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橋下「見直し」発言について

http://www.asahi.com/articles/ASGBP3RLBGBPPTIL00C.html

ここでは何か、橋下市長が在特会側の主張を聞き入れて、(差別・ヘイトスピーチ防止のために)制度の「見直し」に取り組むことを考えたかのように書いてあるが、もともと橋下氏や維新と在特会とでは、その主張の内容においても、活動のスタイルにおいても、ほとんど違いはないのだから、実際には、昨日の「面談」をいい機会にして、自分が思っている政策を実行に移す、そしてそのことを正当化しているだけであろう。

政策といっても、この人の場合、いや、橋下氏ひとりに限らず、今の日本の多くの政治家に見られる傾向だが、その眼目は、「よりよい社会や制度」を作り出すということではなく、特定の対象、とりわけマイノリティへの攻撃を行うことを通して、権力や権益の確保を図るところにある。

攻撃的な社会が、彼のような政治家を産み出し、彼のような攻撃的な政治家が、さらに社会を攻撃的なものに変えて行く。そして、そのことで国家や資本はより多くの搾取を実現していくのだ。だから、橋下氏の言う制度の「見直し」とやらが、どういう方向のものであるかも、当然察しが付くというものだ。


今回の発言で、橋下氏は、「特別扱いは差別を生む」として、差別やヘイトスピーチの原因が在特会の主張する「在日特権」であるということを、暗に認めている。そう明言せずとも、差別を行いたい者たちに与える、励ましの効果は絶大だろう。

植民地支配の帰結として生じた法的状態を指して「特別扱い」などと呼ぶことが真っ赤な大嘘であることは勿論として、そもそも差別にそれを正当化しうる「理由」などありうるのか?「いじめられる側にも原因がある」という類の暴論ではないかというのが、まともな疑問だと思うが、この人にそんな正論を説いても始まるまい。

橋下氏にとって重要なのは、自分と、彼を支持する人々とにとっての攻撃の目標と材料を、できれば永続的に確保することだ。そのためには、在日が「特別扱い」されており、「在日特権」なるものは実在するのだと、強引に主張する必要がある。こうして、制度が変えられ、特別永住制度を産み出した在日と日本の歴史が、ある意味で消去されることによって、在日の人々は、半永久的に、国民たちから「特別扱い」の負債を要求され続けることになるだろう、「合法的」あるいは非合法の差別という方法によってでも。


ところで、昨日の在特会会長との面談では、橋下市長は、在特側の主張には「理解」を示しながら、その手法だけを批判して、政治の場で「特権」を問題化することを相手に強く迫るかのような態度を示したが、これは自分がこれから行おうとすることを正当化するためであったと同時に、在特会のような「粗暴な」スタイルとは一線を画したイメージを作っておきたかったからだろう。

つまり、一方では、大衆(特に中産層以上だと思われるが)の排外主義的傾向を満足させる極右的政治家というイメージを保つと同時に、自分は街頭でのヘイトスピーチのような下品なことを行なう人間たちとは違うのだという、新たなイメージの確立を図ったのだ。

このことは、大阪市の再開発政策において、都心部から貧困層を排除して、高所得者層を呼び戻そうとする、いわゆるジェントリフィケーションの路線に沿ったものだと考えられよう。貧困層の都心からの排除(浄化)と再開発という、資本や国家の要請を代行する首長として、橋下氏は、ここでは在特会をダシに使って、新たな役割を担うことを宣言したのだと思う。

要するに、橋下氏と在特会とは、共に排除・浄化という資本や国家の要請(特別永住制度に代表される植民地支配の歴史的責任の否認、いわば歴史的不公平性の隠蔽は、その最たるものだと思う)を代行する「汚れ役」という点では同じであり、だからこそ、橋下氏は「面談」によって在特会に広くその主張を世に広める場を与えたわけだが(実際、その宣伝効果は小さくなかっただろう)、今や役者たちには新たな役回りを演じることが要請されており、その要請をいち早く察して、役柄の転換のために在特会をうまく利用したというのが、今回の「対決」の内実だったと思われる。

そして、このパフォーマンスによって、橋下氏は、さらに新たな支持層を獲得したのかもしれない。それは、この日本の社会が、まだそれほど差別的・排外主義的ではなく、良心的な要素を色濃く残しているリベラルな空間であり、自分もそこに帰属していると信じ続けたいと願う人達だ。

こうした人達は、この願望の強さの故に、在特会を「差別主義者」と断じる(そうすることで、橋下氏は、自分の一切の政策や発言が差別的でないと巧妙に印象付けようとしてるわけだが)橋下氏の態度を見て、そこに、日本社会の最後の希望の光のようなものを見出さずにはおれない。これは無論、幻想にすぎない。

だが私は、それを一概に非難しようとは思わない。それほどに、ネオリベや排外主義・植民地主義的反動による攻撃が熾烈であることの、それは証左に他ならないからだ。

ただ、私が憂慮するのは、こうした幻想にしがみつきたい人、そうせざるをえない人たちは、その願望の強さの故に、一度抱いた橋下氏への(そして、この社会への)幻想から抜け出すことが出来ず、橋下氏による排除や浄化の政策を、最終的には、自分たち自身がその対象となるに至るまで、支持し続けるのではないかということだ。

それが、どれだけの悲劇を産み出すか。

だが、それを防ぐ責任は、われわれにあるのだ。

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