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医薬品の無許可販売を取り締まり|危険ドラッグ対策

厚生労働省がかねてから表明していた、無承認無許可医薬品としての取締まりが、実際に動き出したようです。

<ニュースから>****
●危険ドラッグ販売目的保管容疑
危険ドラッグを販売目的で保管していたとして、愛知県警は9日、名古屋市北区楠味鋺あじま、雑貨店「INCENSE SHOP ASIA」元店長のN容疑者(26)を薬事法違反(医薬品の販売目的貯蔵)の疑いで逮捕した。

発表によると、N容疑者は8月4日午後4時50分ごろ、名古屋市中区大須の同店で、名古屋市長の医薬品販売許可を受けず、幻覚作用などがある医薬品成分「ジフェニジン」を含む植物片など計13点を販売目的で保管した疑い。「知りません」と容疑を否認しているという。

YOMIURI ON LINE 中部発 2014年09月10日
*****

ここで問題になっているのは、危険ドラッグから検出された成分のジフェニジンです。これは8月15日に指定薬物に指定された21物質のひとつですが(施行は8月25日)、店内で保管したとされる8月4日の時点ではまだ未規制で、これを販売目的で保管したとしても直接的に違反を問うことはできません。
そこで、医薬品に当たるジフェニジンを含む製品の無承認無許可販売として検挙したというわけです。
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↑ジフェニジン

このジフェニジンは麻薬のフェンシクリジン(PCP)と化学構造がそっくりで、よく似た幻覚・麻酔作用をもつ薬物ですから、薬事法2条1項3号がいう「医薬品」、つまり「人又は動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされている物」に該当すると考えることができそうです。

薬事法は医薬品について、
・医薬品販売の許可を受けていない業者が販売等すること(24条1項)、
・承認や許可を受けずに製造された医薬品を販売等すること(55条2項)
を禁止しており、違反者は処罰されます。

これを取り締まるのが、無承認無許可医薬品の販売の取締まりなのです。

さて、上のケースが無許可無承認医薬品の販売に当たるかどうかは、当該製品の成分本質、 形状、 広告、 製品名、 使用方法等の表示、 販売場所、 販売方法等から総合的に判断されます。もうすこしわかりやすく言うなら、

・その成分の性質や作用
・医薬品的な効能効果を標榜しているか
・用法、用量、形状等が医薬品的か

などを検討することになります。

でも、ここで思い出していただきたいのが、危険ドラッグ販売店の常套手段です。販売店は、「吸引目的の方には販売しません」「人体に使用しないでください」などと目立つ表示を掲げ、ドラッグとしての作用に関しては一切説明せず、商品を「お香」と呼び「香りをお楽しみください」などとすすめているのです。これは、無承認無許可医薬品販売で検挙されることを回避しようとして、販売業者が編み出してきた戦法です。

厚労省は、以前から、「お香」などと称して販売される危険ドラッグは、「使用目的に係る標傍ぶり如何に関わらず、事実上、経口、吸入、塗布等、人体への摂取を目的として販売されていると判断される場合には、薬事法上の無承認無許可医薬品に該当し、取締りの対象になる」という考え方を示してきました(下記参照①)。しかし、違反を摘発するには、販売業者がどんな売り方をしようとも、これら危険ドラッグ製品が人体への摂取を目的として販売され、「お香」として使用されることはなく、医薬品としての効果(精神作用)を得る目的で使用されることをきちんと立証しなければならないのです。そのハードルの高さゆえに、これまで、無承認無許可医薬品としての取締まりはあまり活用されずに来ました。

今回、厚労省が無承認無許可医薬品としての取締まりのゴーサインを出した背景には、危険ドラッグに関する報道が増えたことで、その実態について、一般の理解が深まったということがあるようです。当然に、販売業者の側にも危険ドラッグについての認識が行きわたっているはずだと、今なら言い切ることができると判断したのでしょう。

8月中旬、田村元大臣は定例会見で、次のように述べています(下記参照②)。
「業者は、これを体内摂取しないということをうたっているとかいろんなことを言って、それを逃れようとしてきておるわけでありますが、今般、これだけ報道をしっかりとやっていただいて・・・体内摂取するという前提にそれを報道いただいておりますし、そんな中においては販売される側もそれは十分に御認識をいただいておるであろうということでありまして、これは薬事法55条、未承認の医薬品の販売に対する規制、禁止で・・・対応をさせていただきたいと考えております。」
それでも、実際に取り締まりを行うとなれば、かなりの困難はあるでしょうが、経験を積み重ねることで解決する部分も多いはずです。ずっと以前から、まるで伝家の宝刀のように受け継がれてきたものの、実際に使われることの少なかった無承認無許可医薬品の取締まりに、もう一度スポットが当たったことで、新たな取り締まり手法が生まれるかもしれません。

そういえば、現在、厚労省のサイトには、「販売業者へ」という文章が掲載されていますが、そこで厚労省は危険ドラッグについて、無承認無許可医薬品としての指導取締りを徹底して行う方針であると宣言し、販売業者に対して「直ちにこれらの物質を含む危険ドラッグの販売等を止めるように強く警告します」と強い調子で呼びかけています(下記参照③)。

[参照]
①いわゆる「脱法ドラッグ」に対する指導取締りの強化について、薬食監麻発第 0225001号(平成1 7 年2月2 5日)
②田村元大臣の定例会見概要(2014.8.15)
http://www.mhlw.go.jp/stf/kaiken/daijin/0000054819.html
③厚労省サイト内薬物乱用防止に関する情報/お知らせ
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/yakubuturanyou/index.html

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