、世界中の自動車メーカーが住宅バブルに乗って、北米市場で拡大路線をひた走った結果、リーマン・ショックで痛い目にあいましたよね。トヨタは、リーマン・ショックの翌年の09年3月期、4610億円の大赤字を出しました。豊田章男さんは、その大赤字を背負って社長に就任しました。
豊田章男さんは、以後、折に触れて、「持続的成長」を口にし、業績の極端なアップダウンを避けてきました。アップダウンは、ステークホルダーに多大な迷惑をかけるからです。
じつは、豊田章男さんが、今年は「意志をもった踊り場」であるとした発言のウラには、このような背景があるのですが、しかし、章男さんの意思とは関係なく、販売台数は1000万台を超え、営業利益は、急激な円安のおかげで、限りなく3兆円に近づこうとしているのが現状です。手放しで喜んではいられない心境ではないでしょうか。
絶好調の隣には、必ず、落とし穴があります。かといって、トヨタは日本のトップ企業です。日本経済を左右する存在ですから、勝手なことばかりはいっていられません。そこに、いまのトヨタのジレンマがあると思いますね。
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