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動き出した国債相場、円安は売り要因なのか

長期国債先物、通称「債券先物」の中心限月が代わると、相場が変化するということが、以前にはあった。以前にはというのは、ここにきては小動きながらもジリ高傾向が続いていたことで、中心限月が代わっても相場にはあまり変化がみられなかったためである。

 ところが9月9日に実質的に債券先物の中心限月が9月限から12月限に代わったあと、相場が明らかに変化してきた。実質的な、と断ったのは長期国債先物の中心限月の移行とは、同一約定日の前後場とイブニング・セッションの出来高全体が期近より期先、今回で言えば9月より12月が多くなった日の翌日に交代したことになる。ただし、市場慣行でその時の出来高が逆転したタイミングで、先物の中心限月は交代したと認識されている。過去、いったん出来高が逆転したあと再逆転したことは、なかった。

 今回の債券先物の中心限月の移行でどのように相場が変わったのか。債券相場は久しぶりに調整局面を迎え、値動き、この場合、前日比や当日日中値幅などを指すが、それが大きくなってきたのである。これまでがあまりに動かなかったのが、やっと普通に動くようになってきたといえる。

 そのきっかけになったのが、円安と株高の動きである。8月半ばあたりからドル円は上昇基調となっていたが、ここにきて106円台、107円台と進み、約6年ぶりの水準をつけてきた。円安とともに日本株買いも仕掛けられ、日経平均は16000円近辺に上昇してきた。

 今回の円安株高の背景にはいくつかの要因が重なっている。ひとつが4日の会見で日銀の黒田総裁が円安容認ともとれる発言をしたこと。さらにFRBの利上げが予想より早まりそうとの観測も出てきたこと。FRBと日銀の金融政策の方向性の違いもあらためて意識されてきた。また、GPIFのポートフォリオの変更による海外金融資産への投資増による円安なども意識された何よりもチャートが上にフレークした格好となり、とりあえずテクニカル上、ドル円は110円あたりまでの上昇の可能性が強まったためである。

 円安はすでに必ずしも日本経済にはプラス要因ではなくなりつつある。日本の産業構造が変化し、空洞化現象などから円安による成長への寄与度は後退している。輸入コスト上昇による悪影響もある。エネルギー価格の動向にもよるが、原発問題も尾を引いている。

 とはいえ、いまだ海外のヘッジファンドなどは、円安とともに日本株買いをセットとしているようで、そこに債券売りもミックスされている。その動きが債券先物中心限月が12月限に代わったあたりで顕著とあった。債券は海外投資家のシェアの大きい先物主体の動きとなっており、現物債ではベンチマークの10年債とともにスワップを絡めて20年債も売り圧力を強めており、海外投資家の仕掛け的な動きの可能性がある。

 それではこの円安・株高・債券安はどの程度続き、債券はどのあたりまで売られるのか。ドル円はチャート上からの110円程度までの円安があるとすれば、日経平均も1月の高値を抜いて17000円が視野に入る。GPIFや共済のポートフォリオの変更が正式にアナウンスされると、地合いが良いときには好材料と受け止め、株買いを加速させてくる可能性がある。反対にGPIFのシェア低下が意識されて国債にはあらためて売り要因とされる可能性もある。

 ただし、日銀の大量買入れが続く限りは国債需給はびくともしないとの見方から、これまであまりGPIFについて材料視してこなかった債券市場ではあるが、ここに円安も関わってくるとなれば、やや見方が変化する可能性もある。日銀の岩田副総裁は円安により中長期の物価への影響はないとしているが、少なくとも短期的には影響するとしている。アベノミクスはほぼ円安と株高と少しの財政政策だけで説明が出来てしまうが、とにかくこのまま円安が進むと、2.0%の物価目標達成の可能性も次第に意識される。

 来年にかけて、何事もなければイングランド銀行とFRBはゼロ金利政策を解除してくると予想されるが、もし日銀の物価目標が達成圏内に入ってきた際に円債はどう動くか。日本のテーパリングはまだまだ先との見方は強いが、それでも市場は先を読む。株の地合いが良いのに対し、債券の地合いが悪化しているとき、たとえば米債が下落基調となれば、円債の下落懸念が高まることもありうる。それでも10年債はせいぜい0.6%台か悪くて0.7%台。そこまで行く前に投資家の押し目買いも待っているとの期待も当然あろう。日本の債券が売りづらい環境にあるのは確かである。しかし、ここにきての欧米を含めて債券相場の調整が意識されると地合いそのものも変わる可能性がある。このあたりの懸念を含めて、今回の円債の動きを注意深く見ておく必要がある。

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