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大好きな人から結婚のプロポーズ、彼女は幸せな人生を送るはずだった。 - 海老澤剛

2年ほどお付き合いをした彼氏から、誕生日に結婚のプロポーズ、その安堵感と彼氏の心無い一言が招いてしまった20代前半女性の重度のうつ病、それは・・・

■プロポーズから始まった身体の異変


その女性は、高校を卒業後、地元の企業でアルバイトをしていました。彼氏とは、彼女がよく行くとある販売店で店員とお客様という関係から友達となり、やがて彼氏となりました。お付き合いをして2年近くたった彼女の誕生日、彼氏からプロポーズの言葉をもらい、結婚式に向けてアルバイトも頑張ろうとし始めたとき、眠れない状況に始まり、食欲不振や吐き気などの症状が出てくるようになりました。

■彼氏が発した心無い一言とは?


彼女は、この不可解な身体の変化を彼氏に話すと、「気の持ちようだよ!バイトの疲れもあるだろうからゆっくり休みな!」などと優しい言葉を投げかけてくれました。そんな日々が続き、ある日彼氏が彼女に言った一言は、「お前、気持ち悪い!」でした。身体の異変を感じつつも、結婚を楽しみにアルバイトも頑張ってきた、貯金もしてきた彼女にとっては、信じられない言葉、転落のスタートでした。

いままで、両親の前では、“良い子“でいた彼女は、幼少期から貯め続けた怒りを吐き出すかのように、ことある毎に親にキレては過呼吸になりました。そして心身の不安定な状況は悪化し、心療内科で処方された薬を一気に大量に服用したり、2階から飛び降りたりと自殺行為にまで至りました。母親も彼女の行動を常に監視していなければならない状況、母親から私に助けを求めて連絡がきました。

■発症した真の原因は?


母親は、その子が幼少期の頃、ちょっとした注意でも、泣くまで叩いたり、怒鳴り続けていたそうです。父親は、潔癖症で、お友達が遊びに来ると、触れたドアノブなど、全てを拭きまくり、友達を呼ぶことを歓迎しませんでした。

そんな両親を怒らせたくない気持ち、怒られたくない気持ちが、何でも言うことを聞く子、“良い子”を演じさせるようになりました。その子が見せてくれた幼少期の頃のアルバムには、無表情、作り笑顔の写真しかありませんでした。高校時代にはじけ、“不良”とレッテルを貼られるような行動をしつつも、家では“良い子”の姿を見せてきました。

高校を卒業後、地元の工場でアルバイトを続け、彼氏と出会い、そしてプロポーズ。大好きな人と結婚出来る、ずっと一緒に居られる、これで大嫌いな両親とは離れられる。その安堵感で、幼少期から耐え続けてきた、両親への恨み辛み、怒りが一気に爆発してしまったようです。

これは、精神分析学でいう「失敗した防衛機制の身体化と行動化」に相当するもので、自分自身を制御する防衛機制が、衝動や葛藤に対する過剰な抑圧によりコントロール出来なくなり、様々な身体症状や問題行動として表出したものと考えられます。

■対処は、過去からずっと抱え続けてきた怒り苦しみからの解放


彼氏の一言がきっかけで発症した男性恐怖症やその他の抱えている問題をクリアするために、様々なトレーニングをしましたが、その中でも一番のキーは、いままで耐え続けてきた、親に対する怒り、辛さを全て吐き出すこと、それは本来幼少期に経験すべきだった「発達課題の不足」、親との愛着・信頼関係の補完でした。

両親にキレるときは、ただ“ムカつく”“嫌い”といった感情表現だけではなく、幼少期から思っていたことなどの“なんで?”を頑張って伝えること。そして両親は、その言葉を一言一言きちんと受け止めて、当時を振り返って、反省の気持ちを言葉で伝えること、当時不足していた愛情表現、過呼吸で苦しむ彼女の背中を優しくさすってあげたり、涙する彼女を抱きしめてあげたり、愛情の“熱”をきちんと表現することでした。

時間はかかりましたが、気持ちを伝えられた、過呼吸にならなかった、親も理解してくれた、優しくしてくれた、これらの“出来た”を繰り返し、両親との心身の距離感を縮めていくと並行するように症状も落ち着いていきました。

■よい出来事が必ずしも心身によい影響を与えるとは限らない


“緊張がほぐれた瞬間、疲れや痛みが一気に出る“そんな経験をしたことがある方もいらっしゃるかと思います。

抑圧と発散、人は一般的にある程度短期のスパン、日々や週、月の中でバランスを取りますが、長期的なバランスも、“抱え続けたもの”によっては必要なのかもしれません。

【参考記事】
■「7人に1人は職場に相談相手がいない!」間違えやすい部下との接し方とは? (海老澤剛 メンタルヘルスコンサルタント)
http://sharescafe.net/40891876-20140918.html
■終わらないメンタルヘルス対策に終止符を!ストレスチェック義務化の次なる一手は「QCD」 (海老澤剛 メンタルヘルスコンサルタント)
http://sharescafe.net/40608531-20140831.html
■理化学研究所 笹井氏自殺の直接原因を心の病の面から考えると・・・ (海老澤剛 メンタルヘルスコンサルタント)
http://sharescafe.net/40285428-20140810.html
■うつ病を再発させないためのポイントは「症状だけでなく、真の原因に手を打つこと」 (海老澤剛 メンタルヘルスコンサルタント)
http://sharescafe.net/39769732-20140709.html
■AKB48襲撃事件から学ぶこと (海老澤剛 メンタルヘルスコンサルタント)
http://sharescafe.net/39143060-20140601.html

海老澤剛 メンタルヘルスコンサルタント PMP Human Future Consulting代表

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