- 2014年11月04日 00:48
政府は「原発」をどうするのか? エネルギー戦略を国民に真正面から語れ!
10月20日、小渕優子さんが経済産業大臣を辞任した。実は、まさにその日、僕は小渕さんを取材することになっていたのだ。もちろん取材は取りやめになり、僕はがっかりした。小渕さんにどうしても聞きたいことがあったからだ。「原発」についてである。
僕はこの1年間、原子力行政に関わる政治家、官僚、学者、そしてメーカーを取材してきた。賛成、反対を超えて、さまざまな立場の数多くの人たちに話を聞いてきた。そして、この取材を通して実感したのは、政府は原発に対して、つまりはエネルギー問題に対して、腰が引けているということだった。
政府は「エネルギー基本計画」のなかで、「原発依存度を可能な限り低減する」としながらも、「重要なベースロード電源」と位置づけている。そして、石油、石炭などの火力、水力、原子力発電、そして再生可能エネルギーなどの、目標とするエネルギーの割合が、そこには一切記されていないのだ。
現状で具体的な数字を出すのは難しいだろう。だが、「基本計画」なのだから、いつまでに「ベストミックス」を発表する、という目標があってしかるべきだ。反原発の世論に遠慮している、としか僕には思えない。
日本が原発事故を起こしたのは、変えようのない事実だ。あれだけの大事故だったのだから、反原発、脱原発の空気が国民の間で広まるのは自然な流れだ。しかし、だからこそ、これから原発をどうするのかを、政府は国民と真っ向から向き合って議論し合い、エネルギー戦略を決めていかなければならないのだ。ところが、政府ははっきりと方針を示さない。そして、世論を気遣うあまり、「基本計画」も何を言いたいのか、さっぱりわからないものになっている。
現在、エネルギー問題に関わるのは、経産省、環境省、文科省などだ。完全な縦割りだ。だから、そこには総合戦略がない。省庁を超えたエネルギー対策の組織が必要なのである。
そのうえで、原発事故を起こした日本は、「原発事故先進国」になるべきだ、と僕は思っている。現在、世界には400基以上の原発が稼働している。とくに中国、ベトナムなどアジアで、今後、原発は増えていく。だが、どんな分野の技術でも「完全」はない。事故が起こる可能性は十分にある。そのような事態になったとき、技術的な対応、住民の避難誘導、事故後の復興、廃炉などのあらゆるノウハウを、多角的に提供できる国に日本はなるべきなのだ。
いま僕は、とても懸念していることがある。原発事故が起きる前、政府や電力会社、自治体などは、「難しい説明をしても住民にはわからない」と、とにかく安全だと説明した。そうして「安全神話」ができあがった。安全だから事故の心配はない。だが避難訓練をすると、事故の可能性があると言ってしまうことになり、住民が不安に思うかもしれない。このような理屈で、原発のある自治体は避難訓練さえ行わなかった。そして、いつしかこの安全神話に、電力会社も政府も、自治体も、どっぷりはまってしまったのだ。
いま、政府は「脱原発」の世論を恐れるあまり、国民と真っ向から向き合っていないと、僕は感じている。その象徴が「エネルギー基本計画」である。そして、「住民にはどうせわからない」といって安全神話を生み出した、「事故前の空気」と同じものを僕は感じるのである。
小渕大臣には、こうした提案や意見を直接ぶつけたいと思っていた。だが、その機会は失われてしまった。とても残念だ。小渕さんとの議論は叶わなかったが、この問題については、もっと議論を尽くすことが大事だと思っている。
原発問題についての1年間の取材と議論は、『文藝春秋』の連載「ドキュメント原子力戦争」に詳しく書いてきた。100人を超える人たちに話を聞いたこの連載も、11月10日発売号で、ついに最終回となる。僕が危機感をもって、全力で取り組んだ取材だ。読んでいただけたら大変うれしい。



