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実は難しいワイナリーのオンライン予約システムを構築した「Cellar Pass」

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あなたはワイナリー巡りはお好きだろうか? 生産者やワインの知識が高いホストと直接触れ合い、ヴィンヤードやケーブを見学できるワイナリーツアーやテイスティングの醍醐味は、酒屋さんやネットワインショップで購入するのとは感動のスケールがちがうという。

しかし、実は米国ではワイナリーの見学の予約は、そう簡単にできるものではないらしい。法律の関係でレストラン予約サイトなどでは扱うことができず、直接ワイナリーの営業時間内に電話するなどの手間が必要なのだそうだ。

今回ご紹介する「Cellar Pass」は、そうしたワイナリー訪問の予約を簡単に行えるようにしたサイトだ。500軒以上あるというカリフォルニアのナパバレーのワイナリーを集結させ、彼らの代わりに予約チケットやワイナリーでのイベントチケットの販売などを受け持っている。

その盛況ぶりから、現在はナパのみでなく、近辺のワインカントリーのソノマやハドソンリバー、セントラルコースト、あるいはニューヨークやヴァージニア州のワイナリーも同サイトに登録している人気サイトなのだ。

ワイナリーはレストラン予約サービスが使えない

ワイナリーの見学に訪れる人々の目的は、2oz(約56g)のテイスティングを通して、時間とともに変化する香りや色、味や包容感を吟味し、自分好みのものを発掘し購入することにある。

お酒に酔ったり、食事とのワインペアリングを楽しむことが目的ではないため、1日に数軒ワイナリー巡りをし、お気に入りのボトルを探し求める客もめずらしくない。

しかし米国のワイナリー訪問には、手続きが容易でないという問題があった。同国の法律ではワイナリーはレストランやバーラウンジの適用外。そのため「Open Table」などのレストラン予約サービスでチケットを販売してもらおうとしても、手を出すことができなかったのだ。

そのため、各ワイナリーは自社でオンライン予約システムを構築するか、電話かメールで対応するしかなかった。人気ワイナリーのコンシェルジュたちは、毎年繁忙期の7〜10月は予約への対応に追われ、疲れ果てていたという。

利用者にとっても、手軽に予約できるウェブサービスがないことは、ひどく不便なことだった。たとえばワイナリーの営業時間内に電話を掛ける必要があるが、海外から電話するには西海岸時間に合わせなければならない。

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これらの問題に着目し、ワイナリーを専門に予約やスケジュール管理を受け持つサービスをはじめることを考えたのが、ナパ出身のJonathan Elliman(以下ジョナサン)氏と、Sarah Elliman(以下サラ)氏夫妻だった。

ジョナサンは長年CTO(チーフテクノロジーオフィサー)としてさまざまな会社のサイトを監督してきたエンジニアで、Cellar Passの前に「importedwines.com」を立ち上げたワイン好きでもあった。彼は常日頃から、もっと多くの人に楽しいワインテイスティングの経験をしてもらうためにはどうしたらよいかと考えてサイトの構想を得たという。

2012年に「Cellar Pass」を正式にロンチ。サイトやiOSアプリ上で24時間アクセス可能なチケット販売や予約サービスをはじめるとナパのワイナリーがこぞって登録し、予約やチケット販売を受け持つようになった。

翌2013年にはナパ観光促進団体のVisit Napa Valleyと提携。収益の一部をワイン業界や慈善団体に寄付したり、同団体と協力してワインカントリーの観光活性化にあたるなど、ワインや地方機関の支援にも尽力している。

ワイナリーと利用者のwin-winの関係 ワイナリーがもっと身近なものに

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「Cellar Pass」の特長は、レストラン予約を扱うECサイトと同じような感覚で手軽にワイナリー見学の予約やチケットの購入を行えるようになったことにある。

ワイナリーの訪問を希望する利用者は、トップページのプルダウンメニューから好きなワイナリーを選び、後は表示されるカレンダーより日にちを指定して、予約画面へと進むだけで手続きを完了できる。子供連れでもOKなファミリーフレンドリーワイナリーなのか、グループテイスティングかプライベートテイスティングなのか、条件に合わせての検索も可能だ。

また、リリースパーティーやハーベストパーティーのチケットなどこれまでは投資家やビジネス提携者のみが参加できていたイベントを扱っていることも魅力のひとつだろう。これまでは味わうことのできなかった、ワイナリーオーナーと会う機会や、新ヴィンテージを誰よりもいち早く味わう事のできる機会を得ることができるのだ。

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ワイナリーにとっての利点も多い。日本でも人気のある「Robert Mondavi」を見てみると、価格や所要時間、時間帯から好みのコースを選ぶと支払いまでサイト上で済ませられる形となっている。このシステムであれば、利用者はワイナリー訪問時に別途料金を支払う必要がないし、先に料金を回収しているためワイナリーの金銭的リスクもなくなる。

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Celler Passのお陰で、ワイナリーは自社のウェブサイトに予約システムを搭載するという不慣れな作業から解放された。クレジットカード番号など、デリケートな顧客情報の管理に膨大な手間や人件費を掛ける必要もなくなった。

同サイトでは顧客データをPOSシステムと統合して予約や支払い情報を管理できる他、二重登録も防ぐことができるという。

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ナパのワイナリーの多くは家族経営で、施設や予算を持つ大きなワイナリーに対抗するのは容易なことではないが、そうした小規模なワイナリーに格好のマーケティングツールとマネジメント・サービスを提供できると、ジョナサン氏は話している。

地域全体でワイン事業を盛り上げる

ワイナリー事業が盛んで、同業者同士が力を合わせられるナパの気風も、Cellar Pass発展の大きな味方となったようだ。ジョナサン氏は米国の他の地域でワイナリーが発展するには、いかに地域内の協力を得られるかにかかっていると話す。

"サービスを最大限に有益化するには、地域内の協力が必要なんだ。数百軒登録のあるナパが成功しているように、米国内のワイン地域はもっと多くのワイナリー登録が必要。そうすることでその地域のワイン事業が盛り上がるんだよ"

現在同サイトはナパ観光促進団体Visit Napa Valleyとも提携。12カ国語(日本語を含む)対応のVisit Napa Valleyは、ナパ訪問を考える人のほとんどが立ち寄るサイト。こうしたサイトがCellar Passへの誘導を行っているため、ますますサイトへのアクセス数は伸びていきそうだ。

今年の7月にはSales Forceと提携、CRM方を使った顧客の購買行動や年齢、性別、趣味などの個人の情報を収集し、より効率の良い営業活動を行えるようになった。利用者にとってもますます価値の高いサイトになることだろう。

日本でもワイナリーが並ぶ山梨や、酒三大処と呼ばれる灘、伏見、西条などでこのようなサービスを導入すれば、地域活性化につながりそうだ。国内外問わず、多くの訪問者で賑わうことになるのではないだろうか。

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