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タレント森永卓郎氏がTV番組でさんざ中村教授の悪口

昨日帰宅して近所の居酒屋さんによった時に、知り合いの人から質問を受けました。関西ローカル番組で伊藤史隆さんがキャスターを務める「キャスト」という情報番組で、自称経済評論家の森永卓郎氏が、ノーベル賞を受賞した中村教授の悪口をまくしたてていたことをどう思うかと聞かれたのです。芸能界は目立ってなんぼの世界かもしれませんが、どうなんでしょうね。

5時前からはじまる番組を見ることなどないのですが、こんな時に役立ってくれるのが、ガラポンです。地上波8チャンネル分のテレビ番組を24時間×2週間(最大120日間)、全番組録画=全録できる録画機です。画像容量を抑えるためでしょうが、ワンセグでの録画で、スマートフォンやタブレット、またPCで見逃し番組を検索して見ることができます。アップルTV経由、AirPlayでテレビで見ると画質が良くないところがすこし残念ですが、なかなかの優れものです。
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ガラポンで確かめるとやはりやっていました。10月8日に放送されたものでした。それにしてもゲスト・コメンテーターが森永卓郎氏と水道橋博士というところで、この番組がエンターテインメント番組だという性格がわかります。

森永氏は、ヘリコプターマネーで日本の経済が立ち直るという説をばらまいていた人です。ちなみにヘリコプターマネーとは、中央銀行、日本なら日銀がどんどんお金を刷って、それを人々に直接ばらまくことです。

夢のような結構なお話ですが、もちろん、それはできません。やろうとすれば法律を変えないと駄目だし、日銀は独立した銀行でなくなります。ばらまいた金の金利などが回収できず、銀行としては破綻してしまいます。

それでも政策として政府が日銀にそうさせる奥の手を使えばどうなるのでしょうか。日本の貨幣が世界から信用されなくなり猛烈な円安となり、国内はハイパーインフレを起こし、最悪は経済が破綻するリスクすらでてきます。そんな危険が潜んでいるから安易にはやらないのです。

たしかにヘリコプターマネーこそが効果があるという説もありましたし、今でもその主張がありますが、それを夢のような政策だと吹聴するところが、経済評論家の頭に「自称」がつきまとう原因でしょう。

森永氏は、日亜化学の見解をなぞるように、青色LEDの発明は、そこで働くみんなでやったことなので、それをまるでひとりでやったかのように主張し、法外な対価を求めたことは間違っていると主張していました。

ひとりでやったと言いはるけれど、お茶を出した人もいただろう、それに日亜では辞める前には1,600万円も年収を得ていた、さらにアメリカに行ったけれど、これといった成果をだしていないと思うとまで言い切っていました。

森永氏は、工場でみんなでワイワイガヤガヤと議論して発明が生まれると信じきっているのでしょうか。それなら社長から一般社員まで貢献度は同じということにまでなってしまいかねません。

芸能界を巧みに生き抜く才覚はあっても、まるで研究や創造の世界を知らないとしか言いようがありません。それに中村教授の年収が成果に対して十分な額を受け取っていたというなら、参考までに、自らがお笑いで稼いだ収入を披露されるのも一興かと感じます。

発明や創造の世界は、人数の足し算が成り立たず、1+1=2ではないのです。しかし、日本は工場の品質改善で成功したために、発明や創造の世界も改善運動と同じだと錯覚してしまっているのでしょう。

問題は、日本の場合、発明に対する評価としての対価にたいする見識や基準が定かでないことです。中村教授も会見のなかで、特許は会社のものであるべきだと発言されており、指摘されていたのは、対価の問題、また日本の場合、そういった発明者が起業できる環境が乏しいことで、普通のサラリーマンとしてしか生きる道がないことでした。

中村教授の特許をめぐる裁判で、最初は要求額よりも大きい600億円、つぎに要求通り200億円、そしてそれよりもはるかに少額の8億円で和解となりましたが、司法も発明の対価に対する基準がないことになります。しかも日本の司法制度の場合は、研究ノートなどを会社から証拠として差し押さえることもできないと中村教授は指摘されているです。

発明の対価に対して、池田信夫さんが確率という視点からこう書いていらっしゃいました。
青色レーザーのような成果が出る確率は、控えめにみても1/10000ぐらいだから、中村氏に投資した5億円の研究開発投資の1万倍、つまり5兆円の資金が必要だ。600億円の利益では、とても採算が合わない。
池田信夫 blog : 中村修二氏の生存バイアス

確かに、リスクを負って投資した会社と利益を折半というのは成り立たない話です。しかし、発明や創造の世界は一般的な確率の問題ではないマジックが存在します。

「青色レーザーのような成果が出る確率は、控えめにみても1/10000ぐらい」だろうとされていますが、ひとりの才能、あるいは複数の才能のある人たちの成功確率はそれよりもはるかに高いのです。その研究者の成功確率が一般より高いことを期待するから、企業も投資します。

その成功対価をどう考え、基準をつくるのかは、それぞれの企業の哲学の問題であり、また社会が、研究するひと、創造する人をどれぐらい資産として考えるのか、また対価に対する制度や契約の問題でしょう。

「みんなでやったこと」という社会主義的で、工業化社会の発想は、創造の世界には向いていません。それで起こってくるのは日本からの人材流出です。そういった才能ある人たちをどう確保するのかの国境を超えた競争は、今後ますます激しくなってきます。

発明の対価については、絶対的な基準を定めることは無理があり、そういった創造的な人材をめぐる市場で、企業が人材を得たり、企業と研究者やクリエーターのウィン・ウィンの関係をどうつくるかの企業と当事者間の問題でもあります。

さまざまな裁判を通じて基準が自然とできあがるのを待つというのも消極的過ぎる、なんらかのガイドラインを示すのも一手かもしれませんが、政府ができることは人材の流動化を促す制度づくりや、そういった研究者やクリエーターに対する投資にインセンティブをつけて研究者やクリエーターへの投資環境を整えることではないでしょうか。

それより、中村教授の発言を断片的につないで、さらにセンセーショナルな印象をつくろうとしているマスコミの取り上げ方がすこし気になります。

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