- 2014年09月13日 11:19
てい談 どうする“空き家列島・日本”
2/2「量」から「質」へ政策転換したが
伊藤 私が衆院議員に初当選した2005年当時、ようやく住宅の「量」より「質」に関心が持たれ始めたころでした。
住まいの質の向上へと住宅政策を転換する「住生活基本法」(06年成立)や、障がい者や高齢者が安心して賃貸住宅を借りられるようにした「住宅セーフティネット法」(07年成立)の制定に、私自身も携わってきました。
長嶋 住生活基本法の成立に伴い、戦後約40年間にわたって大量供給を強力に推し進めてきた「住宅建設計画法」が廃止されました。
これは大きな政策転換でしたが、住生活基本法はあくまで基本理念を定めたものです。具体的な政策が出てくるようになったのは、ここ最近ではないでしょうか。
そもそも日本の住宅産業界は新築中心に構成されています。今、検討されている特措法案のように、空き家、つまり中古住宅の撤去に加えて利活用にも目が向くようになったのは、画期的です。
米山 国土交通省が12年に「中古住宅・リフォームトータルプラン」を発表しました。中古住宅流通・リフォーム市場の環境整備を進め、市場規模の倍増をめざすとしていますが、新築との両にらみの政策です。
新築住宅を好む日本人に対して方向転換を促すには物足りず、もっと思い切ったインセンティブ(誘因)を与える政策が必要ではないでしょうか。
伊藤 少子高齢化や人口減少の進展で成熟社会へと移行する中、“味のある中古住宅”が評価される世の中にしなければなりません。
グランドプリンスホテル赤坂(旧赤坂プリンスホテル)が昨年取り壊された際、外国の方々から「なぜ、歴史のある建物を壊すのか」と惜しむ声がたくさん聞かれました。時代の風雪に耐えてきた建築物へのまなざしの温かさを感じました。
長嶋 木造中古住宅は約25年で建物部分の価値を「ゼロ」と見なす慣行が、日本にはあります。中古住宅の価値を測る手法がなく、画一的に「25年」としてきたのです。中古住宅の購入に二の足を踏む人が多いのも当然です。それを解決しようと始めたのが、私どもの住宅診断サービスです。
国交省の資料では、取り壊された住宅の平均築年数は、米国がおよそ70年、英国が80年以上です。日本の設計、施工は世界レベルにあり、点検やメンテナンス(維持)をきちんと施せば、50年あるいは100年だって持つ場合もあります。
求められる“まちづくりの視点”
伊藤 空き家の問題は、今後のまちづくりのキーワードです。今年8月に施行された改正都市再生特別措置法は、必要な空き家を残し活用するツール(道具)にもなります。
米山 今回の法改正により、病院や商業施設を中心市街地に集約する一方、郊外に広がった住宅の誘導も行われます。空き家の利活用についても、優遇される地域とそうでない地域が自治体内で線引きされます。いわば、自治体による居住地の選別です。
伊藤 自治体は難しい判断を迫られますが、地方創生のための重要な取り組みの一つになるでしょう。
米山 松江市では同改正法に先立ち、独自の条例を定め、空き家対策をまちづくりに生かしています。例えば、空き家を賃貸住宅として貸し出すための改修費などを補助したり、賃貸住宅に住む若者(新婚世帯またはUターン・Iターン)への家賃補助などを行っています。
長嶋 ドイツの事例も参考になるでしょう。1990年に東西統一を果たしたドイツでは、東ドイツ側で空き家問題が深刻化しました。そこで住宅を含む都市機能の集約化に取り組みました。
また、経済協力開発機構(OECD)に加盟する多くの国では、住宅総量の目安や住宅供給量の目標などを立てています。年々滅失していく中古住宅分を新築で補うぐらいの感覚です。私は、日本も新築と中古を合わせた住宅総量の目標を定めるべきだと思っています。
355自治体が独自条例で対応
伊藤 問題のある空き家に対処する独自条例を定めた自治体は、今年4月時点で355カ所に上っています。さらに問題が深刻化すると予想されます。
そこで現在、準備を進めている特措法案には、空き家の所有者を把握するために固定資産税情報を活用したり、危険な空き家を迅速に撤去できるよう法的な担保を与えたり、自治体の撤去費用など財政支援を検討することも盛り込んでいます。
米山 法律を定めることにより、自治体は動きやすくなり、心強いものになるでしょう。
また、政府が来年度の税制改正で、固定資産税の特例措置を見直す方向で検討に入ったと聞いています。確かに、老朽化して住めなくなった危険な住宅の税負担を軽減するのはおかしいと思います。
しかし、所有者の中には、軽減措置が無くなることで、最大で6倍に増える負担に耐えられない人も出てくるかもしれないので、数年間の猶予を与えるなどの工夫を講じてほしい。
長嶋 私は国政選挙のたびに、全政党の政策・公約をくまなくチェックしていますが、公明党は中古住宅の取引活性化に加え、賃貸住宅の活用に関心を寄せられていますね。中古住宅を大切にし、価値を引き上げることは、「生活者」を重視することにほかなりません。
よねやま・ひでたか
1963年生まれ。筑波大学大学院修士課程経営・政策科学研究科修了。専門は住宅・土地政策、日本経済。野村総合研究所、富士総合研究所を経て現職。2007~10年、慶應義塾大学グローバルセキュリティ研究所客員研究員も務めた。著書に『空き家急増の真実』『少子高齢化時代の住宅市場』など。
ながしま・おさむ
1967年生まれ。広告代理店、不動産会社を経て99年、業界初の個人向け不動産コンサルティング会社「さくら事務所」を設立。2008年4月、ホームインスペクション(住宅診断)の普及をめざし、NPO法人日本ホームインスペクターズ協会を立ち上げた。著書に『「空き家」が蝕む日本』など。



