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アイドルになりたい少女や「関係性の貧困」で孤立する女子高生を狙うJKビジネス=売春目的の人身売買

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 「JKお散歩」は新たな児童売春目的の人身売買

 こうした仁藤さんの指摘を聞いていて、「子どもの貧困」「関係性の貧困」「女性の貧困」を放置する日本社会というのは、個々の子ども、個々の少女たちにとっては本当の意味で信頼できる大人がまったく周りに存在しない日常となって立ち現れるのだなと思いました。「誰も認めてくれない」「どこにも居場所がない」という状態に置かれた少女たちに「居場所」を提供し「承認」を与えるJKビジネスの手口が巧妙であることは仁藤さんが著書『女子高生の裏社会――「関係性の貧困」に生きる少女たち』(光文社新書)の中で詳細にルポしているのでぜひ読んでください。そうした「居場所」も「承認」も裏社会によって偽装されたまったくのニセモノなのだけれど、まっとうなセーフティーネットやまっとうに信頼にたる大人の方は少女たちにまったく手が届いていないことも仁藤さんは著書で指摘しています。

 それから、このJKビジネスを根底で支え動力源となっている男性優位の性暴力日本社会というのもおそろしく根が深い問題なのだとあらためて思い知らされます。このことは、売春や強制労働などを目的とする世界各国の人身売買に関する2014年版の米国務省報告書にも指摘されていて、日本の「JKお散歩」は新たな児童売春目的の人身売買であるし、「援助交際」も人身売買と指摘され、「日本に来る外国人の女性や子どもの中には、到着後すぐに売春を強要される者もいる」、「日本人男性は、東南アジアやモンゴルでの児童買春ツアーの大きな需要源」と批判されているのです。

 私たち「表社会」の教育・行政・「関係性」等のセーフティーネットは、「少女を人身売買する裏社会」の「缶ジュース1本」に負けている

 シンポジウムの司会をしていた雨宮処凛さんが、仁藤さんの著書『女子高生の裏社会――「関係性の貧困」に生きる少女たち』(光文社新書)を読んでいてとても悲しかったのはJKビジネスで働かされている少女が、仕事中に店のスタッフから缶コーヒーを1本差し入れてもらっただけで、その店のスタッフを信頼し切ってしまう事実があることだと言っていました。じつは正確には、「缶コーヒー」でなくて「缶ジュース」と書かれているのですが、仁藤さんの著書に次のように描写されています。

 「お店の人は全然怖くない。見た目はかっこよくはないけど、普通にいい人。ちゃんと心配してくれるし、女の子のことを考えてくれている。寒いときに心配して声をかけてくれたり、『お客さん入りそう?』とか、『少し休憩したら』とか話しかけてくれたりするし、たまにジュースもくれて親戚のおじさんみたいな感じ。頻繁に会うから、いつも間にか隣のおじさんみたいな感覚になっているかな」 ほんとうに彼女を心配していたら、不特定多数の男性とお散歩なんてさせないだろう。店は彼女たちを「商品」として気にかけているだけだ。しかし、レナは「大丈夫?」の一言で自分は心配されているのだと安心し、缶ジュースを一つもらったくらいで喜んでいる。それどころか、「親戚のおじさんみたい」に思うほど、信頼できると思っているようだ。お散歩やリフレで働く少女たちはみな、大人が意図してやろうと思えば、簡単に心をつかむことができる純粋な少女ばかり。「寒いでしょ? これ飲んで温まってね」と缶ジュースでも渡せば、誰でも「いい人」になれる。

【出典:仁藤夢乃著『女子高生の裏社会――「関係性の貧困」に生きる少女たち』(光文社新書)
 私たち「表社会」の教育・行政・「関係性」等のセーフティーネットは、「少女を人身売買する裏社会」の「缶ジュース1本」に、この少女の中で負けてしまっている現実があるのです。ここで負け続けている限り、「子どもの貧困」は「貧困連鎖」となり「女性の貧困」にもつながり、貧困と人身売買・性暴力のスパイラル、そして裏社会の拡大と表社会の腐敗――それは、職場や政治など表世界におけるセクハラの横行とセクハラの受容などにもすでに現れている表社会への地続きの問題でもあると思うのです。「自己責任社会」と「男性優位の性暴力社会」が互いに補完し合うという日本社会の最も醜悪な部分がJKビジネスとして現れているように思います。女性の貧困問題も女性の売春などの問題も果ては女性に対する性暴力そのものまでももっぱら女性の側の自己責任としかとらえず、同時に男性の性暴力の方は容認する傾向が強いという日本社会の現状を変えていく必要があると思います。

 表社会のスカウト、子どもと社会をつなぐかけ橋に

 そして、仁藤さんは著書『女子高生の裏社会――「関係性の貧困」に生きる少女たち』(光文社新書)の最後の章「表社会によるスカウト」のところで、裏社会はJKビジネスを「卒業後」の女性も系列の風俗店で働かせるために、お金や生活に困っている少女を毎日駅前に立ってスカウトしているのに、表社会の側はほぼ何も行っていない現状などを問題視し最後に次のように書いています。

 たとえば、国が雇用労働政策として行っている若年者の就労支援事業には、困窮状態にあって生活が荒れているような若い女性はほぼ来ないといわれる。(中略)誰にも頼れず自分一人でどうにかしようとした結果、「JK産業」に取り込まれていくような少女は、行政や若者支援者が窓口を開いているだけでは自分からは来ないのだ。こうした少女たちに目を向けた支援は不足している。それを承知で、少女をグレーな世界に引きずりこもうとする大人たちは、お金や生活に困っていそうな少女を見つけて、日々声をかけ、出会って仕事を紹介している。(中略)一方、表社会は彼女たちへの声かけをほぼまったく行っていない。社会保障や支援に繋がれない少女たちに必要なのは、「そこに繋いでくれる大人との出会いや関係性」である。関係性の貧困が大きな背景にある中、つながりや判断基準を持っていない10代の少女たちには特にこれが重要だ。(中略)私は、表社会のスカウトに、子どもと社会をつなぐかけ橋になりたい。声を上げることのできないすべての子どもたちが「衣食住」と「関係性」を持ち、社会的に孤立しない社会が到来することを目指したい。

【出典:仁藤夢乃著『女子高生の裏社会――「関係性の貧困」に生きる少女たち』(光文社新書)
国公一般執行委員 井上伸

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