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ヒラリー・クリントンが評するキッシンジャーの新刊『世界秩序』 - 岡崎研究所

9月4日付の米ワシントン・ポスト紙で、クリントン元米国務長官が、キッシンジャー博士の近著“World Order”を書評しています。(http://www.washingtonpost.com/opinions/hillary-clinton-reviews-henry-kissingers-world-order/2014/09/04/b280c654-31ea-11e4-8f02-03c644b2d7d0_story.html)

 クリントン元長官の寄稿は、「キッシンジャーの『世界秩序』評」という表題はついていますが、明らかに書評ではなく、クリントンの大統領選挙に向けた態勢準備の一環です。オバマ外交への批判が強まる中、キッシンジャーの言葉を利用して、オバマ政権一期目の国務長官としての立場を擁護しながら、オバマとは違う自分の外交姿勢を明らかにする試みです。

 キッシンジャーの近著を書評しながら、クリントン元国務長官が主張したいことは、大きく2点あります。1つは、米国が、国際秩序を形成する指導力を引き続き発揮しなければならないということです。そして、2つ目は、米国の指導力の源泉となるのが、自由と民主主義の価値観である、ということです。例えば、

 このキッシンジャーの新著に流れる考えは、私達もオバマ大統領も共有する信念である。すなわち、公正で自由な秩序のためには継続した米国の指導力が不可欠である、という考えである。

 幸い、米国は、21世紀をリードするのにユニークな位置にある。それは、米国が強い軍隊と経済を持っているからという理由からではない。もちろん、これらは大変重要な要素であるが、理由はもっと深いところにある。米国が米国たるゆえんは、我々の社会が多様かつオープンであり、人権や民主的価値に米国が献身的であるということだ。このことは、我々米国民に、将来を築く特別な地位を与えてくれる。その将来とは、自由と協力の精神が、分裂、独裁及び破壊に打ち勝つ将来である。

 と述べています。

 また、クリントン元長官は、国際秩序の中でも、特に、アジア太平洋政策に触れています。彼女は、米国のアジア回帰政策に言及する時、「リバランス」という言葉を使用せず、「ピボット」という言葉を使います。アジアに重点を置き、そこにルールに基づいた秩序を回復することを目的とします。念頭には、中国の台頭があり、米国との価値の相違があることを示唆しています。例えば、

 アジアに関して、キッシンジャーは、中国も含め、地域で台頭してくる国々は、自らの歴史及び現在置かれた状況によって形成される地域及び世界秩序に関する自らのビジョンを有する、と述べている。では、我々は、これら異なるビジョンをどう扱わなければならないのか。中国と協力的関係を築きながら、同時に、安定的で繁栄した地域の他の関係、利益、価値を守りつつ、更に大きな世界問題に対処できるかを考えて行かなければならない。

 私の著書“Hard Choices”には、オバマ大統領と私が打ち出したアジア太平洋戦略が描かれている。それは、伝統的同盟関係を強化することを中心に据え、ASEANやAPECなどの様々な地域機構を調整して活用しつつ、中国をより広く関与させることである。二国間では、中国と新たに戦略・経済対話の場を設け、多国間では、地域の圧力によって、中国に、より建設的行動を取るように奨励する。そして、航行の自由から気候変動、貿易、人権までの諸課題に関する共通の意思決定を多国間でして行く。よく知られるようになった、米国の「アジア・ピボット(アジア回帰)」政策は、この地域に、ルールを基礎にした秩序を確立することを目的とする。それによって、新興国の平和的台頭を管理し、普遍的規則や価値を普及することが出来る。

 と述べています。

 2016年の大統領選挙候補として取り沙汰されているヒラリー・クリントン元長官ですが、9月14日のアイオワ州の集会では、大統領選挙への出馬について、「考えている」と述べ、喝采を浴びました。上記の書評も、途中から、まさに、大統領候補の演説を聞いているような調子になってきます。米史上、女性初の大統領が、果たして誕生するのでしょうか。

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