記事

幼児教材の「Kiwi Crate」がハンズオン(実践型)と言われるゆえん

画像を見る

「子供に楽しく学習させたい」という思いは、子を持つ親なら誰しも抱く願望だ。しかし幼児教育が大切だということは分かっていても、どんな教材を用い、どのように子供に教えるべきかについて、なかなか正解を得るのは難しい。

時間的な問題もある。仕事や生活がある以上、子供が一番と思っていても、忙しい毎日に追われて構ってあげることができず、テレビを見せたり、ビデオゲームやおもちゃでのみ、過ごさせてしまうこともある。

今回取り上げる「Kiwi Crate」は、こうした幼児教育に悩んでいる保護者たちに向け、好奇心や創造力を伸ばすための教材を送ってくれるサブスクリプションサービスだ。現在は4〜8歳の児童を対象に、ハンズオン(実践型)なオリジナルキットを提供している。

同サイトを創業したのは、かつては自身が仕事と育児の両立について悩んでいた母親だった。それが子どもの学習意欲を刺激するキットを作ったことがビジネスにつながり、2011年の創業以来700万ドル(約7億6千万円)の資金調達に成功し、大きな反響をよんでいる。

健康的な発達を促すハンズオン(実践型)プロジェクト

画像を見る

Kiwi Crateでは、オリジナルの玩具などが入った、緑色の箱を毎月自宅に届けている。利用者は1回きりの購入か、月ごとの定期購読を選択可能で、定期購読の場合、1ヶ月あたり19.95ドル(約2100円)となる。毎月何が送られてくるか、具体的な内容を伏せているのも楽しみのひとつだ。

画像を見る

2014年10月のテーマは「Wild West」。カウボーイの歴史と彼らの生きた世界を楽しいアクティビティを通して子供たちに学んでもらうことがこのキットの目的だ。内容物は「自分の最高の馬」を作るための「My Hobby Horse」と、カウボーイの仕事を体験できる「My Cattle Roundup」、カウボーイが大陸を横断する内容の本となっていた。

「My Hobby Horse」は紙筒や綿、フェルトで作ることのできるカウボーイの馬に見立てたキット。自身で組み立てて、屋内外でまたがり、カウボーイの馬乗りごっこを楽しんでもらうためのものだ。

画像を見る

「My Cattle Roundup」は、Kiwi CrateのマスコットのSteveが持つ輪の中に牛に見立てたフェルトめがけて、草をイメージしたボールを投げ入れるゲーム。

カウボーイたちは、野生の牛を駆り集め、その牛を売り歩くのが日課だった。このゲームは牛が草食動物であること、カウボーイの仕事がなんであるかを理解しつつ遊べるよう、設定されている。なお、牛のモチーフや首輪のベルをフェルトに貼り付ける作業は子ども自身が行うという。

画像を見る

「explore! magazine」はカウボーイSteveが東へ西へ大陸横断の探求の旅へと出る内容の本だ。道中、古い友人のアルマジロと再会したり、カウボーイの様々な仕事や生活習慣が描かれており、本を通して米国の地理学習体験ができるようになっている。

画像を見る

なお、今年の9〜11月は「タイムトラベラーシリーズ」と銘打たれており、9月は中世へタイムスリップする「お城とカタパルト(投石機)」だった。10月は上でご紹介した「Wild West」。11月はジュラ紀へタイムスリップする「恐竜の発見」というテーマで、粘度を使って化石を作る体験ができるそうだ。

画像を見る

どのキットを見ても、自分で作る、作ったもので遊ぶ、遊んだものの歴史や概要を簡単に学ぶ、というプロセスが用意されている。過去には箱の中に畑を作り、土壌に種を撒くミニガーデンもあり、こちらは実際に発芽し、観察日記につながるようになっていた。

こうした自作のおもちゃを作って遊ぶような行為と、学習を無理なく結びつけている点が、同サイトのキットがハンズオン(実践型)と呼ばれる由縁だろう。

毎月のプロジェクトはすべてKiwi Crateのスタッフと専門家によって研究開発されている。専門家はスタンフォード大学を含む教育機関で26年間科学を教えてきた教授や児童心理学者などだ。

子どもたちは、キットにてアートや科学、歴史、音楽などの知識や考え方に触れつつ、工作や遊びを通して体験学習し、創造力やインスピレーションを伸ばすことができる。就学前後の児童たちに、幅広い興味と好奇心のとっかかりを提示しているのだ。

画像を見る

また、各キットにはそれぞれ上のようなマークがついている。これは「創造」「発見」「運動」「探求」「コミュニケーション」「思いやり」「手先の器用さ」の7つで、そのプロジェクトが子どもにとってどんな発達を促せるか、親が知るための指標だ。

「散らかりメーター」や「関わり合いメーター」というものもあり、こちらはどのぐらい部屋が散らかりそうであるか、どのぐらい親が関与すべきかといった目安を3段階で教えてくれる。親はこれらの目安を元に、学習内容、部屋に与える影響、自分がどの程度関わるべきか、といった判断を行うことができる。

ブログにはそれぞれのテーマに関連する書物の案内もあり、好奇心を持った分野をさらに推し進めるガイドの役目も果たしている。子どもの保護者たちが扱いやすい工夫がなされていることも、同サービスが人気を得る理由のひとつだろう。

自宅のガレージで繰り広げられる研究開発とテスト

画像を見る

(出典:Silicon Beat)

Kiwi Crateの創業者はSandra Oh Lin(以下リン)氏。シリコンバレー郊外のマウンテンヴューに住む2児の母親だ。同氏はHarvard University Business SchoolでMBAを取得、その後eBayやPayPalで新規プロジェクトのジェネラルマネージャーを務めていた。

子供の創造力や好奇心を豊かにしたい、生活していく上で必要な知識を楽しく学んでほしいと願っていたリン氏は、既製品には面白いものが不足していると思い、自分でアイディアを考え、工作マテリアルを調達して、時間を見つけてはクラフトキットやサイエンスキットを作っていた。

これらのキットを友人のママとその子供に自宅パーティーで共有して好評を得、「ビジネスにしてみたら?」と周りから言われたのが創業のきっかけだ。

現在、正社員は16名おり、中にはフルタイムママの姿もある。各キットを世の中に送り出すために厳しいチェックを行うのは、リン氏の愛娘を含めた友人や近所の子供たち40人だ。

オフィスはリン氏の自宅のガレージ。研究開発とテストをする場所として毎日子供と大人で賑わう憩いの場となっているようだ。こうした環境だからこそ子どもが楽しく学べる生きたアイディアが浮かび、つぎつぎと商品化できているのだ。

家庭とビジネスの境界線がなくなった

画像を見る

Kiwi Crateは、これらの成功を受け、今年の9月から新たな3つのサービス展開に乗り出した。

学びはじめたばかりの3〜4歳児に感性を与えることを目的にしたKoala Crate、9〜14歳以上の考える力に焦点をあてた化学実験や工作のマテリアルが豊富なThinker Crate、そして9〜16歳以上の女の子を対象にしたDIY(Do It Yourself)クラフトDoodle Crateだ。ここでも子どもの感性や好奇心を大事にする姿勢は変わっていない。

子供を産んでからも仕事を続けたリン氏は、「何かが違う、何かがおかしい」と感じていたそうだ。仕事中は常に子供の事が気になり、逆に子供と一緒にいるときには仕事のことが頭をよぎる日々を過ごしていたという。

「子どものためのサービス」を実践するようになった今では、家庭と仕事の境界線はなくなった。子供との時間を優先できるライフスタイルを入手したことこそが最大の成功だったと、同氏はthePhenomListのインタビューで語っている。今日もリン氏は、親や子供たちと触れあいつつ、ガレージにて新しいアイディアを生み出していることだろう。

あわせて読みたい

「子育て」の記事一覧へ

トピックス

  1. 一覧を見る

ランキング

  1. 1

    マクドナルド、ワタミの取り組みにヒント?正念場を迎える対消費者ビジネス

    大関暁夫

    04月17日 12:37

  2. 2

    「東京来ないで」発言の小池知事はこの一年何をしてきたのか

    中村ゆきつぐ

    04月16日 08:52

  3. 3

    「お前を消す方法」でお馴染み!? Windows懐かしのOfficeイルカの現在

    文春オンライン

    04月17日 10:38

  4. 4

    電通が「数百万円程度」で作成 批判受け削除の復興庁トリチウムキャラクター

    BLOGOS しらべる部

    04月16日 16:47

  5. 5

    なぜ今なのか-処理水放出と少年法改正

    階猛

    04月17日 09:13

  6. 6

    霞ヶ関は人気のない職場……で良いのか

    大串博志

    04月17日 08:09

  7. 7

    「なぜ受験勉強をしなければいけないか」橋下徹が出した納得の理由

    PRESIDENT Online

    04月16日 16:05

  8. 8

    ブルーライトカット眼鏡への意見書を出した学会に聞く「結局使うべきではないのか」

    BLOGOS しらべる部

    04月16日 16:14

  9. 9

    大阪府民「まん防やなく辛抱ですわ」感染拡大で吉村知事への不満続々

    NEWSポストセブン

    04月16日 12:04

  10. 10

    長期化するコロナ 私たちは本当に「真偽を見分ける」ことができるのか

    新潮社フォーサイト

    04月17日 08:27

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。