記事

500人チームで専任は10分の1以下。最小リソースで最良の結果を出す――小惑星探査機「はやぶさ2」プロジェクトチーム

2/2

各自が役割を果たす――“あたりまえ”がチームを成功に導く

現在、吉川先生ははやぶさ2のミッションマネジャーを担当されていらっしゃいます。サイエンスチームと工学チームとの間に立って、リーダーとしてマネジメントを行うにあたり、心がけているのはどのようなことでしょうか?

各チームメンバーが専門分野に注力できる環境づくりをすることです。実は開発のほかに事務的な作業がたくさんあります。たとえば今回は、欧米のチームも関わっているため、海外とのやりとりも発生するわけです。それらは私にて行っています。

工学チームは装置を作ること、サイエンスチームは装置を使って実験を行うこと、打ち上げ後に適切なデータを取れるよう事前に膨大な調査をしたりすることが主たる業務ですから、チームメンバーにはそれぞれの“本業”に注力してもらいたいと思っています。

また、開発中には、科学的にはここまでやらないと意味がないが、技術的にはそこまでは無理でこの程度までとなる、といった事例がたくさんでてくる。その場合に話し合いをします。

できないならやらないという1か0かではなく、0よりはここまでやれたほうがいいね、という折り合いをつける。理想はその通りだけど、それを実現するには、もっと予算が必要になったり、装置が大きくないとできなかったり、運用が危険になってリスクが高まる、といった現実を全員で見て伝えること。科学者にはその点をしっかり伝えることを心がけています。

画像を見る


プロジェクトを成功させるチームの理想の在り方はどのようなものでしょうか?



まずは各自にそれぞれの役割を果たしてもらうことが基本。はやぶさ2には複雑なシステムが使われています。さらに工学から理学に至るまで、いくつもの分野が関わっていますから。

思い返すと、はやぶさは『チームワークがよかった』と評価されていました。私自身、それは特別に評価されることではなく、あたりまえのことをやってきただけだと感じています。

単にメンバーひとりひとりが、自分自身の役割を理解し、かつ役割を果たして、それをリーダーが取りまとめて上手くいったということです。基本は各個人・各チームがそれぞれの役割をきちんと果たすしかないと思っています。


打ち上げまで開発を続ける間に、想定し得ないことが起こる可能性もあるかと思います。そんな変化に柔軟に対応するには、どのような組織にすればよいとお考えですか?



各装置ごとに担当するチームがあり、それぞれで開発を進めています。ただ、おっしゃるとおり、研究開発にトラブルはつきものです。

はやぶさと同じものを作るにしても、上手くいかないことはあります。はやぶさを作って10年以上経ち、部品も変化しているため、まったく同一のものを作るのは難しいといえます。

どこに原因があるかを見極め、対処法・方針を考えて決めることが重要です。そういうことができるリーダーが必要なのです。だからといって、リーダーが各チームにしっかり報告を出させるように指示して、各メンバーがレポートを出すことに時間がとられるようになっては本末転倒です。チームの状況を見ていて危なそうだと思ったら手立てを打てるようにしておく、そこに気が付くかどうか、という点がリーダーには求められると思います。非常にバランスが難しいところですね(笑)。

  

はやぶさ2の打ち上げまで残り1ヶ月を切りました。2018年夏前に小惑星に到着するはやぶさ2。打ち上げ後は電波で通信を行いながら、今後も長期間に渡ってミッションは続いていきます。地球への帰還は2020年11月〜12月頃。その数年後に全プロジェクトが完了した頃、改めてチームに関するお話を伺いたいと感じてなりません。


(取材:2014年10月/執筆:池田園子/撮影:尾木司/取材・編集:椋田亜砂美)

関連記事:1代目の「はやぶさ」プロジェクトチームの様子も当時のプロジェクトマネージャー川口淳一郎さんに聞いています。“前人未踏の挑戦が、チームを強くする――小惑星探査機「はやぶさ」プロジェクトチーム

あわせて読みたい

「はやぶさ2」の記事一覧へ

トピックス

  1. 一覧を見る

ランキング

  1. 1

    何をやっても批判される「老夫婦とロバ状態」の日本

    内藤忍

    08月02日 11:52

  2. 2

    コロナはインフルエンザ程度?インフルエンザで死ぬかと思った24歳の時の話

    かさこ

    08月01日 09:14

  3. 3

    新型コロナ感染者数が過去最多も 病院のひっ迫状況を強調するだけの尾身茂会長に苦言

    深谷隆司

    08月01日 17:19

  4. 4

    コロナ軽視派「6月で感染者数減少」予想大ハズレも、重症者数が大事、死亡者数が大事とすり替え

    かさこ

    08月02日 10:29

  5. 5

    「幻の開会式プラン」を報じた週刊文春が五輪組織委の"圧力"に負けずに済んだワケ

    PRESIDENT Online

    08月02日 10:36

  6. 6

    日産の小さな高級車「ノート オーラ」に中高年の支持が集まる理由

    NEWSポストセブン

    08月02日 10:43

  7. 7

    五輪もパラリンピックも中止にするべきではない。強いメッセージは経済対策・法改正で出すのが筋

    音喜多 駿(参議院議員 / 東京都選挙区)

    08月02日 08:25

  8. 8

    「日本人の給料はなぜ30年間上がっていないのか」すべての責任は日本銀行にある

    PRESIDENT Online

    08月01日 16:13

  9. 9

    男性視聴者の眼福になっても女子選手が「肌露出多めのユニフォーム」を支持する理由

    PRESIDENT Online

    08月02日 15:27

  10. 10

    この1週間を凌げば、オリンピックが終わります。もうしばらく我慢しましょう

    早川忠孝

    08月02日 14:37

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。