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- 2014年10月02日 22:23
米国のガス自由化の実状 ~ 家庭用ガス料金は低下していない
LNG・国産天然ガスによる都市ガス事業(一般ガス事業)や、LPガスによる団地ガス事業(簡易ガス事業)の小売全面自由化・料金規制撤廃を企図している経済産業省は、総合資源エネルギー調査会のガスシステム改革小委員会において、諸外国の例を参照しながら、制度変更案の検討を進めてきている。
本年9月5日の第13回目の同小委員会で提示された資料「海外のガス事業の状況」では、一例として米国のガス自由化の動向に関するものが記されている。私にしてみれば、ここで示された内容は、『ガス自由化の効果が殆どない米国ガス市場の実状』であるように思えてならない。
第一に、資料「海外のガス事業の状況」のp24では、次のように記述している。
<参考1> リンク先を見る
(出所:http://www.meti.go.jp/committee/sougouenergy/kihonseisaku/gas_system/pdf/013_04_00.pdf のp25)
第二に、資料「海外のガス事業の状況」のp27では、主要各州の供給者変更の状況として、次のように記述している。
第三に、資料「海外のガス事業の状況」のp25では、小売料金の動向として、次のように記述している。
<参考2>
リンク先を見る
(出所:http://www.meti.go.jp/committee/sougouenergy/kihonseisaku/gas_system/pdf/013_04_00.pdfのp26)
また、日本エネルギー経済研究所は、2008年7月29日の総合資源エネルギー調査会都市熱エネルギー部会制度改革検討小委員会(第1回)において、米国ではガス自由化によっても「小売価格低下という目的は達成できていない」と報告している。参考3を参照されたい。自由化を実施した州であるカリフォルニア州、ニューヨーク州、ジョージア州の1990~2006年での小売価格などの推移が掲載されている。
2006年は今から8年前であるが、それ以降、ガス自由化は進展してないと推測される。資料「海外のガス事業の状況」のp25で「2008年以降には各州とも値下がり基調に転じている」と断言する経産省事務当局は、2006~2013年について、参考3で掲げられている3州の家庭用価格などの推移を示すべきである。
<参考3>
リンク先を見る
(出所:http://www.meti.go.jp/committee/materials2/downloadfiles/g80729b08j.pdf のp10)
上記の参考3の出所である日本エネルギー経済研究所の資料においては、次のようなことも併せて報告されている。
〇「自由化の目的は、競争原理を導入することにより、①小売価格を低下させる、あるいは低下する可能性を増やす。②需要家の選択肢を拡大する。」(同資料のp5)
〇「ニューヨーク州やカリフォルニア州では家庭用を自由化していると分類されているが、一定規模以上の需要家グループ形成が前提となっている。」(同資料のp8)
〇「LDCの小売料金は、規制。(原価+利益)」、「コモディティ料金は、実費全額を需要家の小売価格にそのまま転嫁。(ハワイ州を除く)」、「マーケターの小売料金は非規制。」、「ガス調達価格(City-Gate価格で代表)の上昇にともない、家庭用小売価格も上昇する傾向。」(同資料のp10)〔註:LDCとは「ガス配給事業者」、マーケターとは「自らはパイプラインを所有せず、託送を利用して天然ガスの調達、再販売を行う事業者」をいう。〕
同資料では更に、自由化を実施しているニューヨーク州とカリフォルニア州の規制当局の見解と、自由化を実施していないコネティカット州の規制当局の見解を、それぞれ次の通り掲載している。
≪ニューヨーク州、カリフォルニア州≫(同資料のp9) ●多くの家庭用需要家はLDCのサービスに慣れ親しんでおり、マーケターとLDCの小売価格に大きな差異がないことから、マーケターからの供給に切り替えるインセンティブがない。
●マーケターにとっては、需要家1件当りの販売量が小さい家庭用需要家は、ピークの冬期以外の消費量が少ないこともあり、コモディティ部分で利益をあげにくい。したがって、家庭用市場で大きな利益を得ようとすれば、多くの需要家を獲得する必要があるが、そのためには多額の費用が必要であり、経済的に成立しにくい。
≪コネティカット州≫(同資料のp12)
家庭用の自由化を行わなかった理由として、次のような点を挙げている。
●自由化を行う場合、最終供給保障用にLDCとマーケターの両者がパイプライン容量を重複して保有することになる。同州はパイプラインの容量に余裕がないことから、安定供給の確保を前提とするとマーケターに十分なパイプライン容量を割当てることができず、不十分な競争しか導入することができない。(※連邦法により、倒産したマーケターが保有していたパイプライン容量は差押えの対象となり、LDCがそれを利用して即座に代替供給を行うことができない。)
●マーケターによる、不公正な商取引(強引な勧誘・覚えのない契約の締結等)に対する懸念がある。
以上のことからわかるように、米国においても、家庭用ガス小売自由化は未だ実験途上の段階にあるということだ。これまでの米国のガス自由化開始からの経過を見ると、家庭用小売価格が原料調達価格の上昇を抑制しているとはとても言えない。
経産省が進めたがっている“ガスシステム改革”の目的は、『競争の活性化による料金抑制』であるが、ガス小売自由化をしても、原料価格の上昇とともに、家庭用小売価格も上昇し、ニューヨークやカリフォルニア州と同様に、「価格低下という目的は達成できていない」ことになる危惧は非常に大きいと思われる。
ガス料金値上げは消費者不利益を増大させる。そのようなことが起こる蓋然性の高い“ガス料金規制撤廃”をすることは、「システム改革」の名に値する道理はない。ガス料金値上げに対する家庭用消費者に係る保護策として、ガス料金規制を引き続き課していくべきだ。
本年9月5日の第13回目の同小委員会で提示された資料「海外のガス事業の状況」では、一例として米国のガス自由化の動向に関するものが記されている。私にしてみれば、ここで示された内容は、『ガス自由化の効果が殆どない米国ガス市場の実状』であるように思えてならない。
第一に、資料「海外のガス事業の状況」のp24では、次のように記述している。
―― 小売部門については各州が規制権限を有しており、自由化の度合いは州毎に対応が異なる。家庭用の小売参入全面自由化を実施しているのは、8州となっており、そのうち家庭用の切替率1%以上の州が4、1%未満の州が4である ――これを視覚化したものが参考1で、米国ガス市場は、自由化が進んでいる州が少ないだけでなく、自由化された州であっても自由化の効果は殆ど顕れていないことが容易に見て取れる。
<参考1> リンク先を見る
(出所:http://www.meti.go.jp/committee/sougouenergy/kihonseisaku/gas_system/pdf/013_04_00.pdf のp25)
第二に、資料「海外のガス事業の状況」のp27では、主要各州の供給者変更の状況として、次のように記述している。
―― 小売参入を全面自由化した州の供給者変更率を見ると、ニューヨーク州では供給者変更率が上昇してきており、近年では20%程度(90万件弱)まで達している。一方でカリフォルニア州では供給者変更率がわずかに上がっているものの、1%程度(14万件弱)に留まっている ――これでは、小売全面自由化によっても、ガス市場は、50州のうちの1州を除き、消費者の選択は拡大し難い市場であることを示しているとしか解せない。
第三に、資料「海外のガス事業の状況」のp25では、小売料金の動向として、次のように記述している。
―― 全米及び主要各州のシティゲート価格((略)実質的な卸価格)及び家庭用、産業用小売価格の経年変化を【図表36】に示す。自由化を実施している州(ニューヨーク州及びカリフォルニア州)と自由化を実施していない州(テキサス州)ともに2002年から2007年頃にかけて平均して上昇傾向である。これは原料費そのものの値上がりによるものとされる。その後、2008年以降には各州とも値下がり基調に転じている ――上記のうち、家庭用小売価格については、参考2を参照されたい。私には、自由化しているニューヨーク州及びカリフォルニア州とも、家庭用ガス小売が自由化されて以降、シティゲート価格と家庭用小売価格の間に見られる近年の乖離は、『ワニの口』のように拡大しているように見える。
<参考2>
リンク先を見る
(出所:http://www.meti.go.jp/committee/sougouenergy/kihonseisaku/gas_system/pdf/013_04_00.pdfのp26)
また、日本エネルギー経済研究所は、2008年7月29日の総合資源エネルギー調査会都市熱エネルギー部会制度改革検討小委員会(第1回)において、米国ではガス自由化によっても「小売価格低下という目的は達成できていない」と報告している。参考3を参照されたい。自由化を実施した州であるカリフォルニア州、ニューヨーク州、ジョージア州の1990~2006年での小売価格などの推移が掲載されている。
2006年は今から8年前であるが、それ以降、ガス自由化は進展してないと推測される。資料「海外のガス事業の状況」のp25で「2008年以降には各州とも値下がり基調に転じている」と断言する経産省事務当局は、2006~2013年について、参考3で掲げられている3州の家庭用価格などの推移を示すべきである。
<参考3>
リンク先を見る
(出所:http://www.meti.go.jp/committee/materials2/downloadfiles/g80729b08j.pdf のp10)
上記の参考3の出所である日本エネルギー経済研究所の資料においては、次のようなことも併せて報告されている。
〇「自由化の目的は、競争原理を導入することにより、①小売価格を低下させる、あるいは低下する可能性を増やす。②需要家の選択肢を拡大する。」(同資料のp5)
〇「ニューヨーク州やカリフォルニア州では家庭用を自由化していると分類されているが、一定規模以上の需要家グループ形成が前提となっている。」(同資料のp8)
〇「LDCの小売料金は、規制。(原価+利益)」、「コモディティ料金は、実費全額を需要家の小売価格にそのまま転嫁。(ハワイ州を除く)」、「マーケターの小売料金は非規制。」、「ガス調達価格(City-Gate価格で代表)の上昇にともない、家庭用小売価格も上昇する傾向。」(同資料のp10)〔註:LDCとは「ガス配給事業者」、マーケターとは「自らはパイプラインを所有せず、託送を利用して天然ガスの調達、再販売を行う事業者」をいう。〕
同資料では更に、自由化を実施しているニューヨーク州とカリフォルニア州の規制当局の見解と、自由化を実施していないコネティカット州の規制当局の見解を、それぞれ次の通り掲載している。
≪ニューヨーク州、カリフォルニア州≫(同資料のp9) ●多くの家庭用需要家はLDCのサービスに慣れ親しんでおり、マーケターとLDCの小売価格に大きな差異がないことから、マーケターからの供給に切り替えるインセンティブがない。
●マーケターにとっては、需要家1件当りの販売量が小さい家庭用需要家は、ピークの冬期以外の消費量が少ないこともあり、コモディティ部分で利益をあげにくい。したがって、家庭用市場で大きな利益を得ようとすれば、多くの需要家を獲得する必要があるが、そのためには多額の費用が必要であり、経済的に成立しにくい。
≪コネティカット州≫(同資料のp12)
家庭用の自由化を行わなかった理由として、次のような点を挙げている。
●自由化を行う場合、最終供給保障用にLDCとマーケターの両者がパイプライン容量を重複して保有することになる。同州はパイプラインの容量に余裕がないことから、安定供給の確保を前提とするとマーケターに十分なパイプライン容量を割当てることができず、不十分な競争しか導入することができない。(※連邦法により、倒産したマーケターが保有していたパイプライン容量は差押えの対象となり、LDCがそれを利用して即座に代替供給を行うことができない。)
●マーケターによる、不公正な商取引(強引な勧誘・覚えのない契約の締結等)に対する懸念がある。
以上のことからわかるように、米国においても、家庭用ガス小売自由化は未だ実験途上の段階にあるということだ。これまでの米国のガス自由化開始からの経過を見ると、家庭用小売価格が原料調達価格の上昇を抑制しているとはとても言えない。
経産省が進めたがっている“ガスシステム改革”の目的は、『競争の活性化による料金抑制』であるが、ガス小売自由化をしても、原料価格の上昇とともに、家庭用小売価格も上昇し、ニューヨークやカリフォルニア州と同様に、「価格低下という目的は達成できていない」ことになる危惧は非常に大きいと思われる。
ガス料金値上げは消費者不利益を増大させる。そのようなことが起こる蓋然性の高い“ガス料金規制撤廃”をすることは、「システム改革」の名に値する道理はない。ガス料金値上げに対する家庭用消費者に係る保護策として、ガス料金規制を引き続き課していくべきだ。



