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『自衛隊の「AAV7」大量調達は世紀の無駄遣いだ』 そこは同感。

自衛隊の「AAV7」大量調達は世紀の無駄遣いだ
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/41690

 自衛隊の「AAV7」大量調達が壮大な無駄遣いだ、という点は同感です。ですが主張はこの著者とかなり異なります。

 問題を整理すると、まず防衛省は世界にどのような水陸両用部隊があるのかも、まともなリサーチをしてこなかった。最初から米海兵隊のデッドコピーを作るつもりだったわけです。その点でアウト。

 リサーチに数十億円ぐらいかけても大したことはないでしょうに、いつもの調子でこれをケチったわけです。例えば英軍やオランダ軍あたりの海兵隊に、オフィサーや下士官を何人か送り込んで研修させるとかの知恵が無いわけです。

 自前で戦闘機まで持って、予算規模は二桁以上違う「異次元」の組織を、わずかな予算で真似しようというわけです。これから初めてマイカー買おうという、手取り年収300万円のサラリーマンが、フェラーリやベントレーを一ダースぐらいもっている金持ちの真似をするようなものです。

 で、海自につくるか、陸自につくるかすらも、検討しなかったわけです

 世間では「一両惜しみの百両損」という言葉がありますが、市ヶ谷では知られていないようらしいです。すべてにおいて防衛省、自衛隊は情報にカネをケチるという通弊があります。ですからクズのような装備を輸入したり国産したりを繰り替えているわけです。

 世界にどんな部隊があり、どのような目的でどのような運用をしているのも知らず、自分たちがどのようなことをするために、どのような部隊を作るかも分からず、とりあえずビール」ならず「とりあえず海兵隊」というノリでプロジェクトを始めちゃったわけです。
 これでまともな組織が作れるはずもない。

 当然水陸両用装甲車についても同じです。
 自分のところで作れなかったから、米海兵隊と同じ玩具が欲しいと買ってしまったわけです。まあ、今回の場合多分に政治的なオーダーが入っているとも思われますが。

 ところが現在、強襲揚陸作戦については完全に迷走状態に入っているわけです。第二次大戦型の強襲揚陸作戦は、技術の進歩によって不可能になってしまった。
 ですから米海兵隊ですら湾岸戦争では行わなかった。

 対戦車火器や精密誘導兵器、UAVやC4IRが発達した現在、陸地から10マイル程度の沖合から速度の遅い水陸両方装甲車での強襲揚陸は装甲車にとっても母船にとっても自殺行為です。

 ですから米海兵隊は母艦は水平線のはるか向こうに留まって、そこからの揚陸を考えているわけです。オスプレイはその考えの延長の産物です。

 そもそも水上を高速で移動するボートと、装甲車とでは要素が全く相反します。これを両立させるのは極めて困難です。それを実現しようとしたからEFVは無理があったわけです。

 つまり根本的に強襲揚陸作戦のあり方を考え直さないといけないところに来ています。ところがリサーチもせず、第二次大戦型の強襲揚陸を考えているわけです。まあ、富士学校の研究でも業者の団体のつくったリポートをそのままコピーして、恥じること無く発表しているぐらいですから、陸自の研究レベルは推して知るべし、です。
 富士学校の「研究」では米国も諦めたEFVのような車輌が水陸両用装甲車の主流になると述べていましたが、外国の専門誌ぐらい読んだらどうでしょうか。

 そんなことだから、陸幕では今年になって業者から米海兵隊の個人装備一式を買い集めるとか、泥縄をやっているわけです。

 また揚陸作戦に先立って特殊部隊を投入するという知恵もありません。特殊部隊専用の航空部隊もありません。これまた現代の軍隊の常識の外です。どこの貧民国の三流軍隊でしょうか?

 繰り返しますが本来あるべき将来の島嶼防衛、水陸両用作戦とはどのようなものか、そのような研究がなされていません。強襲揚陸は不可能という前提で、考える方策も必要でしょう。
 そのようなリサーチも研究もまともにしていないのですから、軍事のプロとしての見識を疑われても仕方ないでしょう。

 しかもAAV7はまともな評価試験すら行われておりません。これに関しては下記の東洋経済オンラインに書いた記事を参照してください。


 この筆者の意見で一番違和感を感じるのは、以下のところです

幸いなことに、日本には少なくともACVなどよりははるかにEFVに近い水陸両用強襲車を開発製造する技術力が存在しているのである。少なくとも国防費の倍増なしでは日本防衛はおぼつかない国際情勢に直面している現在、52両もの老朽AAV-7という“世紀の無駄遣い”だけは絶対に避けなければならない。

 我が国にそのような技術はありません。FSXの時もそういう国産技術信仰的な意見も多くありました。ですがそれは幻想にすぎません。

 実際三菱重工、ユニバーサル造船が試作を作くりましたが、ハシにも棒にもでした。
 防衛省の幹部によると、三菱重工はあと15年あれば作れるといっているそうですが、それは随分と楽観的です。日本のメーカーはこれまで同種のものを作ったことも、自衛隊が運用したもこともない。全てはこれからです。ですが例によって基礎研究や開発費、試験費をケチるでしょうからまともなものが出来る可能性は極めて低いでしょう。
 こういう怪しげな装備は輸出もできないでしょうから、調達コストは極めて高くなるでしょう。となると、調達数が減って調達数がますます減るという悪循環に陥って調達がますます進まなくなる。途中でとっくに旧式化といういつものコースを辿ることになるでしょう。
防衛省内部では三菱重工とロッキード・マーチンを組ませるという思惑もあるようですが、そもそもこの種の水陸両用装甲車が時代遅れという可能性が強いでしょう。

 無理して多額の投資を行ってそのようなものを作るより、もLCACやL-CATなどの揚陸艇で、通常の装甲車に毛の生えた程度の水陸両用装甲車を陸地の近くまで運ぶ、あるいは水上からのアプローチはやめて、ヘリでの空輸に特化するなどの発想の転換が必要かもしれません。
 現在の延長線上だけに解を求めるべきではないでしょう。

 軍事を語る際に、多くの識者、特に親米派と呼ばれる人達は、我が国と米国というフレームの中でしか考えていません。それでは事実は見えないし、外国音痴のアメリカ人と同じです。世界は米国と日本だけから成っているわけではありません。
 昨年ぼくは英海兵隊を取材しましたが、非常に興味深いものがありました。アメリカの海兵隊とは根本的にあり方が違います。
 むしろ参考にするのであれば、英国やスウェーデン、スペイン、ブラジル、台湾その他想定規模の似ている水陸両方部隊を持った国でしょう。

 カネをかけてできるだけ世界に多くの実例を求めてリサーチし、入念にコンセプトを練り上げて、実験や演習を重ねた上で、水陸両用部隊を編成すべきです。

 また最低防衛費を2倍にしなければいけないというのも賛成できません。他国の3倍のコストの装甲車とか、他国の8倍のコストの小銃の調達をする、あるいは戦車の300輌に定数が減らされるのに、まだ使える340輌もある90式を潰して、発展性もない新型の10式を調達するような放蕩をしている組織です。まずは無駄遣いを止めるべきです。
100円のカップラーメンに500円も無造作に出す子供のお小遣いを2倍にしたら、100円のカップラーメンに1000円を出すようになるだけです。
 
 

   東洋経済オンラインに以下の記事を寄稿しました。
結論ありき」で高額な兵器を調達する怪
防衛省概算要求に隠された問題<前編>
http://toyokeizai.net/preview/dd9c698dc49dbfafe1fdddad129294461604ead0

オスプレイの拙速導入は、安倍政権による濫費
防衛省概算要求に隠された問題<後編>
http://toyokeizai.net/articles/-/47070?page=3


 
フジテレビ、愛国報道の「異様な光景」
ジャパンエキスポは排他的なイベントではない
http://toyokeizai.net/articles/-/45401?page=2
 

コマツが防衛事業から撤退すべき5つの理由
取り組み姿勢が、キャタピラーとは対照的
http://toyokeizai.net/articles/-/45208

英航空ショー出展、中小企業「匠の技」とは?
盛んな商談、航空機ビジネスに食いこむ好機に
http://toyokeizai.net/articles/-/44434

新しい防衛航空宇宙専門サイトを始めました。
「東京防衛航空宇宙時評・Tokyo Defence & Aerospace Review」

http://www.tokyo-dar.com/



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