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予想を超えて成長した「イスラム国」にどう対処すべきか - 岡崎研究所

エコノミスト誌9月13-19日号は、「イスラム国」の性格、それを生んだ背景と中東情勢、欧米による国際的対応の問題点等についての解説記事を掲載しています。

 すなわち、9月10日にオバマ大統領は、テロリストの脅威を除去するために広範な同盟を率い、イラク及び必要あればシリアにおいても「イスラム国」(IS)に対する空爆を実施する用意がある旨表明した。しかし、中東における不安定な政治的な現実を踏まえれば、効果的な作戦を実施するのは容易ではない。アフガニスタンやイラク侵攻では、多国籍軍は早い段階で軍事的な勝利を勝ち得たが、その後の安定した統治システムの確立と治安の確保には失敗した。

 ISの強さは、現在の中東の政治的混迷を反映し、またアサドが自己の存在意義を正当化するためにISを意図的に泳がせたようなシニシズムもIS勢力拡大の原因となっている。その結果として、ISは、今や、他のどのようなテロ集団よりも大きな、充実した装備を有する、資金の豊富な、最も残酷な勢力に成長した。

 これまでのISの軍事行動を特徴付けているのは、非常に忍耐強い戦略であり、シリアとイラクにおいて同時に効果的な作戦を遂行する能力であり、またテロリスト、反乱軍的な技術と通常の戦闘行動を組み合わせた戦闘能力である。ISの標的は、当面は「中東内の敵」であるが、その政治思想、対米憎悪、世界的なジハード遂行の決意からして、いずれは、欧米も標的とするであろう。

 これまでの米国による限定的な空爆は一定の成果を挙げており、今後の一層大規模な空爆実施によりISの機動力や火力を低下させることは可能であろう。しかし、ISの勢力を現在の占領地から駆逐するためには地上軍が必要であり、誰がこのような地上兵力を提供出来るかが問題である。この点ではイラク・クルドの軍事組織“ペシュメルガ”もシーア派民兵組織も頼りにならない。また、ISの駆逐にはイラクのスンニー派部族の協力も必須であるが、これも現在では難しい状況である。

 オバマ大統領の計画のうち最も弱い部分は、シリアにおける対応である。支援すべき反政府穏健派の実態は明確でなく、また直接的にも間接的にもアサド政権を助けることは米国をイラン及びシーア派の支援者と位置づけることになる。従って、シリアにおける行動を効果的にするためには、出来る限り様々な諸国の支援、協力を得ることが必要である。

 今回の対IS作戦は、軍事的にも政治的にも複雑かつ困難な問題であり、オバマ大統領が期限を設けなかったことは正しい。情勢は流動的であり、ISの勢力は驚くような速さで拡大したが、同様な速さで弱まってしまうこともあり得よう。但し、その場合には、反ISの戦線も同様に崩壊してしまうかも知れない。それを防ぐためには、イラクとシリアにおいて、シーア、スンニー、クルド、その他の全ての宗派、民族を含む多数の国民の支持を得られるような将来を描ける「広範な」アプローチが必要である、と述べています。

* * *

 ISの強さ、弱さ、米国を始め西側の対応の難しさを含め、IS問題に関するポイントを網羅的に解説した記事です。

 この記事が述べているように、従来の予想を超えて成長したISをどう封じ込め、最終的に壊滅させるかについて妙手はなく、成果を挙げるには、政治的、軍事的に極めてデリケートな行動が必要となります。シリア領内のISの拠点攻撃を示したオバマ大統領の方針に対する米国主要紙の論評も、一様に、問題の難しさを指摘しています。

 当初はイラク及びシリアに限定されたローカルな脅威として捉えられていたIS問題は、今や国際的な協同行動が必要とされるまでになり、欧米世論もこれを支持しています。ただ、これは、ISによる米国人、英国人捕虜の殺害が大きく影響したものであり、いつまで持続するのかは定かではありません。こうした中、米国は、ISの壊滅を最終的な目的とした戦いに乗り出したわけですが、これは、出口の見えない、長く続く戦いになる可能性があります。

[特集]「イスラム国」を読み解く

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