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- 2014年10月16日 05:40
国際社会での評判を落としているのは朝日新聞ではなく安倍首相自身
「慰安婦問題の誤報によって多くの人が苦しみ、国際社会で日本の名誉が傷つけられたことは事実だ」
「(従軍慰安婦に関する誤報が)日韓関係に大きな影響、打撃を与えた。記事によって傷ついた日本の名誉を回復すべく、今後努力してほしい。報道機関の責任は重い」
これは朝日新聞による吉田証言の取り消し問題についての安倍首相の発言です。前者は9月11日のラジオ番組で、後者は10月6日の衆院予算委員会で行われました。
しかし、この従軍慰安婦の問題を含めて、国際社会での日本の評判を落としているのは、安倍首相本人ではないでしょうか。「安倍首相とそのお友達によって国際社会で日本の名誉が傷つけられたことは事実だ。それらの言動によって傷ついた日本の名誉を回復すべく、今後努力してほしい。安倍首相の責任は重い」と言わなければなりません。
ときに安倍首相は「価値観を共有する国々」という言葉を口にし、価値観外交を展開しています。その場合の「価値観」とは、自由、民主主義、人権などのことでしょう。
しかし、安倍首相自身はこのような「価値観」を共有しているとは思えません。自由や民主主義を守ろうとする固い決意もなく、人権も人間の尊厳をも尊重しようとしているようには見えないからです。
このような「価値観」を持っていないのに、都合の良い時にだけ「価値観の共有」に言及する。このような二枚舌を使うことによって国際社会での評判を落としているのは、安倍首相自身にほかなりません。
自由について言えば、そのもっとも重要なものは報道の自由です。これは民主主義社会にとっては生命線というべきものです。
しかし、またもやこの生命線を危うくするような愚行が強行されました。一昨日、特定秘密保護法の運用基準と施行日を12月10日とする施行令を閣議決定したからです。
運用基準には「国民の知る権利の尊重」の文言が盛り込まれましたが、具体策は示されず、政府に不都合な情報が隠されてしまうのではないかなど、法成立時に懸念された問題点はそのままで、「チェック機関に十分な調査権限がない」などのパブリックコメントに寄せられ指摘はほとんど反映されていません。専門家からは、「甚だ不十分であり、改定されるべき」(米国家安全保障会議メンバーや大統領特別顧問などを歴任したモートン・ハルペリン氏)や「何を特定秘密にするかは結局、行政の裁量によるという問題点は変わらなかった。恣意的な運用を許す法自体がおかしい」(憲法学者の青井未帆学習院大教授)などの意見や批判が寄せられています。
民主主義について言えば、安倍政権は完全に民意に背を向けています。国民が不安を感じている当面の重要課題は、集団的自衛権の行使容認、消費税の10%への再増税、原発の再稼働、沖縄県辺野古での新基地建設問題です。
これらの重要課題のどれ一つをとってみても、世論調査では賛成より反対の方が多くなっています。その世論を完全に無視して、安倍首相は集団的自衛権の行使容認に向けてガイドライン改定交渉を行って中間報告を出し、消費税についても再増税中止を明言せず、川内原発再稼働に向けての準備を進め、辺野古での新基地建設を強行しています。
これが民主主義の国だと言えるのでしょうか。安倍首相には民主主義とは何かが分かっていないのではないでしょうか。
人権については、従軍慰安婦問題やヘイトスピーチ、ネオナチ団体との関わりなどについての対応が大きな問題を投げかけています。冒頭に引用したように、安倍首相は朝日新聞による吉田証言の取り消しを「慰安婦問題の誤報」だとして、その責任を追及していました。
しかし、吉田証言についての誤報はそのまま「慰安婦問題の誤報」を意味しているのではなく、吉田証言が取り消されたからといって「慰安婦問題」が取り消されたわけではありません。「河野談話」も、国連人権委員会への「女性への暴力特別報告」に関する報告書(クマラスワミ報告)も、10件の慰安婦裁判の確定判決も、アメリカなど7つの国と地域の決議も、どれも吉田証言だけを根拠にしたものではなく、その証言が誤報であったとして取り消されても「従軍慰安婦問題」を無かったことにすることはできません。
慰安婦とされた人本人の証言や様々な証拠によって事実上の性奴隷状態にあったことが実証され、人権侵害が認定され人間の尊厳が踏みにじられたことが明らかであるにもかかわらず、歴史をねつ造したり歪曲したりしてこの問題を覆い隠そうとするところに、安倍首相の人権感覚が明瞭に示されていると言って良いでしょう。安倍首相は「河野談話」の継承を表明していますが、荻生田光一特別補佐は「見直しはしないけれども、もはや役割は終わった。骨抜きになっていけばいい」と述べて、首相の本音を代弁しています。
しかし、国際社会の日本を見る目が厳しくなっているのは、従軍慰安婦問題だけではありません。安倍内閣と極右勢力との不適切な関係についても、大きな疑惑が抱かれているのです。
これについては、毎日新聞10月10日付夕刊の「特集ワイド」が詳しく報じています。そこには「第2次安倍改造内閣への 欧米の冷ややかな視線」という見出しが付けられていました。
そこでは、在特会と山谷国家公安委員長との関係、高市総務相や稲田自民党政調会長とネオナチ団体代表との関係などが取り上げられています。国家公安委員長がヘイトスピーチを繰り返している団体の関係者と親しいなんて、山谷さんは取り締まる側にいるのでしょうか、それとも取り締まられる側にいるのでしょうか。
以前、ニューヨークでの講演で安倍首相は「私を右翼の軍国主義者と呼びたいなら呼んでいただきたい」と居直ったことがあります。この時の首相は、ジョークのつもりだったかもしれません。
しかし、いまや安倍首相は右翼勢力との関係が地続きで、自由・民主主義の価値観を共有していないということに国際社会が気付きつつあります。今となっては「あれは冗談だった」などと言い訳できなくなってきているのであり、ここに日本の評判を落としている最大の問題があると言わなければなりません。
「(従軍慰安婦に関する誤報が)日韓関係に大きな影響、打撃を与えた。記事によって傷ついた日本の名誉を回復すべく、今後努力してほしい。報道機関の責任は重い」
これは朝日新聞による吉田証言の取り消し問題についての安倍首相の発言です。前者は9月11日のラジオ番組で、後者は10月6日の衆院予算委員会で行われました。
しかし、この従軍慰安婦の問題を含めて、国際社会での日本の評判を落としているのは、安倍首相本人ではないでしょうか。「安倍首相とそのお友達によって国際社会で日本の名誉が傷つけられたことは事実だ。それらの言動によって傷ついた日本の名誉を回復すべく、今後努力してほしい。安倍首相の責任は重い」と言わなければなりません。
ときに安倍首相は「価値観を共有する国々」という言葉を口にし、価値観外交を展開しています。その場合の「価値観」とは、自由、民主主義、人権などのことでしょう。
しかし、安倍首相自身はこのような「価値観」を共有しているとは思えません。自由や民主主義を守ろうとする固い決意もなく、人権も人間の尊厳をも尊重しようとしているようには見えないからです。
このような「価値観」を持っていないのに、都合の良い時にだけ「価値観の共有」に言及する。このような二枚舌を使うことによって国際社会での評判を落としているのは、安倍首相自身にほかなりません。
自由について言えば、そのもっとも重要なものは報道の自由です。これは民主主義社会にとっては生命線というべきものです。
しかし、またもやこの生命線を危うくするような愚行が強行されました。一昨日、特定秘密保護法の運用基準と施行日を12月10日とする施行令を閣議決定したからです。
運用基準には「国民の知る権利の尊重」の文言が盛り込まれましたが、具体策は示されず、政府に不都合な情報が隠されてしまうのではないかなど、法成立時に懸念された問題点はそのままで、「チェック機関に十分な調査権限がない」などのパブリックコメントに寄せられ指摘はほとんど反映されていません。専門家からは、「甚だ不十分であり、改定されるべき」(米国家安全保障会議メンバーや大統領特別顧問などを歴任したモートン・ハルペリン氏)や「何を特定秘密にするかは結局、行政の裁量によるという問題点は変わらなかった。恣意的な運用を許す法自体がおかしい」(憲法学者の青井未帆学習院大教授)などの意見や批判が寄せられています。
民主主義について言えば、安倍政権は完全に民意に背を向けています。国民が不安を感じている当面の重要課題は、集団的自衛権の行使容認、消費税の10%への再増税、原発の再稼働、沖縄県辺野古での新基地建設問題です。
これらの重要課題のどれ一つをとってみても、世論調査では賛成より反対の方が多くなっています。その世論を完全に無視して、安倍首相は集団的自衛権の行使容認に向けてガイドライン改定交渉を行って中間報告を出し、消費税についても再増税中止を明言せず、川内原発再稼働に向けての準備を進め、辺野古での新基地建設を強行しています。
これが民主主義の国だと言えるのでしょうか。安倍首相には民主主義とは何かが分かっていないのではないでしょうか。
人権については、従軍慰安婦問題やヘイトスピーチ、ネオナチ団体との関わりなどについての対応が大きな問題を投げかけています。冒頭に引用したように、安倍首相は朝日新聞による吉田証言の取り消しを「慰安婦問題の誤報」だとして、その責任を追及していました。
しかし、吉田証言についての誤報はそのまま「慰安婦問題の誤報」を意味しているのではなく、吉田証言が取り消されたからといって「慰安婦問題」が取り消されたわけではありません。「河野談話」も、国連人権委員会への「女性への暴力特別報告」に関する報告書(クマラスワミ報告)も、10件の慰安婦裁判の確定判決も、アメリカなど7つの国と地域の決議も、どれも吉田証言だけを根拠にしたものではなく、その証言が誤報であったとして取り消されても「従軍慰安婦問題」を無かったことにすることはできません。
慰安婦とされた人本人の証言や様々な証拠によって事実上の性奴隷状態にあったことが実証され、人権侵害が認定され人間の尊厳が踏みにじられたことが明らかであるにもかかわらず、歴史をねつ造したり歪曲したりしてこの問題を覆い隠そうとするところに、安倍首相の人権感覚が明瞭に示されていると言って良いでしょう。安倍首相は「河野談話」の継承を表明していますが、荻生田光一特別補佐は「見直しはしないけれども、もはや役割は終わった。骨抜きになっていけばいい」と述べて、首相の本音を代弁しています。
しかし、国際社会の日本を見る目が厳しくなっているのは、従軍慰安婦問題だけではありません。安倍内閣と極右勢力との不適切な関係についても、大きな疑惑が抱かれているのです。
これについては、毎日新聞10月10日付夕刊の「特集ワイド」が詳しく報じています。そこには「第2次安倍改造内閣への 欧米の冷ややかな視線」という見出しが付けられていました。
そこでは、在特会と山谷国家公安委員長との関係、高市総務相や稲田自民党政調会長とネオナチ団体代表との関係などが取り上げられています。国家公安委員長がヘイトスピーチを繰り返している団体の関係者と親しいなんて、山谷さんは取り締まる側にいるのでしょうか、それとも取り締まられる側にいるのでしょうか。
以前、ニューヨークでの講演で安倍首相は「私を右翼の軍国主義者と呼びたいなら呼んでいただきたい」と居直ったことがあります。この時の首相は、ジョークのつもりだったかもしれません。
しかし、いまや安倍首相は右翼勢力との関係が地続きで、自由・民主主義の価値観を共有していないということに国際社会が気付きつつあります。今となっては「あれは冗談だった」などと言い訳できなくなってきているのであり、ここに日本の評判を落としている最大の問題があると言わなければなりません。



