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イノベーションとは無縁の商品をイノベーションした「Vertty」

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「イノベーション」という言葉には、iPhoneやfacebookなどのようなテクノロジーを駆使した商品やサービスといったイメージがある。

今日はそんなイメージを覆す事例「vertty」を紹介したい。同サイトが取り扱っている製品はビーチタオルだ。ビーチタオルをデザインやマーケティング、ブランディングといった面から徹底的にイノベーションにこだわることで、世界40カ国に商品を出荷、facebookページに13万の「いいね!」がつくなど、世界的な成功を収めることに成功したECサイトだ。

幾何学的な三角形を備えた、ポップなビーチタオル

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verttyが販売しているビーチタオルは、上写真のような独特の形状とデザインをしている。サイズは185×100cmとビーチタオルとしては大きめで、さまざまな三角形を貼り合わせたような幾何学的なデザインを持ち、一見するとタオルには見えない。

この形状と大きさにはデザイン上のインパクトもあるが、実用上の理由もあるようだ。従来のタオルでは日光浴をするときに充分な広さが確保できず、身動きが取りづらかったが、このタオルは寝そべるのに充分な広さがあり、また快適な姿勢を取りやすいのだという。

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タオルの値段は各色59ドル(約6000円)。カラーは9色用意されている。一般的なビーチタオルは1000~1500円くらいからでも見つかるので、2ランク上の価格設定といえるだろう。

verttyのサイトは、タオルの写真をクリックすると即座に拡大されたタオルが表示されたり、トップページでタオルがちょっとずつ移動するなどなかなか芸が細かい。それぞれのカラーに応じて独立した販売ページを用意するなど、商品1点ごとへの愛着を感じさせる内容だ。ちなみにオレンジ色のビーチタオルは「CLASSIC ORANGE」で「be magnetic」(魅力的であれ)がキャッチフレーズだという。

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こうしたちょっと遊び心をくすぐるサイトデザインもあってか、webサイトを批評する「awwwards」では、デザイン、ユーザビリティ、創造性、コンテンツのすべての項目において10点満点中8点以上の高評価を得ている。

しかし、サイトデザインが「思わず触れたくなる」ような工夫がなされているものの、購入プロセスはごく一般的なやりかたで、これといった独自性があるわけではない。また商品そのものも6000円と、機能とデザインを考慮しても、少々高めに思える価格設定だ。

同サイトは、なぜこの商品とサイトで、世界的に知られるほどの成功を収めることができたのだろうか。

「ビーチタオルは、製品デザインの世界から除外されている」

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verttyの創業者のDiogo Cruz氏(以下、ディオゴ氏)はポルトガルで育ち、大学卒業後はWebマーケティング代行会社の起業や、クリーンエネルギーの会社のマネージャー職などを行ってきた人物だ。

同氏がビーチタオルを手掛けるに至ったきっかけは2012年の春にさかのぼる。

ディオゴ氏はその時、休暇でオーストラリアに出掛け、海岸でサーフィンをしていた。ふとビーチに目をやると、同じようなビーチタオルばかりが並んでいる。ディオゴ氏はその光景を面白味がないと感じるともに、ビーチタオルに多様性がないことに気付いててハッとなった。

ビーチタオルは水着、ビーチサンダルと並ぶ、ビーチでの必須アイテムのひとつだ。誰もが海岸に持ち込むアイテムであるにも関わらず、ブランド化を推し進めている企業はない。

たとえばビーチサンダルには、世界中の人々に愛されているブランド「ハワイアナス」がある。水着もさまざまなブランドが、独自のロゴやパターンやデザインの工夫を行っている。しかしビーチタオルはそうしたブランドによる競争から取り残されていたのだ。

"ビーチタオルは、製品デザインの世界から除外されている"
(fastcodesign.comの記事より)

ここに大きなビジネスチャンスを見出したディオゴ氏は、これまでにないようなファッション性に富んだビーチタオルを自ら製作しようと考える。

自身にはデザインに関する専門的な知識や経験がなかったため、20人以上のデザイナーに自身の構想を持ちかけ、その中でもっとも自分のアイディアに共感の意を示し、かつ腕の良かったFrederico Cardoso(以下、フェデリコ氏)をビジネスパートナーに迎えた。

その後ディオゴ氏は、フェデリコ氏とともに半月以上かけてデザインの試作を繰り返した。長方形やひし形などを試し、最終的に三角形を重ねたデザインがベストと判断。やっと納得できるものを完成させる。

また「ビーチタオルを改革する」ことをスローガンに、高い機能性を持たせることに着手した。kettenという新繊維を素材にすることで、一般的なタオルよりも10cm以上大きめであるにも関わらず、30%以上軽くすることができた。またこの素材には水を吸いにくく、すぐに乾くという強みもあるという。

ディオゴ氏らが製品の次のステップとして考えたのが、どのように効果的にこの商品を販売するか、ということだった。この時同氏は、店頭に品物を置かず、オンラインサイトのみで勝負することを決意する。

その理由は、オンラインサイトであれば、顧客の購買プロセスまで自分たちでコントロールすることができ、ブランドイメージの形成がしやすいと考えたためだ。また、自分たちの製品が店頭で他のビーチタオルと一緒に並べられ、「よくあるビーチタオルのうちの1つ」と認識されることのないようにとの戦略があったという。

タオルに合わせる形で、タオルを入れるボックスも遊び心あふれる三角形のデザインに決定。サイトデザインやショールーム、バスに至るまでアイキャッチとなる独特の三角形のデザインを多用し、積極的にブランド化を図っていった。

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また製品のPRのために、世界中のデザインコンテストにタオルのデザインを送ったり、世界中の雑誌に取り上げてもらうよう依頼した。

その結果、versityの名は瞬く間に世界中に広まった。同社のビーチタオルは世界40カ国に出荷され、ハリウッド女優のケイト・ハドソンにも愛用されるようになった。また販売サイトも優れたwebサイトを表彰する「awwwards」により2013年度のナンバーワンに選ばれるなど、商品・デザイン・サイトの全てでブランディングに成功していったのだ。

価格・機能のみで勝負することは難しくなり、デザイン性の高い商品が求められている

verttyの成功要因はなんといっても、これまで誰も目を付けなかった製品に着目した点が挙げられるだろう。とは言え、それを誰からも愛されるような商品にブランディングしていくのは容易なことではない。アプローチのポイントとして、ディオゴ氏はデザインに徹底的にこだわったことを挙げている。

"充分に豊かになってきている社会において、商品の価格・機能のみで勝負することは難しくなり、デザイン性の高い商品がますます求められると僕は考えている。その考えはこのverttyの商品開発をする中で確信に変わったよ"
ディオゴ氏

なんでもないように思える製品も徹底したこだわりを見せることで、新しいブランドを築くことができる。日用品のような扱いだったビーチタオルを徹底的に追求し、「クール」なブランドに仕立て上げたverttyのブランディングから学べるところは多いだろう。

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