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黒田総裁がバズーカ砲を撃った理由

 昨日は、日銀の追加緩和が市場に衝撃を与えた1日でした。まさに黒田バズーカ砲の炸裂という表現がぴったりです。

 しかし、それにしてもこれほどの株価の急騰と円安が起ころうとは。

 そうお思いにはなりませんか? だって日経平均は755円ほど上げ、それにドル円は112円台になっているのですから。

 では、何故これほどまでにマーケットは反応したのか?

 それは、余りにも驚きが大きかったからです。確かに一部では追加緩和策を催促する声があったものの、大勢は、これまでの金融緩和策が継続されるだろうとみていたことは否定できないからです。

 それに、黒田総裁は我が国の経済の現状について強気な姿勢を保ってきていたではありませんか。海外での講演でも強気の姿勢を保っていました。そのような認識からすれば、追加の緩和策を打ち出す理由などなかった筈です。

 さらに言えば、追加緩和策の決定に関し9人いる政策委員のうち4人の委員が反対しているのです。そのような状況にあったのに、誰が追加緩和策が採択されると予想できたでしょう?

 いずれにしても、それほどの意外性があったからマーケットは反応したのです。

 では、何故黒田総裁は、この段階で追加緩和策を打ち出したのか?

 強気の発言とは矛盾しないのか?

 私は、景気が落ち込み、インフレ率が再び鈍化しつつあるうえに、10%への消費税率の引き上げの判断時期が差し迫ってきていることが大きかったと思うのです。

 第一に、異次元緩和策を成功させるためには、何としても目標インフレ率の2%を達成する必要があるが、このままでは目標が達成できるか覚束ないという思いが強まってきていた。さらに、黒田総裁はそもそもは財務省出身であるばかりでなく、主税畑育ちのタックスマンでもあり、どうしても増税を延期する声を封じる必要があると考えた、と。

 そこで、追加緩和策を打つ選択肢が浮上したのではないのでしょうか。但し、追加の緩和策は、何も今打つ必要はなかったかもしれません。例えば、増税を判断する直前でもよかったし、と。

 しかし、そこにはこれまでの彼の経験が影響しているのではないでしょうか。

 彼は主税畑育ちであると言いましたが、国際金融畑の経験も長く、最後は財務官まで務めた人です。そして、当時の国際金融局の主な仕事の一つは、債務問題の解決のため資金貢献をすることでしたが…そこから彼はヒントを得ているのではないでしょうか。

 日本はかつて債務問題解決のために先進国のなかでは突出してお金を出していた国ですが、それだけお金を出しても褒められることは少なかったのです。

 何故か?

 それは、日本はいつもしぶしぶお金を出していたからです。

 何故しぶしぶお金を出していたのか? 

 それは、我が国は、先ず他の先進国がどれほどお金を出すのかを見てから自分が出すべきお金の額を決めるようなところがあったからです。

 で、そうやっているとどうしても決定が遅れる、と。それに、他の国がどのような行動を取るかが分からないと財政当局(主計局)がお金を出すことにゴーサインを出さなかったというような事情もありました。

 結果として、多額の資金を日本は出しながらも日本が感謝されることは少なかったのです。

 だったら、最初から日本が率先してお金を出すと言えば、どれだけ効果があったか、と。

 そのような思いが黒田総裁にはあったのではないでしょうか。

 似たようなことは日銀でもあったのです。日銀批判をする人々には悪いイメージしか残っていない総裁の一人に速水さんがいます。しかし、あの人の時代に量的緩和策を打ち出した訳ですし、日銀が株を購入する禁じ手にまで手を出したのです。信じられますか? 決して何もしなかった訳ではないのです。

 しかし、繰り返しになりますが、評価は芳しくありませんでした。

 何故か?

 それは、しぶしぶそのような政策を打ち出したからです。

 そのようなことを黒田総裁は十分すぎるほど認識していたのではないでしょうか?

 新政策を打ち出すなら、促されて打ち出すのではなく率先して打ち出すべきだ、と。しかも、意外性があればなお効果があるだろう、と。

 ということで、10%への消費税率の引き上げの布石という意味もあり、ここで黒田総裁は勝負に出たということなのでしょう。

 確かに奇襲攻撃は成功したと言えるでしょう。これだけ株価が上がったのですから。

 でも、急激な円安についてはどう思っているのでしょうか?

 為替に関しては、水準自体よりも急激に乱高下することが一番困ることだというのは、専門家の常套句ではなかったのではないでしょうか。

 いずれにしても、奇襲攻撃は成功したものの…カードは切り尽したという不安もあるのです。

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