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- 2014年10月02日 23:03
香港騒乱を北京政府の視点から考える
2017年の行政長官選挙をめぐり、中国の全人代常務委員会が推薦する候補者から行政長官を選ぶという「中国の特色ある民主選挙」を北京政府が押し付けてきたことに対して、香港で強い反発が起きている。
これに対する北京政府の反応。
北京政府が恐れるストーリーは2つ。
①国内の民主化運動の再燃。
香港の民主化運動が飛び火し、1989年の天安門事件以来の国内の民主化要求運動が再燃する事態は避けたい。
例えば、次のようなニュースは北京を大いに苛立たせるだろう。
(改革開放政策により、イデオロギーが事実上瓦解した共産党に正統性を求めることはできない。.....よって、中国共産党を殺したのは鄧小平である、とする中西輝政氏の説は説得力がある。)
今回のデモが1989年当時と違うのは、北京政府内の対立が保守派(李鵬)VS改革派(趙紫陽)などと単純に色分けされているわけではなく、腐敗を追及する側(習近平、王岐山の一派)VS追及される側(共産党幹部たち)と容易に攻守が逆転しうる状況にある点を挙げられる。
従って、北京政府が恐れる第2のストーリーは
②北京政府に対する党内の反発。
ここ最近の反腐敗キャンペーンによる大物政治家の粛清は、共産党史上でもかなり強烈だといえる。
元商工部長、重慶市代表で保守派のホープだった薄煕来、元党中央軍事委員会副主席で瀋陽軍区を牛耳っていた「東北軍閥」の首魁、徐才厚、元中央政治局常務委員の周永康、これらの大物政治家が次々と、収監、党籍はく奪、立件の対象になっている事態は尋常ではない。
特に、党中央政治局常務委員は刑罰の対象にならない、という共産党の不文律を破った周永康の立件は、関係者には衝撃的だっただろう。
今回、粛清の対象にされた周は、もともとは警察・公安・検察を束ねる党中央政法委員会書記に地位にあり、粛清する側の人物だった。
周は党中央政法委員書記を引退する前、2012年3月19日に一度蜂起しているという話がある。
この日、大連実徳グループの徐明会長の身柄確保を巡り、周配下の警察部隊と党規律委員会側の部隊が北京政治の中枢部、中南海で一触即発の事態となり、あわてた党指導部が中央弁公庁に命じて中央警衛局を動員。
事態は収拾したが、この事件後、周は全国200万人規模の武装警察の指揮権をはく奪されている。
(レコードチャイナ 及び「紅の党」朝日新聞社より)
その後、習近平は党中央政法委員会の権限を削減、警察権力は国家安全委員会の管轄下に入ることとなり、習の警察権力掌握が完了した。
法的な手続きではなく、人脈や暴力装置のバランスで権力が固定されるシステムでは、支配する側とされる側が劇的に逆転する可能性があり、このような現象は中国の場合、地方でより広範囲に表面化する。
今年に入ってから、山西省では幹部が続々と逮捕され、9/1にはトップの書記が解任されている。
新しく書記に任命された王儒林は省指導幹部大会で、「中央が自分を山西省書記に任じたのは、中央が私を高く評価しているからだ。」と発言している。(山西日報9/3)
王の省書記としての「正統性」は法ではなく、中央の判断によって正当化される。
香港騒乱の後始末がうまくいかなければ、「中央の判断」の正統性が大きく揺らぐことにもなりかねない。
結果的に、地方での腐敗撲滅キャンペーンの「攻守交代」が中央のコントロールのきかないレベルまでくれば、中国の政治状況が新しい段階に入ったとみなせるが、余程のミスを犯さない限り、そこまではいかないだろう。
蛇足
毛沢東時代にはイデオロギーが「中央の判断」の正統性を裏付けていたが、資本主義が席巻している現在においては全く効果を持たない。
これに対する北京政府の反応。
中国外務省の華春蛍副報道局長は29日の会見で、「香港の法務と社会の安寧を破壊する違法行為に断固反対する。」と強調した。この事件は、いろいろの側面から分析が可能だが、北京政府の思惑から考えてみたい。
(9/30 朝日新聞)
北京政府が恐れるストーリーは2つ。
①国内の民主化運動の再燃。
香港の民主化運動が飛び火し、1989年の天安門事件以来の国内の民主化要求運動が再燃する事態は避けたい。
例えば、次のようなニュースは北京を大いに苛立たせるだろう。
台北市内で1日夜、香港の抗議行動を支援する大規模な集会が開かれ、主催者側によると、約4000人が参加した。1989年の天安門事件で学生運動の指導者だったウアルカイシ氏も参加。記者団に「今回、香港の抗議運動が成功すれば、中国の民主主義の推進の一里塚になる。」
(10/2 読売新聞)
台湾の馬英九総統の発言。民主化要求は共産党政権の正統性への異議申し立てと同じなので、北京政府には到底受け入れることはできない。
「香港市民が普通選挙を求めることは完全に理解できるし、支持する。」
(10/1 朝日新聞)
(改革開放政策により、イデオロギーが事実上瓦解した共産党に正統性を求めることはできない。.....よって、中国共産党を殺したのは鄧小平である、とする中西輝政氏の説は説得力がある。)
今回のデモが1989年当時と違うのは、北京政府内の対立が保守派(李鵬)VS改革派(趙紫陽)などと単純に色分けされているわけではなく、腐敗を追及する側(習近平、王岐山の一派)VS追及される側(共産党幹部たち)と容易に攻守が逆転しうる状況にある点を挙げられる。
従って、北京政府が恐れる第2のストーリーは
②北京政府に対する党内の反発。
ここ最近の反腐敗キャンペーンによる大物政治家の粛清は、共産党史上でもかなり強烈だといえる。
元商工部長、重慶市代表で保守派のホープだった薄煕来、元党中央軍事委員会副主席で瀋陽軍区を牛耳っていた「東北軍閥」の首魁、徐才厚、元中央政治局常務委員の周永康、これらの大物政治家が次々と、収監、党籍はく奪、立件の対象になっている事態は尋常ではない。
特に、党中央政治局常務委員は刑罰の対象にならない、という共産党の不文律を破った周永康の立件は、関係者には衝撃的だっただろう。
今回、粛清の対象にされた周は、もともとは警察・公安・検察を束ねる党中央政法委員会書記に地位にあり、粛清する側の人物だった。
周は党中央政法委員書記を引退する前、2012年3月19日に一度蜂起しているという話がある。
この日、大連実徳グループの徐明会長の身柄確保を巡り、周配下の警察部隊と党規律委員会側の部隊が北京政治の中枢部、中南海で一触即発の事態となり、あわてた党指導部が中央弁公庁に命じて中央警衛局を動員。
事態は収拾したが、この事件後、周は全国200万人規模の武装警察の指揮権をはく奪されている。
(レコードチャイナ 及び「紅の党」朝日新聞社より)
その後、習近平は党中央政法委員会の権限を削減、警察権力は国家安全委員会の管轄下に入ることとなり、習の警察権力掌握が完了した。
法的な手続きではなく、人脈や暴力装置のバランスで権力が固定されるシステムでは、支配する側とされる側が劇的に逆転する可能性があり、このような現象は中国の場合、地方でより広範囲に表面化する。
今年に入ってから、山西省では幹部が続々と逮捕され、9/1にはトップの書記が解任されている。
新しく書記に任命された王儒林は省指導幹部大会で、「中央が自分を山西省書記に任じたのは、中央が私を高く評価しているからだ。」と発言している。(山西日報9/3)
王の省書記としての「正統性」は法ではなく、中央の判断によって正当化される。
香港騒乱の後始末がうまくいかなければ、「中央の判断」の正統性が大きく揺らぐことにもなりかねない。
結果的に、地方での腐敗撲滅キャンペーンの「攻守交代」が中央のコントロールのきかないレベルまでくれば、中国の政治状況が新しい段階に入ったとみなせるが、余程のミスを犯さない限り、そこまではいかないだろう。
蛇足
毛沢東時代にはイデオロギーが「中央の判断」の正統性を裏付けていたが、資本主義が席巻している現在においては全く効果を持たない。



