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<変化するテレビの行く末>テレビは東映や日活や松竹や大映や東宝と同じ道を歩むのか? ‐ 吉川圭三

吉川圭三[ドワンゴ 会長室・エグゼクティブ・プロデューサー]

***

友人と中華料理屋で、こんな話をした。日本映画の近年の栄枯盛衰の話である。筆者は映画関係者でないからこういう話が無責任に出来るのだろう。

「東映」と言えばかつて堂々たる時代劇の会社であった。春日太一(映画評論家)が最近時代劇興亡史の本を書いている。東映は時代劇不振で「任侠もの」へ。さらに「任侠もの」から「ヤクザもの」へ。そして「実録もの」へ。

当時、上手くいかない現実の不条理を解消するように、若者やサラリーマンたちは終夜営業の映画館へ走った。東映はヤクザ映画で不振から回復しつつあったが、映画館はちょっと街の中心から外れた所にあり、ちょっと薄汚れていた。ションベン臭かったりもした。正直、入るのも怖かった。

「実録ヤクザもの」も問題作「仁義の墓場(深作欣二監督・1975)」等で行き詰まる。次の一手が出ない・・・。東映社員・関係者は大変だっただろう。今は、テレビシリーズ「相棒」などや「仮面ライダー」の映画などで息を吹き返している。

「日活」は石原裕次郎や浅丘ルリ子や赤木圭一郎や小林旭や宍戸錠を擁する垢ぬけた青春映画・無国籍映画を作る会社だった。しかしこれも不振によって「ロマンポルノ路線」に転向する。

高校生だった筆者は入りたくてもその映画館には入れなかった。大人びた背の高い友人に切符を買ってもらって1、2度侵入したが、場内の成人男子の言い知れぬ熱気に圧倒された気がする。低予算大量生産だったので若手監督に次々お鉢が回ってきて、後に日本映画界を支える名監督が日活からたくさん生まれたのだが・・・。

しかし、VHSやベータなどの「ビデオデッキ」が普及しアダルトビデオ(AV)の誕生と興隆で、メインターゲットの成人男性観客を著しく減らしてしまう。やがて日活は倒産したのだ。

「松竹」は「寅さんシリーズ」等を量産した。この間、松本清張原作の「砂の器(野村芳太郎監督・1974)」、大林宣彦監督「転校生(1982)」「時をかける少女(1983)」「さびしんぼう(1985)」の尾道3部作、北野武監督衝撃のデビュー作「その男凶暴につき(1989)」等の堂々たるシングルヒットはあったが製作本数はかなり減った。

あれだけ名作を輩出していた「大映」も永田ラッパと呼ばれた名物社長・永田雅一の力が衰えると、ボーリング場等の経営に活路を見出そうとするが、挫折しやがて消滅した。

ただ「東宝」の方針は違った。黒澤明監督や三船敏郎を独立させ製作会社を立ち上げさせて、自社製作を序々に減らして行ったのだ。(その後、黒澤さんや三船さんの会社は事実、上映する映画が作れなくなったのだが)東宝は興業映画館の立地が都市の一等地で条件が良かったので、小屋貸し会社として生き残りを模索していったのであろうか。

もちろん、結果はご存じの通りである。

昨日まで時代劇で大御所扱いされていた大俳優がお呼びでなくなる。モダンな二枚目がセクシーシーンに出なければ仕事がないといわれる。堂々たる大監督がティーンエージャー向きの作品を作れと言われる。

・・・こんなことはあの時代には日常茶飯事に起きていたのかも知れない。

ところで、ここで一つの疑問が湧いてくる。映画を襲ったあの大変化はテレビに起こるのだろうか?

結論から言えば、やはり映画は指向性の高いエンターテイメントなので、ここまでの変化がテレビに急にやってくるとは考え難い。映画は非日常であり起伏が激しいからだ。

一方、やはりテレビは日常的で家庭の中で複数の人間に見られるので「カド」がとれて、制作するテレビ局も玉石混合、織り交ぜてタイムテーブルを組んでいる。「サザエさん」も家庭で家族と見ているからしっくりくるのだ。

だから、一つの路線に拘り「一人コケたら皆こけた。」という状態は起こりにくいのだ。そしてテレビは放送面積が広いので、もし不調な番組が生じたらその番組を機械部品でも取り替えるように変更すればよい。

ただ、気を付けなければならないのは、新しく変えた部品の何分の一かが革新的であったり、傑作で評判がよかったり、世の中を動かすほどの問題作でなければならない点だ。こうやって「自己組織化」し続けていなければならないのがテレビが生き延びてゆく条件かも知れない。

しかし、全ての新番組でなくとも、イノベーション(革新)が待たれるのは間違いないだろう。

日本映画が受けた大変化・大荒波を振り返ると「我々テレビ業界も色々変化があって大変だよ」などと仕事仲間と居酒屋で呟いて場合ではない。変化が当たり前と思って対処していかなければならないのじゃないのだろうか。そう思うのだが。

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