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大きく転換した米国の国際収支

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米国の国際収支(暦年)の推移をグラフに描いてみました。貿易収支サービス収支一次所得収支二次所得収支資本収支その他資本収支統計上の不一致の7つの国際収支勘定を積み上げ棒グラフで示しています。下の赤い背景部分にある勘定は「赤字」で、上の青い背景部分にある勘定は「黒字」です。このうち、貿易収支・サービス収支・一次所得収支・二次所得収支の4つの勘定の合計である経常収支を折れ線グラフで加えてあります。そして、1992年の経常収支赤字51,613百万ドルから年率21.5%の赤字拡大線と、2006年の経常収支赤字806,726百万ドルから年率9.0%の赤字縮小線を参考に加えてあります。

1991年に瞬間的に黒字転換した米国の経常収支は、1992年にはまた赤字に転じ、1997年までの5年間は概ね年率21.5%赤字拡大線に沿って赤字を拡大し続けました。更に、1998年以降2006年までの8年間は概ね年率21.5%赤字拡大線を超える大きな赤字拡大を続けました。ところが、2007年以降は経常収支赤字縮小に転じ、2013年までの7年間は概ね年率9.0%赤字縮小線よりも大きく赤字縮小しています。

2009年と2010年はリーマンショックに後の消費縮小によって貿易赤字が大きく縮小したためですが、その前後の傾向も経常収支赤字縮小方向のトレンドが続いているように見えます。これは基調的変化なのか一時的な変化なのか、もう少し詳しく内容を見てみたいと思います。

経常収支赤字縮小にどの勘定の変化が影響しているのかを見るために5つの主要勘定収支尻を折れ線グラフで比較したものが次の図です。
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転換点となった2006年までは、経常収支赤字はほぼ貿易収支赤字と同規模で推移していました。ところが、2007年以降は経常収支赤字は貿易収支赤字よりも小さくなり、しかもその差異は拡がる傾向にあります。これは、サービス収支の黒字と一時所得収支の黒字が拡大を続けているからです。また、貿易収支赤字も目先縮小に転じ始めているように見えます。その結果、資本収支、すなわち国際間金融取引に伴うネット対外債務(負債)の増加も縮小する傾向に転じています。

こうした変化はどうして生じているのでしょうか、主な勘定の中味をもう少しブレークダウンして見ていきたいと思います。最初は貿易収支です。
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米国の国際収支統計の拡張詳細(Expanded detail)では、貿易品目を、食料飼料飲料工業原材料資本財(除く自動車)・自動車他の消費財(除く食料自動車)・その他の雑貨非貨幣用金の7つの大品目に分類しています。上の図は、品目毎の輸出額(黒字側)と輸入額(赤字側)を積み上げ棒グラフで示し、ネットの貿易収支を折れ線グラフで示しています。貿易収支赤字は、ほぼ工業原材料輸入額+α程度の規模で推移していましたが、2008年以降は工業原材料輸入額を下回るところで推移しています。

次に、これら7つの大品目のネット貿易額の推移を折れ線グラフにして見てみます。
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工業原材料のネット貿易赤字は、ピークの2008年の411,879百万ドルから5年後の2013年には194,544百万ドルに217,335百万ドル(53%)も縮小し半分以下になっています。これは、米国内のシェールオイル・ガス開発の拡大によって、化石燃料輸入額が減少し輸出額が増加していることが反映しているものと考えられます。また、穀物価格の上昇によって食料飼料の純輸出が増えていることや、中国やインドの金投資拡大によって非貨幣用金の輸出が拡大していることなども当面の貿易収支赤字縮小に働いています。

次はサービス貿易収支です。
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米国の国際収支統計の拡張詳細(Expanded detail)では、サービス貿易を、旅行知財使用料その他のビジネスサービス金融サービス輸送情報通信政府保険サービス保守修理サービスの9つに分類しています。上の図は、分類毎のサービス輸出額(黒字側)とサービス輸入額(赤字側)を積み上げ棒グラフで示し、ネットのサービス貿易収支を折れ線グラフで示しています。サービス貿易収支黒字は2007年から拡大基調に転じ、2006年の75,573百万ドルから2013年には225,273百万ドルに149,700百万ドルも拡大し7年間で3倍に拡大しました。

次に、これら9つのサービスのネット貿易額の推移を折れ線グラフにして見てみます。
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ネット黒字だったのは、知財使用料(54%黒字拡大)旅行(227%黒字拡大)金融サービス(97%黒字拡大)その他ビジネスサービス(50%黒字拡大)でした(カッコ内は2006年から2013年の7年間の変化率)。旅行の増加率が大きいのは、同時多発テロ以降の減少の回復が含まれているためですが、テロ以前のピーク2000年に対する2013年の水準も99%増でほぼ倍増しています。他方、ネット赤字だったのは、保険サービス(15%赤字拡大)輸送(83%赤字縮小)政府(89%赤字縮小)でした(同じくカッコ内は2006年から2013年の7年間の変化率)。政府の赤字大幅縮小はアフガニスタンとイラクからの撤兵が反映されていると推定されます。輸送は、海運市況にこれほど大きな変動はなかったので、原油輸入量の減少が反映されているものと推定されます。保険サービスは、欧州金融危機に伴って再保険料が高騰し、その後の危機の鎮静化に伴って再保険料が低下したり、また原油輸入量が減少したことに伴って輸送保険料が減少したことなどが影響していると推定されます。全般的に見ると、米国のサービス貿易収支の黒字は、世界の後発発展国の経済拡大に伴って今後も拡大を続ける可能性が高いと考えられます。

次は一次所得収支です。
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米国の国際収支統計の拡張詳細(Expanded detail)では、一次所得を、直接投資所得資金運用投資所得その他投資所得雇用者報酬の4つに分類しています。上の図は、分類毎の一次所得の受取(黒字側)と支払(赤字側)を積み上げ棒グラフで示し、ネットの一次所得収支を折れ線グラフで示しています。一次所得収支黒字はやはり2007年から拡大基調に転じ、2006年の43,337百万ドルから2013年には199,654百万ドルに156,317百万ドルも拡大し7年間で3.6倍に拡大しました。

次に、これら4つの一次所得のネット受払額の推移を折れ線グラフにして見てみます。
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一次所得収支の黒字は、直接投資所得収支黒字資産運用所得収支赤字を大きく上回っていることによって実現されています。米国は毎年の経常収支赤字分だけ対外債務を拡大し続けています。しかし、それでも借りている資金に対する支払所得よりも外国に投資している資産からの受取所得の方が大きくなっています。直接投資所得収支黒字は2008年のリーマンショック以降拡大の勢いが弱まったように見えますが、資産運用所得収支の赤字も2008年リーマンショック以降縮小に転じているので、一時所得収支全体では黒字拡大が続いています。経常収支赤字を外国からの借金を増やすことでまかない続けられるのは、米国が基軸通貨国であることだけでなく、(あるいはそれよりも)米国の対外直接投資のリターン率が米国の資金調達コストを大きく上回っているからです。つまり、金融力(投資力)の国際的優位が米国の消費拡大を資金面から支えているということがいえます。一次所得収支黒字が今後も拡大を続けるとは断定できませんが、少なくとも急激に縮小していく可能性は低いと推定されます。

最後に資本収支(Finance transactions)です。
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米国の国際収支統計の拡張詳細(Expanded detail)では、資本収支(Finance transactions)を、直接投資資金運用投資その他投資の3つに分類しており、これは一次所得の分類に対応しています。それぞれの分類毎に対外債務(負債)と対外債権(資産)があり、債務(負債)の増加と債権(資産)の減少は資本収支黒字(米国への資金流入)に、債務(負債)の減少と債権(資産)の増加は資本収支赤字(米国からの資金流出)に、それぞれ働きます。直接投資の債権と債務(資産と負債)だけはこの間に減少したことはなく、その他の債権と債務(資産と負債)は増減両方に大きく触れて出現しています。また、2008年のリーマンショック以降、債権と債務(資産と負債)のネット純増はそれ以前より小さく推移しています。

次に、これら3つの対外債権と債務(資産と負債)のネット増減額の推移を折れ線グラフにして見てみます。
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米国の対外直接投資債権(資産)は一貫して増加を続けているので、ネット直接投資がマイナスになっている年は外国から米国への直接投資の増加が米国の対外直接投資の増加よりも大きかった年です。このネット直接投資増と経常収支赤字の分だけ外国からの資金流入が必要になります。資金運用投資は米国の債券や証券化商品や株式などへの投資資金流入で、その他投資は融資や預金などの資金流入です。2008年まではほぼ外国からの資金運用投資資金の流入で賄われる構造にありましたが、リーマンショック以降は資金運用投資資金と預金やローンの間でやや複雑な動きが続いているように見えます。

さて、以上、拡張詳細にまでブレークダウンして米国の国際収支の変化を見てきました。その上で再び全体像に戻ると、大方の認識どおりシェールガス・オイル開発の進展によって米国の貿易収支赤字は大きく縮小していますし、更に縮小していく可能性があります。また、無視できないのは、サービス貿易収支黒字と一時所得収支黒字の拡大です。これらは、知財や観光や教育や金融などの米国の国際的競争力の強さによって生み出されています。これらによって、米国の経常収支赤字は今後も縮小を続けるものと考えられ、もしかすると黒字に転換することもあるかもしれません。このような米国の国際収支の転換は、日本や世界全体にどのような影響をもたらすでしょうか?

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