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わが民主党改革宣言 ~今必要なのは旗を立てることだ~ 2/4

民主党に突きつけられた課題

(1)フォロワーシップの確立

先日、あるベンチャー企業の経営者から、喧々囂々の議論をしてまとまらない会議を「民主党状態」と言うと聞かされた。「民主党=バラバラ」というイメージは国民の中で完全に定着していることを実感した。民主党は発足以来、政治家一人一人の意思を尊重し、自由闊達な議論を大切にしてきた。しかし、政権に就いて以降、マニフェストの実現、東日本大震災・原発事故への対応、消費税増税という困難な課題に直面する中で分裂し、政権は瓦解するに至った。党内ガバナンスの欠如が政権運営失敗の最大の原因となった。

政治家を志してから、一貫して民主党に所属してきた私は、15年にわたって自由闊達な民主党の文化に親しんできた。しかし、同じ失敗を繰り返すのであれば政権につく資格はない。我々は、変わらなければならないのだ。

一昨年末、幹事長に就任した時、最初に着手したのがガバナンスの改革であった。民主党では、政策の判断を「次の内閣」で行っている。この組織の決定は全会一致を前提としており、結論が出ない場合は部門別の会議を長時間に渡って、何度も繰り返す。消費税増税を巡る議論では、その手法の限界が露呈した。そこで、重要な事項については常任幹事会にかけることができ、賛否が割れた場合、常任幹事会において採決できるよう規約を改正した 。システムの上では、すでに、意思決定におけるガバナンス改革が実現できているのだ。

しかし、その後も、民主党は「バラバラ感」を払拭できていない。組織のメンバーが自分たちのリーダーを支えていくフォロワーシップが確立できていないからだ。

最近も、海江田万里代表は「代表選挙を前倒しして、自らが再出馬する意思はない」との姿勢を明らかにしていたが、両院議員総会や懇談会では、公然とそれを求める声が上がった。発言者の危機感は理解できるが、議論を戦わせるだけで解決できる問題ではない。

私は、海江田代表に直接、自分の考えを伝え、4月に立ち上げた「自誓会」のメンバーに対して執行部批判を控えるように求めた。任期途中で代表が辞任した場合も党員サポーターが代表選に参加できるよう、規則を9月中に改訂するという方針が示された意味は小さくない。そもそも、完璧なリーダーなどというものは存在しない。必要なのは、代表を支えて成果を出すことで、代表自身が静かに判断できる環境を整えることだろう。

自民党は今でも我々にとって多くの点で反面教師だが、フォロワーシップに限っては、自民党から学んでもよいと考えている。前回の総選挙では、多くの自民党議員が「TPP反対」を掲げて戦った。読者の皆さんの中にも、総選挙の際、自民党が掲げた「TPP反対」の黄色いポスターを記憶している方もおられるだろう。国民を騙したことは評価できない。しかし、TPP交渉への参加決定の際、安倍総理が交渉入りを譲らないと見るや、政権を維持するために党としてまとまることを上位に置き、トップに従う姿勢は学ぶべきものがある。
自民党のフォロワーシップには、重層的な人間関係が寄与していると思う。自民党議員とエレベーターで一緒になると、お互いに握手をしたり、肩を叩いたり、背中をさすったりする姿を頻繁に目にする。極めて原始的な方法ではあるが、人間、本性はそれほど大きくは変わっていない。選挙の協力や資金援助、ポストの取引など旧来型の派閥の役割は小さくなったとはいえ残っている。自民党がいざという時まとまれるのは、このような人間関係をつなぐ「紐帯」が残っているからだ。

民主党には、そうした人間関係を「しがらみ」として避ける傾向がある。党内にはサロン的なグループが多数存在しているが、濃密な人間関係が構築されることは少ない。私が自誓会を立ち上げた最大の目的は、こうした民主党の政党文化の転換にある。

フォロワーシップを考えることは、リーダーシップを考えることでもある。先日、自誓会の合宿に落語家の柳家さん喬師匠をお招きした。演目は「百年目」。番頭と旦那のやり取りの最終盤、会場は水を打ったように静かになった。どんなに有能な番頭がいても、先見の明があり懐の深い旦那がいなければ大店は立ち行かない。落語を通じて、メンバー全員が考えるきっかけになったと思う。

自誓会は、徹底した議論を通じて理念と政策の一致を図っており、自民党の派閥をそのまま移植するつもりはない。しかし、困難な状況にあっても互いに助け合う同志的なつながりを生み出すためには、これまでのやり方を変えるべきだと考え、選挙の協力はもちろん、これまで民主党内ではほとんど行われてこなかった資金援助も始めた。政治を志した理念を貫くために、リアリズムにこだわる。そのために仲間を作る。今後、他のグループでもそうした動きが出てくることを期待し、そうしたグループとの連携を深めていきたい。

(2)新たな世代の台頭

民主党には三つの世代が存在する。第一には、55年体制の下で議員になり、自民党、社会党、民社党から離合集散を経て民主党に合流した第一世代。2009年の政権交代は、鳩山由紀夫氏、菅直人氏、小沢一郎氏ら第一世代によって成し遂げられた。三人にはご恩があるが、政権運営に失敗した以上、この三人を乗り越えない限り民主党の未来は開けて来ない。

1993年以降の政界再編の過程で議員になったのが第二世代である。「地盤、看板、カバン」のない彼らが当選する姿を見て、私自身も政治家に挑戦しようと決意した。党と政府の役職を重ねてきた第二世代は、その経験を生かしてこれからも大きな役割を果たしていくだろう。

98年に今の民主党が結党されてから当選したのが、私を含む第三世代である。この世代の先頭を走ってきたのが、参議院幹事長の羽田雄一郎氏、外務大臣や政調会長を歴任した松本剛明氏というサラブレッドの二人である。第一、第二世代と比較すると、この世代には多様な人材が集まった。若い時に企業経営を経験して政治の世界に入った馬淵澄夫氏、米国のシンクタンクで安全保障の専門家としてキャリアを積んできた長島昭久氏などは、その代表格と言えよう。二人は、私にとっては原発事故に対応したいわば戦友であり、当選以来、切磋琢磨してきた政治家としてのライバルでもある。二人とは定期的に会合を持ち、生まれ変わった民主党を国民に見せるためには我々が前に出るべきだと話し合っている。

党内には、さらに新しい世代も育ってきている。2009年には、143名初当選したが、その中で、2012年の総選挙で民主党として勝ち上がってきたのは、岸本周平氏、玉木雄一郎氏、奥野総一郎氏、後藤祐一氏、大西健介氏とわずかに5人だった。人数は少ないが、いずれも国会内外で獅子奮迅の活躍をしている。あの厳しい選挙で生き残り、活躍している実力を考えると、彼らを第四世代と呼ぶべきかもしれない。我々上の世代がここで奮起しなければ、彼らが我々を追い越していくだろう。人材が分厚い層となり続々と台頭してこそ、新たな民主党の姿を見せることができる。

(3)政策における課題

①現実主義に立脚した安全保障

政策面で民主党のアキレス腱は安全保障にある。
鳩山政権時、普天間基地問題について、感情的な議論に流されるあまり現実的な対応ができず、日米関係を一時的に傷つけ、国民の、そして沖縄の人々の信頼を失う結果となった。あの時の記憶を石に刻み、決して忘れてはならない。

また、鳩山政権で東アジア共同体を提案した際、米国かアジアという二者択一を迫っているかのような印象を国際社会からも国民からも見られたことについても深刻な反省が必要だ。日米同盟はアジア太平洋地域の平和と安定の基盤である。中国の台頭や朝鮮半島の不安定化という現実に対応するためには、日米同盟のあり方について、努力を重ねることが必要だ。また、アジア太平洋域内諸国との安全保障協力を強化することにより、米国との二国間関係のみならず、地域内での面としての安定化の努力を率先して行わなければならない。

私自身もかつて、厳しい外交の現実に直面した。原発事故への対応という国家的危機に直面した時、放水作業の最後の砦となったのは自衛隊であった。日米同盟も国際社会からの支援も、自国の安全を守る明確な意思がなければ機能しない。私は、原発事故に対応する日米会議を通じてそのことを痛感した。

2010年9月、尖閣諸島周辺での漁船衝突事故では中国側と交渉にあたった。当時、無役だった私が訪中することについて、いくぶんか逡巡したが、仙谷由人官房長官(当時)の強い要請もあり、わずかでも国益に資するのであればと考え、中国に飛んだ。釣魚台での戴秉国国務委員(当時)らとの会談は、7時間に及んだ。当然にして尖閣諸島がわが国固有の領土であること、参議院で野党が多数を握っている状況を考えると漁船が衝突した際のビデオを公開することはやがては避けられないことを伝えたうえで、当時、中国で逮捕されていたフジタの社員の解放を求めた。国益が激しくぶつかる非常に厳しい交渉であったが、後にフジタの社員が解放されるなどの成果を出すことが出来た。

中国は今後も尖閣諸島に様々な形で挑戦してくるだろう。この問題は民主党政権の時に深刻化しただけに、我々には大きな責任がある。8月の北京での会合で、李源潮国家副主席に対して海上連絡メカニズムの早期運用を求めたのは、日中衝突は何としても回避しなければならないとの思いからである。外交上の努力を継続しながら、最も現実的な脅威となる可能性が高い島嶼防衛を念頭に置いた現行法制のすきまを埋めるグレーゾーン法制について、事態をエスカレートさせないよう配慮しつつ早急に制定を目指さなければならない。

安全保障上のもう一つの深刻な懸念は朝鮮半島有事である。戦後、わが国は、自国の安全と東アジアの安定のために、米軍に対して基地を提供し、99年には周辺事態法を整備することで朝鮮半島有事の際に食糧の供給や輸送を可能とするなど、わが国の安全を脅かす勢力に対する抑止力を強化してきた。私は、周辺環境の変化に対応して、このアプローチをさらに一歩進め、安全保障基本法を制定することでわが国の自衛権を再定義すべきであると考えている。再定義される自衛権の中には、わが国の有事に直結する朝鮮半島有事への関与など、これまで個別的自衛権の範囲に入っていないものも含まれ得る。それは依然としてわが国の自衛という目的を根本とするものである以上、専守防衛の原則は堅持され、自衛権の範囲が無制限に広がる危険性はない。

安倍政権の下で再び安全保障の議論が盛り上がりを見せている。国の安全保障政策の根幹となる事項を閣議決定によって転換することは決して許されるべきではない。思い起こすべきは、小泉政権の時に、一年をかけて、与野党が協議を重ねて有事法制の制定を行ったことだ。有事法制制定後の2004年、民主党と自民党、公明党の三党は、緊急事態基本法を制定することで合意している。その合意文書に署名した当時の自民党の幹事長だった安倍総理と、合意内容に最も精通している石破幹事長には大きな責任がある。国家安全保障基本法の制定は、先の衆議院選挙、参議院選挙で自民党が掲げた公約でもある。今回、閣議決定された内容は、本来、国家安全保障基本法で定めるべき国家の緊急事態、安全保障の基本に関するものだ。

安全保障の議論において重要なのは、与野党が党派を超えた協議を行い、熟議を通じた国民合意を目指すことだ。その際、民主党は単なる批判者に留まるのではなく、わが国の自衛権を再定義する安全保障基本法の制定を目指して、現実主義に根差した安全保障の議論を各党に促す必要がある。安倍総理が頑なに与野党の協議を拒んだ場合は、主張を同じくする自民党議員や公明党、他の野党にも呼びかけて、国民のために新たな流れをつくっていかなければならない。

②企業の社会保障負担の軽減

金融緩和と財政政策によるアベノミクスは危うい。財政赤字で景気を底上げし、大量に流通する国債を日銀が買いまくる組み合わせは長続きしない。今後さらに年金資金を株式市場に投入し、見かけ上の株価上昇を実現しようとしているようだが、その手法では国民生活を大きなリスクに晒すことになる。加えて、安倍政権の経済政策には地方の視点が決定的に欠けている。

民主党の経済政策の中心は、国民の生活の安心のために、医療や介護、子育てサービスの供給不足を解消し、その分野で雇用を増やすというものであった。しかし、これまではそうした社会保障の財源となる富を生み出す成長戦略については十分な政策を示すことができていなかった。民主党が多くの経営者から“アンチビジネス政党”だと見られているのは、そのためだろう。最初に明確にしておくべきは、経済成長に対する考え方であろう。成長がなければ、国民生活の向上は難しく、人口減少下で少子高齢化社会を迎えるわが国の社会保障や財政は持続できない。民主党に求められているのは、企業が利益を上げ、そこで働く人たちや消費者が豊かになるための政策である。
自誓会では、企業の社会保障負担の軽減を提案している。現在、安倍政権では法人税減税の導入が検討されているが、その恩恵を受ける企業は全国平均で3割を下回っている 。冷え込んでいる地域経済においては、その効果は限られている。そもそも法人税は、原則として企業の利益に対して課されるため、基本的には企業の収益構造には影響せず、そのメリットも株主や役員などにしか還元されない。仮に法人税減税を行わず、それと同額の社会保障負担を軽減すれば、そのメリットは地方に波及し、雇用や給与の拡大にもつながる可能性が高い。

社会保障負担の重さは、近年、企業が正規雇用を減らす理由にもなってきた。企業の負担が軽減されれば、いま低所得で苦しんでいる若者が正社員になるチャンスが広がる。高齢者と比較すると圧倒的に消費性向が高い若年層の雇用安定と給与の増加は、消費の拡大にも直結する。

若者の正社員化は少子化対策にもつながる。出生率の低下が言われて久しいが、結婚している女性の出産は減っていない。既婚女性は平均2人の子供を産んでおり、この数字は40年前から大きな変化はない。少子化の本当の原因は未婚率の上昇にある。もちろん、結婚するかどうかは個人の自由だが、現実には年収300万以下の未婚率は高く、経済的な理由で結婚を諦めたり、先延ばししたりしているケースが多い。

法人税減税と比較すると、社会保障負担の軽減は制度上の困難を伴うが、「正社員化促進法」を制定することで、プログラムに基づいて着実に軽減するべきである。

次回 我々が立てるべき旗 へ続く



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