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「音楽」を変えたアップルが、自らも音楽ビジネスを失う危機に

ウォール・ストリート・ジャーナルが、アップルのiTunesでのダウンロード数が大幅に激減し、iTunesの全世界の音楽売上高が年初から13~14%減少したと伝えています。無料の動画配信やより低価格で音楽を聴けるストリーミング配信に押されての結果です。音楽ビジネスの世界を一変させたのは、音楽のデジタル化であり、なんといってもアップルのiPodとiTunesでしたが、その変化の波が、さらに広がり、今やアップルの音楽ビジネスそものものを揺さぶり始めているというのも皮肉な話です。
アップルのiTunes、音楽ダウンロードの売上高が大幅減 - WSJ

アップルが音楽のデジタル化というパンドラの箱を開けてしまったことで起こってきたのは、音楽の「アンビアント化」でした。

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佐々木 俊尚
ディスカヴァー・トゥエンティワン
2010-04-15

佐々木俊尚さんが、「電子書籍の衝撃」で書かれているように、音楽が環境音楽化してしまったのです。

音楽がまるで空気のように、いつも生活のなかにある、そうなってしまったことで音楽をたんに聴くだけということでは価値が下がってしまいました。新しい曲でなくとも、気に入った音楽を繰り返し聴くという音楽ライフが始まると、結果として新曲を聴くことへの魅力が低下し、価格も下がってきます。また価格が下がれば下がるほど、さらに低価格で聴けくためのビジネスも広がってきます。

価値を感じるのは、たんに聴くだけでなく、生の音楽、アーティストやファンと場を共有し、一体化できる特別な体験ができるライブだけになってくるのも当然な流れで、聴く音楽は、ファンを広げ、ライブに人びとを集めるための手段のようになってきています。

だからストリーミングなどの、より安く聴くことのできるサービスにビジネスの比重も移ってきます。そんな影響を受けるのはアップルだけではありません。同記事によると、米国での今年上半期の米国内でダウンロード売上高はシングル11%、アルバムが14%それぞれ減少し、それに変わるようにストリーミング配信サービスによる売上高が28%増加したたために、デジタル配信全体の売上高はわずかに増加したそうです。

そんな背景があって、アップルは、30億ドル(約3200億円)でストリーミング配信で人気のあるビーツ・ミュージックを買収し、ダウンロードに加え、ストリーミングのサービスをも広げようとしています。
やっぱり、AppleはBeats Musicを畳んでiTunesに吸収する - TechCrunch

アップルのエコシステムの売上構成の推移を見れば、音楽の売上は2012年を境に縮小傾向をたどり、音楽ビジネスを失いつつあることが見て取れます。そして、アップルにとって音楽販売はもはや売上としては決して大きくはありません。コンテンツの販売では、圧倒的にアプリが主役で、売上では、音楽販売よりもビデオ販売のほうが売上としては大きくなっているほどです。

画像を見る

How big is Apple’s Ecosystem? | Asymco

にもかかわらず、音楽はアップルは死守しなければならないコンテンツなのです。アップルがiTunesの音楽ビジネスを立て直そうとしているのは、音楽がユーザーを広げ、またアップルの経済圏にユーザーを囲い込むための重要な役割をもっているからでしょう。

アップルがどのようにストリーミングサービスを取り込むのかが注目されるところです。

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