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儲かる漁業へ! 大学と現場が共に考える ‐ 磯山友幸

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大学の存在意義が問われる

 水産王国の長崎県も漁獲高は年々減少が続いており、このままではジリ貧だ。日本には国立大学の水産学部は4つしかない。そのひとつがある長崎の水産が衰退すれば、学部だけでなく大学の沽券にかかわる。水産学部を中心に経済学部の教授なども加わり、大学を挙げて「海洋サイバネ」に取り組む背景には、存在意義を問われかねない大学としての危機感があるのだ。

 海洋サイバネの事務局を務める菅向志郎准教授は「学者がどんどん現場に出ていき、事業者と一緒になって問題を解決していく社会的意義は大きい」と語る。「象牙の塔」を飛び出し、教員自らが地域に足を運んで「産学連携」を試みているわけだ。教授らが現場に出向く際には、水産学部の学生も連れていくケースが増えている。机上の論理だけを学ぶのではなく、実際の現場を見ることができるのは学生にとっても大きなプラスになるからだ。

8月の終わり、長崎大学水産学部の一室で、村田さんたち修了者の発表会が行われた。村田さんは南有馬の海で近年大発生しているアナアオサという海藻の再利用法を取り上げた。アナアオサは漁網に絡まる厄介モノで、海岸に打ち上げられたアナアオサの清掃処分が漁協や自治体の重荷になっていた。

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村田さんが発表に使用したパネル

 ワカメに代わるひょっつるの原料にならないか実験を繰り返したほか、アナアオサの繊維を固めて段ボール紙状にし、加工用の素材も作ってみた。

 「味わいがあるので、芸術家がランプシェードか何かに使ってくれないか」

 「自然の素材なので、園芸用ポットにはなるだろう」

 発表会で村田さんを取り囲んだ教授や学生、水産加工業者などから、次々に声が上がった。「こうやって話している間に、新しい製品が生まれたら面白い」と村田さんは笑う。

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アナアオサの繊維を固めて段ボール紙状にした加工用の素材

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【Data】長崎県の水産業


2013年長崎県の海面漁業・養殖業の生産量は26万4044トン。海面、養殖ともに生産を減らし前年から3107トンの減少となった。

 実際、「海洋サイバネ」をきっかけに、様々な商品が世の中に出始めている。東武百貨店のオンラインショップで「長崎大学×おいしいもの発掘便」というコーナーが生まれ、魚介類を加工した珍味セットやお茶漬け、お魚せんべいなどが取り扱われている。村田さんの「ひょっつる」もこのサイトで買える。

 漁業や農業など1次産業と加工の2次産業、販売などの3次産業を組み合わせる「6次産業化(1次+2次+3次=6次)」は国も掲げる1次産業振興策の柱だ。だが、これを成功させるには最後の売り先である「販路」の開拓が最大のネックになる。実はこの東武百貨店のルートも長崎大が切り開いた。ジャーナリストから長崎大の広報担当に転じた深尾典男副学長が百貨店と漁業者をつないだのだ。

 こうした取り組みには県外からも関心が寄せられている。8月末から始まった2014年度の海洋サイバネには青森県の下北半島の西端にある佐井村から受講生を受け入れた。大学が関与することで「儲かる1次産業」を作っていく。長崎大学の産学連携による地域おこしの取り組みが少しずつ全国に広がろうとしている。

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アナアオサの繊維を固めてダンボール紙状にした加工用の素材

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