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ゴーストタウンを生み続ける中国不動産市場の怪 ‐ 弓野正宏

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急速に進んだ都市化

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 過去10年の間に中国では都市化が急速に進んだ。中国都市計画設計研究院の楊保軍副院長によると都市化の程度が30%から70%に達するのは発展期に入った事を意味しており、都市規模の急拡大に対して拡張工事の必要を意味している。とはいえ中小都市では盲目的拡張工事が横行する事態になっている。

 ランキングでは全国657カ所の都市における過去5年間の建設地域面積のデータを集め、それを基にして過去5年間の平均都市拡張率のランキング(2014年)も算出しトップ50の都市を算出した。楊副院長によれば大多数が中小都市である。

 統計によると中国の都市での過去5年間の拡張率は5.34%であり、急成長を記録し、拡張程度が大きかった都市は上から汕頭市(広東省)、南通市(江蘇省)、三亜市(海南省)、通遼市(内蒙古自治区)、達州市(四川省)、呉忠市(寧夏回族自治区)、濾州市(四川省)、徳州市(山東省)、済寧市(山東省)、泉州市(福建省)という順だった。

 中国人民大学の土地政策・制度研究センターの葉剣平主任によると、2000年から2010年の10年間で、中国全土で都市の建設面積も64.45%増加しており、この傾向は省都のような大都市から地級市、県級市へと地方に広がっているという。この基準を基にした都市拡張率のランキングがこの現象を裏付けているというわけだ。

 拡大しつつある都市とは対照的に吉林市(吉林省)、常熟市(江蘇省)、鶏西市(黒竜江省)、十堰市(湖北省)、双鴨山市(黒竜江省)、潮州市(広東省)、平涼市(甘粛省)、延吉市(吉林省)、丹江口市(湖北省)、満州里市(内蒙古自治区)では過去5年間の中心地区面積の増加がほぼゼロだった。こうした都市では経済成長の活力が欠如していたといえるだろう。

 中国では都市化という概念では立法面でその定義が明確に定められていない。しかし、2010年に都市の規模についての一つの判断基準が学界で認められている。人口50万人以下を「小都市」、50万~100万人を「中都市」、そして100万~300万人を「大都市」、300万~1000万人を「特大都市」とするものだ。

 都市の拡張面積は過去5年間で中国各地の中心地域人口は3500万人しか増加していないという。住宅業界の監督官庁である住建部による都市での1平方キロの基準では新たに建設される区域では1万人の収容能力がある都市の基準からいえば、新たに建設された9700万平方キロに9700万人が収容能力があるが3500万人しか増えていない為、一部の都市は「ゴーストタウン」の様相を呈しているのだ。

 ランキングではトップ50の都市を最終的に掲載したが、その中心地域の人口や建設面積の比率が0.5を下回っていたり、わずかに上回っているため、近い将来50近くの「ゴーストタウン」が出現する可能性があるというわけだ。

 この調査からメディアが報道したことのある、昆明市(雲南省省都)、鄭州市(河南省)、天津市等の「ゴーストタウン」現象は短期的で見た目だけで厳密には発展の過渡期にあるから、こうした都市が「ゴーストタウン」となる可能性は低いと楽観視されている。

観光地、資源開発による都市が目立つ

 この度の「ゴーストタウン」ランキングを見ると地域的な特徴が浮かび上がってくる。例えば、華東地域では浙江省の6つの都市がランクインしている。次いで江蘇省が2つ、福建省が1つだ。江蘇や浙江は都市化が比較的進んでいる地域であり。比較的成熟した大都市地帯である。ただ「ゴーストタウン」の存在は三角デルタ地域で多くの労働人口の移動があり、こうした人口がデルタ地帯の経済的繁栄に大きく貢献しているのだ。東北地域は計画経済時代からの古い工業地帯であり、多くが計画経済の下に発展してきた都市である。その点から市場経済への転換において十分に市場に対して理解を深め、掌握することができていなかった。

 ランキングから、2種類の都市が比較的典型であることが浮かび上がっている。一つは三亜市や威海市に代表されるような観光地であり、もう一つは楡林市やオルドス市を代表とするような資源開発による都市である。西北地域でランクインした多くの都市は資源型の都市であり、内蒙古自治区のいくつかの都市は皆、成金的急成長を遂げた地域で、不動産市場の過熱により「ゴーストタウン」現象が現れた。

 中国の庶民が行えるしっかりとした金融投資のチャンネルは非常に少なく、多くが不動産市場に流れる結果になっているのだ。山東省等の沿海観光地で不動産の供給過剰を引き起こしたが、中国人の支払い能力と消費の需要は沿海地域でのバケーションのレベルにはまだ達していないのだ。

 ランクインした多くの都市は「ゴーストタウン」番付で上の方につけたとはいえ、町全体が「ゴーストタウン」というわけではない。例えばランクインした二連浩特の人口はわずか10万人程度だが、2位の欽州は310万、3位のラサは56万人、4位の嘉峪関は30万、5位の井岡山は15万と千差万別だ。

 日本でよく報道されて知られるようになった「ゴーストタウン」は、内蒙古自治区のオルドス市であるが、この度のランキングでは30位で「ゴーストタウン指数」では0.49と0.5に近く、建設面積との比率であるべき人口の半分程度と言われるほど最悪な状況ではないのかもしれない。ランキング1位の同じ内蒙古自治区の二連浩特はゴーストタウン指数がなんと0.07という圧倒的な建築面積に対する人口の少なさを記録している。もちろんオルドス市は人口が159万もあることから、需要もあり、多くのマンションが作られて空室の数も多い事が予想できるが、空室率からすれば、二連浩特は圧倒的な「ゴーストタウン」状況なのだ。

 不思議な事にこのようないわば都市計画の失敗といえるような状況を生み出しながらその都市のトップが更迭されたとか責任を問われたという報道はあまりみられない。まだ高度成長が続いていた時期には各地のトップの業績も内実よりもGDPに反映されるような大型の物件やインフラ整備によって評価されていた事があるかもしれない。

 ランキングには北京や天津、上海等の直轄市のような中国を代表する都市が入っていないが、かといって「ゴーストタウン」がない、というわけではない。ランキングに入ってこないのは「ゴーストタウン」化した地域は町全体のごく一部でしかないからだろう。

 例えば天津市郊外の響螺湾地域。ここには2007年以降、天津市政府が中心となり数百億元が投資されて大々的な一大商業地域が作られ、「未来の中国のマンハッタン」とさえも呼ばれた時期もあったが、「マンハッタン」どころか建設が中断した無数のビルが放置され、「ゴーストタウン」となった。この頃天津市のトップである党委員会書記を務めていたのは現在副首相で中国指導部のトップ7に位置する張高麗氏だ。張副首相は最近、北京と天津、河北での連携を模索するタスクフォースの長にも就任し、汚名挽回が期待されている。

 このような視点から見れば、今回発表された「ゴーストタウン・ランキング」はかなり恣意的な数字の羅列といえるかもしれないが、少なくとも数値化されて公表されるようになっただけ進歩だといえるかもしれない。「ゴーストタウン」がまだまだ50ぐらいは表れるかもしれないと考えると中国経済のブラックホールの底知れない闇に戦慄を覚えざるをえない。

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