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<川上量生氏が生み出す「ドワンゴの流儀」>独自の「おもしろいこと」を見つけて素早く静かに実行

吉川圭三[ドワンゴ 会長室・エグゼクティブ・プロデューサー]

***

筆者は大学時代は映画製作にのめり込み、その後、テレビ局に潜り込み、ドラマとワイドショー以外のあらゆるジャンルの番組を制作し、スタジオジブリの映画製作過程を横目で見つつ、本を一冊出版することから出版の世界も体験し、ささやかながらその厳しさを知った。

「映画→テレビ→出版」という、メディアバカと言われてもしょうがない状態を経て来たわけだ。

そんな私に今年9月1日突然辞令が下った。

「吉川よ。ドワンゴに行け。」

ドワンゴ。成長しつつある新興ネット企業である。10月1日に角川書店との合併も控えている。私は一応、理科系でありコンピュータも使えるので対応できると思った。

これでいよいよ「4メディア制覇」などとさえ思っていた。しかし、実際には、ネットとテレビは似ているようで流儀が全然違う。会社に利益をもたらすためには、色々研究が必要だ。研究・・・と言っても私の場合「本を読む」が基本的な手法である。

迷った末、手に取った本は、ドワンゴ会長・川上量生「ルールを変える思考法」(KADOKAWA)。

この本は、一見、普通のビジネス本に見えるが、ゲーム・ネットの歴史、その中で川上量生のやってきたこと、コンテンツに対する考え方、ネットビジネスのありかた・・・等が読みやすい文章で綴られている。

川上さんは京都大学工学部化学科卒業後、ソフトウェアの商社に就職するが、その後、会社が倒産。(結構苦労人であると推測できる)一説には父親の退職金を借りてPC通信用の対戦ゲームの会社としてドワンゴを設立。携帯ゲームや着メロのサービスを始めるが07年「ニコニコ動画」を開始。その後も「ニコニコ超会議」や「ブロマガ」等を始めている。

この本のなかから気になる章の題名を上げる。(中身紹介は長くなるので割愛します。)

  • 「ニコ動で考えたのは長期の勝負でYouTubeに勝てるか?」
  • 「簡単に越えられる山なら、その先は血みどろの市場(地獄)」
  • 「外からエネルギーを得続けられるサービスをつくる方法」
  • 「真のヒットは‘説明できないもの’から生まれる」
  • 「儲けをかんがえないのは‘道徳’ではなく‘科学的結論’だ」
  • 「未知の仕事は予算に縛られず、やりながら学んでゆく」
  • 「‘企画’そのものでなくその企画をやりたいという人間を信じる」
  • 「新しいことをやるときは人に説明しない」
  • 「‘二つの世界’をしっている人間がいちばん強い」

など。

表題の文章の中身は解りやすく面白い。本を読了したときに感じたのは、ドワンゴが「清水の舞台から飛び降りる」様な事業を何度も行って来たことだ。川上さんは何度も反対意見の嵐の中でそれを実行に移さなければならなかった様だ。川上さんがいくら通常ルートを好まないある種のひねくれ者的行動をする人物とは言え、ただギャンブル的にやってきただけとは言い難い。それは側にいるとわかる。

川上さんはコンピューターのことから、脳のこと、世界情勢、歴史まで森羅万象について知識を持っているが、その知識に縛られることがない。柔軟だ。

将棋に淫するだけあって3手4手先まで読んでいることが多い。持前の明るさとソフトな対人関係。しかし断固たる意志を示すこともある。まだ出社1か月ちょっとだが今のところこんな印象を持つ。

ネット業界の流れの早さは、テレビ業界どころではない。しかし、他の会社の動向ばかり気にしすぎていると、流されて自滅してしまうのが関の山だ。澄んだ目で独自の「おもしろいこと」を見つけ素早く静かに実行してゆく。

まだ働き始めて短いが、これがドワンゴの流儀の様に思える。

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