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続・中毒事故の集中発生に|危険ドラッグ対策

前記事の続編です。
警察庁が最近行った調査を通じて、「ハートショット」による中毒事故の多発が浮かび上がったわけですが、さて、この調査結果そのものも相当に衝撃的なものです。
<ニュースから>*****
●危険ドラッグで死亡疑い急増…1~9月で74人
危険ドラッグを使用したことが原因で死亡したとみられる人は今年1~9月の間で計74人に上ることが、警察庁のまとめで分かった。

16日の参院厚生労働委員会で明らかにした。2012年の8人、13年の9人と比べて急増しており、同庁や厚生労働省は、危険ドラッグの乱用防止に向け、販売店の取り締まりなどを強化することにしている。

同庁は、遺体近くで危険ドラッグが見つかったケースや関係者の証言などから、危険ドラッグの使用が死亡原因と疑われる事案を集計。都道府県別では、大阪が20人で最も多く、神奈川11人、東京9人が続いた(以下省略)。
読売新聞(YOMIURI ONLINE)2014年10月16日 20時06分
http://www.yomiuri.co.jp/national/20141016-OYT1T50136.html
*****

●改めて見直すたびに跳ね上がる被害の実態

危険ドラッグが日本社会に広まって数年たつのに、この新種の薬物によって具体的にどれほどの危害が生じているのか、なかなか把握されないことは、関係者の多くが長い間気にかけてきました。

世界の先進国でほぼ同時に進行しているこの問題に対して、欧米各国からは現状を把握する為のデータが続々と発信されているのに、わが国では、散発的に報じられる死亡事故や、救急事例の増加などを手掛かりに、動向を推測するしかないという状況なのです。

幸い、2014年に入ってから各機関で被害実態の見直し調査が行われるようになりましたが、新たな結果が発表されるたびに数字は大きく跳ね上がり、私たちを驚かせてきました。

<これまでの発表>

■大阪府内で4~6月の3か月間に9人の死亡事故・・・2014年6月大阪府警発表
大阪府警は、不審死案件について、危険ドラッグとの関連性の調査を徹底するよう指示。2014年4月~6月下旬までの約3か月間で、危険ドラッグの吸引が原因とみられる死亡案件が9件にのぼると発表しました。(なお、その後の発表によると、4~7月末までの間に確認された死亡案件は14件になったということです。)

出典:NHK関西「法律で禁止後も大阪で9人死亡」06月27日 19時10分
■2011年以降40人死亡・・・2014年7月毎日新聞が独自調査
毎日新聞は、全国の警察本部などを対象に、危険ドラッグの被害実態を調査。関係当局が統計を取り始めた11年から2014年6月末までで、

・危険ドラッグの使用が原因で死亡した疑いがある人が、少なくとも7都府県の40人

・危険ドラッグの使用が疑われる救急搬送者数は、全国で少なくとも1415人(搬送されずに健康被害を訴えた人も含む)

と報じました。「統計を取っていない」などの理由で多くの警察本部が回答しなかったため、実際の数字はさらに増えるだろうと記事は結んでいます。

出典:毎日新聞「<危険ドラッグ>11年以降40人死亡 今年急増24人も」7月31日(木)8時0分配信
■2012年~2014年6月末で41人死亡・・・2014年8月国会委員会で警察庁答弁
警察庁は、死亡現場から危険ドラッグが発見されたり、死亡前に錯乱状態だったりした場合など、危険ドラッグの使用が原因と疑われる事案を集計。

・2012年・・・8人
・2013年・・・9人
・2014年上半期(1~6月)・・・24人

出典:衆議院 厚生労働委員会 2014年8月4日  室城政府参考人の発言
■全国の救急搬送、2009年からの5年半で4469人・・・2014年9月総務省消防庁が発表
総務省消防庁は、全国752消防本部の救急活動記録から「ドラッグ」「ハーブ」「合法」「脱法」などのキーワードで検索。「暴れている」「ぐったりしている」など搬送時の状況を踏まえて集計した。

・2009年・・・30人
・2010年・・・85人
・2011年・・・602人
・2012年・・・1785人
・2013年・・・1346人
・2014年1~6月・・・621人

出典:総務省報道発表「危険ドラッグによるものとみられる救急搬送の状況」2014年9月19日
http://www.fdma.go.jp/neuter/topics/houdou/h26/2609/260919_1houdou/03_houdoushiryou.pdf

●中毒事例は、薬物の広がりを把握する指標

新種の薬物が急速に広まった場合、必ずといってよいほど、大量の急性中毒の発生が報告されるため、流行初期の動向を把握するために、救急医療や中毒死のデータは欠かせません。欧米では、新種の薬物が台頭した際には、対策を検討するための基礎資料として、公的機関による中毒報告や、監察医によって判定された中毒死のデータが参照されています。

しかし、わが国では、これまで薬物関連の中毒事故や中毒死が注目されることは少なく、また、新種の薬物がこのように急速にひろまることもなかったため、こうしたデータがきちんと収集される体制が整っていないままです。わが国は、欧米諸国に比べて薬物乱用の状況がそれほど深刻化していない状態が続いたことも、ごく基本的な体制の不備を許してきた背景となってきました。

ところが、いま危険ドラッグという新種の薬物が、予想をはるかに超えた広がりを見せています。

これまで、散発的に報道される限られた事例だけを頼りに、私たちは、日本の危険ドラッグの状況を考えてきたのですが、改めて実態が見直されてみると、日本の危険ドラッグ蔓延は、予期した以上に深刻な状況になっていたのだと知りました。今回の危険ドラッグの広がりは、わが国では、2011年から2012年にかけて急速に拡大したものですが、その当時の蔓延ぶりや、健康被害の実態は、データがないまま過小評価されてきたのではないかと思います。

新種の薬物の流行に漠然とした危険性を感じながらも、危害の実態が把握されないまま、ついつい対策も遅れがちだったのではないでしょうか。

警察や救急隊、救急医療現場、監察医など中毒事故に関わる多様な機関の隅々にまで、危険ドラッグによる急性中毒の知識がゆきわたったのは、ごく最近のことです。それまでの間、重篤な中毒事故や死亡事故さえも、危険ドラッグ使用と結び付けられることなく、見逃されてきたものが少なくないことでしょう。

ずいぶん後手にまわってしまいましたが、薬物による中毒事例のデータ収集と管理の基盤整備に、いまこそ手を付けなければなりません。

これまで比較的平穏な状態にあったために、日本の薬物対策は、とにかく基本的な体制がひどく脆弱なのです。

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