STAP細胞論文の不祥事によって内外の批判に晒されていた理化学研究所、発生・再生総合研究所(CDB)が、久しぶりに明るい話題に包まれた。iPS細胞を使って加齢黄斑変性の患者さんを治療するという、画期的な臨床応用がスタートしたためである。
プロジェクトリーダーの高橋政代氏が記者会見に臨んだが、神妙な面持ちの中にも、わずかな安堵感を漂わせていた。世界から注目された手術がひとまず成功したことばかりでなく、DBへの信用回復の一助になり得たことへの、率直な気持ちの表れだったに違いない。
しかし同時に高橋氏はやや表情を固くし、「まだまだ治療と呼ぶには早い」「長い道のりのスタートに過ぎない」と、自らを戒める言葉も付け加えた。確かに、今回の手術の効果が確かめられるまで1年近くかかるし、iPS細胞自身が癌化する恐れも、なお捨て切れないからだ。
一方マスコミ報道においては、「世界初、再生医療はじまる」などと、やや高揚した文字が踊っている。科学技術分野で低迷を続ける日本にあって、iPS細胞研究は久しぶりのグリーンヒットであり、山中伸弥教授のノーベル賞受賞は、実に誇らしいものであった。しかしここは浮かれるべきでない。
なぜなら万能細胞と呼ばれるiPSも、再生医療に画期的な変革をもたらすだろうが、病気の全てを治すのは不可能だからだ。患者さんに必要以上の期待を抱かせると、彼らの心を弄ぶことになりかねないからだ。
またiPSの研究、臨床応用体制はまだまだ貧弱である。先日訪問した京大のiPS細胞研究所(SiRA)では、スタッフのほとんどが期限付き雇用であり、落ち着いて研究に打ち込める環境が整っていない。研究環境の一層の充実が望まれる。
記事
- 2014年09月15日 23:00
いよいよiPS細胞応用へ
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