記事

面白い大学のつくり方対談VOL.3 白河桃子×常見陽平:「家、学校、バイト」で終わる学生生活をこえて

画像を見る

10月9日に開催する千葉商科大学国際教養学部のシンポジウム「面白い大学のつくり方 ~明るく、楽しく、自由に考える 大学の未来会議~」に向けた、大学のあり方をめぐる対談第三弾は、少子化ジャーナリスト、作家、相模女子大客員教授の白河桃子さん。白河さんとは、何度も対談しており、今回も意気投合し、盛り上がりを見せた。さっそく対談内容をお届けしよう。

なお、第1回、第2回はこちら。
面白い大学のつくり方対談VOL.1 酒井穣×常見陽平:「起業を卒業要件に」
http://blogos.com/outline/95315/

面白い大学のつくり方対談VOL.2 レアジョブCEO加藤智久×常見陽平:「自らレールを敷く人生」を応援する
http://blogos.com/outline/95763/

■忙しい大学生 就活がなくても家、学校、バイトの3地点で終わる青春

常見:もし白河さんがある大学の学長になったら、どんな大学を作りますか。

白河:学問を追求したい学生には、そのための環境を整備したいと思います。しかし一方で、とにかく「食いっぱぐれたくない」学生のために、「学校でお金稼げるよう」な仕組みを作りたいと思います。なぜなら今の学生には、「金銭的余裕」が見られないからです。それは都内の一般に「お嬢様学校」と呼ばれる女子大学でも同様です。バイトに追われて、勉強どころではない学生が本当に多いです。忙しいから「クラブ活動」もしていないので、「学生らしい」楽しいことも体験できず、大学生活が終わってしまいます。また親に金銭的余裕がない学生は、下宿せず実家に住んでいます。通学時間が長く、そういった学生の多くは「家、学校、バイトの3地点」で青春が終わってしまっていて、とてももったいないと思います。

常見:まったく同感です。人事をしていた00年代半ばからそんなことを感じていました。2010年から大学の非常勤講師をしていて、学生と近い距離にいるわけですが、そう感じます。よく一般的に言われる「就活の早期化・長期化が学業を阻害している」という論がありますが、その前に、そもそも就活がなかったとしても、学生には時間的余裕がなくなってきています。例えば、アルバイトの「切実度」です。学生生活を送るために、アルバイトを「せざるを得ない」層が増えていると言われています。大学生協の調べによると「仕送り・小遣い」はあらゆる所得階層において、2001年から現在にかけて減っています。「家、学校、バイトの3地点で終わる青春」は、今の大学生の実情を表していると言えると思います。

白河:さらに付け加えるのならば、今の学生を理解する上で、「忙しい」というのはキーワードになると思います。実家通いならば、通学時間がまずかかります。お金を稼ぐためにバイトをしなければいけません。大学での単位取得のために、出欠確認が厳しくなっているので、必ず学校に行かなければなりません。加えてやる気のある学生は、様々な学外活動に参加しています。どの学生にも「時間が足りていない」と言えます。

常見:明確に学生の行動力が「二極化」しています。大学生は「就活だけで忙しい」というのはウソでその前に、「掛け持ち」により忙しくなっています。サークルをやっている学生ならば、一つだけではなくスポーツ系や勉強系を掛け持ちして、さらに積極的にインターンに参加しています。サークルなどに加入していなくても、そもそも大学生活自体にかかる時間が増えていないか、と。

白河:「忙しい」といっても「掛け持ち」学生は心配がいらないですね。やる気も能力も高いので、就職活動を順調にこなすことができます。問題なのは、「家、学校、バイトの3地点」の学生生活を送っている学生です。バイトに時間を取られて遊ぶ暇もなく、授業も疎かになりがちです。学外で突き詰めてやっていれば、講義でなくても成長していくので問題ないのですが、「3地点」の学生は学外活動がバイトのみです。就活で問われるガクチカ(学生時代力を入れたこと)が居酒屋、コンビニ、カフェバイトだけでは、どうしてもアピールが弱くなるので、もったいないと思います。またバイトで接する上司も「正社員」ではなかったりします。

常見:学生時代に積むべき経験ができないために、就活を含めたその後の人生で損をしてしまうということですね。金銭面の不安のために、バイトに追われている学生を、大学が制度的に救うことは可能なのでしょうか。

白河:できれば「学業に近いところ」でお金が稼げれば理想的ですね。具体的には専門性を生かして、インターンシップで給与をもらったり、女子大生のマーケティング調査に協力するなどの方法がありますね。大学という仕組みの中で、先生が企業との接点になって、何かプログラムを行う形がよいと思います。例えば、企業と一緒に商品開発することによって、学生がお金を得られる仕組みがあれば良いと思います。学内にベンチャーのオフィスを誘致して、その代わりに学生がそこでバイトできるとか。

■「希薄化」する学内での関係性

白河:私の学生時代は、「学生生活=クラブ活動」という印象でしたので、それと比較して考えると「クラブ・サークルを活動していない学生」の多さに驚いています。

常見:大学の構造上の問題として、新入生歓迎の頃にうまくサークルに入れなければ、その後に入るチャンスがないので「ぼっち」になってしまう可能性が高いと言えます。そして限られた新入生歓迎の期間の中で、「周波数が合うサークル」を探すことは、難しいです。

白河:サークル活動は、「ハマらない」とつらいですね。特に女子大は大学の規模が小さいので、サークル数は少なく、サークル内の人間関係も濃いです。サークルに「ハマらない」と、大学の中に居場所がないということにもなりかねません。

最近、女子大で教えていて感じるのは、「生徒同士の関係性の希薄さ」です。ある女子大で、「自分達で企画し、発信する」という課題を与える授業を受け持った時に、一つのグループが「イベントをやりたい!」と言い出しました。しかしイベントをやった結果、実は「同じ大学の人でもあまりしゃべったことがない」ことが発覚し、驚きました。

また違う女子大では、「この大学を良くするには企画を考えなさい」という授業課題において、「先輩と話ができるようにする」という案が出ました。しかしその大学には「メンター制度」があり、就職活動前に年の離れた社会人OGと話せる制度が既にありました。しかし彼女たちの指す「先輩」は、社会人OGではなく、「年の近い在学中の先輩」だったのです。本来、年の近い先輩とはサークルやゼミでの交流があるように思えるのですが、なかなかうまく交流できていないのが実状のようです。

常見:「ソーシャルメディアで、誰でも会える時代」と言われていますが、ソーシャルを使いこなせるのは、「優秀な前のめりの学生」だけですね。「同じ学科の学生とさえ、うまく話せない」や「小さい大学でも、違う学科だったら知らない」といった事例が多いようですね。

白河:「内定者の話を聞く」というインタビューの課題を与えても、「先輩を知らないです!」という2年生ばかりです。
この学生生活をしている上で、かつては形成されていたはずの「学内人脈」が無いことに驚いています。何か「仕組み」が必要だと思います。

常見:「学内人脈をいかにデザインするか」ということが今の大学の抱える一つの課題ですね。

■「お金をきちっと稼げる」資格と「掛け算」できる専門性を大学で手に入れよう

常見:これからの大学には何が求められていくでしょうか。

白河:私は上位ではない大学に関しては「お金をきちっと稼げる」資格を取れることが、重要だと思います。

常見:資格の中でも、「お金をきちっと稼げる」というのがポイントですね。

白河:「お金にならない」資格はほかでもでとることができます。専門学校の卒業生でも、資格を生かさず普通にアルバイトをしている人も多くいます。「お金をきちっと稼げる」資格取れるならば、専門学校では得られない人脈、知見といったものが得られる大学は大変魅力的だと思います。なぜなら人脈や知見が、資格に「広がり」を持たせてくれる可能性があるからです。

常見:なるほど。また関連した話として、大学は「資格」を取得する場所である一方で、「専門性」を磨く場所であるとも言われますが、いかがでしょうか。

白河:私は「専門性とは何ですか」と尋ねられた時、「専門性は掛け算」という話をします。例えば専門性として、「英語」単体ではダメだと思います。例えば、英語が堪能な上に「歴女」で、地元の武将の話を、英語で説明できるという、「英語×歴女」の専門性の掛け算は「稼げる」可能性があると思います。

しかし10年後、20年後、何ができればきちっと稼げる、誰もわかりません。「掛け算」していけば、何とか生活していけるかもしれないということです。

常見:なるほど。「掛け算」の一つになるものを、職についた後も、学び続けることが大切ですが、その土台を大学で養えるカリキュラムになっていれば、そこに大学の価値を見いだせると思います。

■「自分の頭で考える」授業を設計する

常見:白河さんがずっと提唱されている「就・妊・婚」の現実を伝えていくことは、やはり重要ですよね。

白河:そうですね。しかしまだまだ伝えきれていないです。
就職しても、結婚で辞めないといけないと思っている学生が多いですし、「働く」という選択肢を捨てている学生もいます。一方でバリバリ働きたいと思っている学生も、30を歳越えてからの「イメージ」が描けていません。そういった学生たちには、若い社会人をロールモデルとして授業で見せるようにしています。また「将来のイメージを描かせる」授業の手法で効果的だったのが、「未来インターン」ですね。

常見:「未来インターン」とは何だかワクワクするタイトルですね。どのようなプログラムなのでしょうか。

白河:「未来インターン」は凝り固まった認識を「揺さぶる」ことが大きな目的のプログラムです。30年後の未来について、情報を与えつつ考えてもらう。その過程で「未来は変わる」ということを感じてもらい、既存の認識を解きほぐしていきます。次に自分のことを考えるのは難しいので、「ペルソナ」という仮想のキャラを設定して、その「ペルソナ」の歩む人生の「良いシナリオ」と「悪いシナリオ」を考えてもらいます。昼メロばりの転落のシナリオを考え出す、女子大生の想像力はすごいですね(笑)。それから最後に肝心な「自分」のことを考えてもらうのが「未来インターン」です。自分のことを考えるのは、やはり難しいのですが、「世の中は変わっていく」という認識を授業により持ってもらえたようです。授業レポートには、「未来は見ないようにしていましたが、具体的に考えられるようになりました」という趣旨のことが多く書かれていました。「自分の頭で考える」ことの重要性を再確認した瞬間でしたね。

常見:「自分の頭で考える」ことは本当に大切ですね。いきなりは難しいので「補助輪付で考える」機会を大学が提供できればよいですよね。

白河:そうです。「講義=補助輪」が必要で、そこをうまく設計できるかどうかで、実りのある授業になるかが決まると思います。ケースメソッド教授法をKBS(慶應大学ビジネススクール)で学んだのですが、「女性のライフイベント込みのキャリア」のケースを開発すれば、ケースメソッドも多いに有効だと思いました。

常見:ありがとうございました。

白河 桃子
少子化ジャーナリスト・作家・相模女子大学客員教授
経産省「女性が輝く社会のあり方研究会」委員
昭和女子大女性文化研究所 特別研究員
NPO法人 全国地域結婚支援センター理事
長野県大町市 定住促進委員

東京生まれ、雙葉学園、慶応義塾大学文学部社会学専攻卒。
婚活、妊活、女子など女性たちのキーワードについて発信する。山田昌弘中央大学
教授とともに「婚活」を提唱。婚活ブームを起こす。女性のライフプラン、ライフスタイル、キャリア、女性活用、不妊治療、ワークライフバランス、ダイバーシティなどがテーマ。妊娠の知識とキャリア教育を合わせた「産むと働くの授業」を齊藤英和氏(国立成育医療研究センター)とともに行っている。
著書:「婚活症候群」「女子と就活」「格付けしあう女たち」「産むと働くの教科書」など。

なお、当日の模様はニコ生での配信が決定。
ぜひ、ご覧頂きたい。

あわせて読みたい

「大学教育」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    緊急事態宣言できない理由を考察

    長谷川一

  2. 2

    マスク配布への攻撃はお門違い

    青山まさゆき

  3. 3

    朝日は布マスク記事を撤回せよ

    青山まさゆき

  4. 4

    BCG接種 コロナ予防の仮説に注目

    大隅典子

  5. 5

    パチンコ屋は警察が閉店指示せよ

    水島宏明

  6. 6

    マスク配布案が通る国家の滑稽さ

    井戸まさえ

  7. 7

    俺の子産んで 志村さんが依頼か

    NEWSポストセブン

  8. 8

    よしのり氏 なぜコロナを恐がる?

    小林よしのり

  9. 9

    97人感染受け小池都知事が危機感

    AbemaTIMES

  10. 10

    マスクせず批判浴びた議員が本音

    山下雄平

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。